ronbun yomu

言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

2021-01-01から1年間の記事一覧

鈴木泰(2017.11)古典日本語における認識的条件文

鈴木泰(2017.11)「古典日本語における認識的条件文」有田節子(編)『日本語条件文の諸相:地理的変異と歴史的変遷』くろしお出版 要点 認識的条件文の前件の以下の3分類に基づき、今昔の条件文を概観する A 発話時の時点で成立・非成立が決定している(昨…

堀崎葉子(1995.3)江戸語の疑問表現体系について:終助詞カシラの原型を含む疑い表現を中心に

堀崎葉子(1995.3)「江戸語の疑問表現体系について:終助詞カシラの原型を含む疑い表現を中心に」『青山語文』25 要点 疑問のうち、「問い」についてはほぼ明らかであるが、「疑い」はそうではない 「疑い」の形式は、「問い」と同形式であるかという点で2…

村上昭子(1981.7)終助詞「かしら」の語史

村上昭子(1981.7)「終助詞「かしら」の語史」『馬淵和夫博士退官記念国語学論集』大修館書店 要点 終助詞カシラの成立の過程について考える 抄物にはないので、虎明本と虎寛本の比較を示す 虎明本では ~しらぬ、~しらず、~ぞんぜぬ があり、まだカシラ…

金澤裕之(1997.4)助動詞「ない」の連用中止法について

金澤裕之(1997.4)「助動詞「ない」の連用中止法について」『日本語科学』1 要点 近年、規範的ではない否定の連用中止法「~なく」が認められる このとき本塁上には捕手はいなく木村の快走でこの回二点をあげて優位に立った。 ナク中止の特徴2点、 状態述語…

勝又隆(2005.10)上代「−ソ−連体形」文における話し手の認識と形容詞述語文

勝又隆(2005.10)「上代「−ソ−連体形」文における話し手の認識と形容詞述語文」『日本語の研究』1(4) 要点 上代におけるソの係り結び(論文では「ーソ―連体形」)が、推量系の助辞を結びに取りにくいことが何の反映であるのかを考える 機能の点から 上代の…

奥村彰悟(1997.8)「ないければ」から「なければ」へ:一九世紀における打消の助動詞「ない」の仮定形

奥村彰悟(1997.8)「「ないければ」から「なければ」へ:一九世紀における打消の助動詞「ない」の仮定形」『日本語と日本文学 』25 要点 ナイケレバが18C後半から19C前半にかけて見られることは知られているが、ナケレバの変化については明らかになっていな…

奥村彰悟(1996.8)江戸語における「ないければ」:洒落本における打消の助動詞を用いた条件表現

奥村彰悟(1996.8)「江戸語における「ないければ」:洒落本における打消の助動詞を用いた条件表現」『筑波日本語研究』1 要点 江戸語のナイケレバをネバ・ズハと比較して考える 使用傾向として、 明和期は、打消にはヌ・ズとナイが並用され、ナイの勢力は極…

坂梨隆三(1995.3)打消の助動詞「ない」の発達

坂梨隆三(1995.3)「打消の助動詞「ない」の発達」『人文科学科紀要 国文学・漢文学』27、坂梨(2006)『近世語法研究』武蔵野書院 所収 要点 打消のナイの活用は滑稽本には終止連体形しかなく、連用形ナク・仮定形ナケレはないが、人情本になると出揃うよ…

川瀬卓(2019.8)不定の「やら」「ぞ」「か」の東西差と歴史的推移

川瀬卓(2019.8)「不定の「やら」「ぞ」「か」の東西差と歴史的推移」金澤裕之・矢島正浩『SP盤落語レコードがひらく近代日本語研究』笠間書院 要点 不定のヤラ・ゾ・カの歴史を、地域差を踏まえて考えたい 近世後期においては、上方はゾ>ヤラ>カ、江戸は…