ronbun yomu

言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

上代

野村剛史(1993.3)上代語のノとガについて(下)

野村剛史(1993.3)「上代語のノとガについて(下)」『国語国文』62(3) 要点 ノとガの共通性を「原始的修飾」に求めた上で、ノの機能について考える ノの機能は、体言が属性的であるか実体的であるかという観点から、以下の4つにまとめられる 所有:(属性…

野村剛史(1993.2)上代語のノとガについて(上)

野村剛史(1993.2)「上代語のノとガについて(上)」『国語国文』62(2) 要点 標記の問題、まず上接語の差異について、ノの分布がより一般的であるのに対し、ガの分布は「一人称、二人称の指示代名詞を中心に、三人称指示詞、固有名詞に広がっている」 ワ・…

近藤要司(2019.3)『万葉集』のハモについて

近藤要司(2019.3)「上代の感動喚体句について(2)『万葉集』のハモについて」『古代語の疑問表現と感動表現の研究』和泉書院(1999「係助詞の複合について(3)『万葉集』のハモについて」『金蘭国文』3) 要点 助詞ハは文末用法がないが、ハモは文末用法…

近藤要司(2019.3)『万葉集』の無助詞喚体句について

近藤要司(2019.3)「上代の感動喚体句について(1)『万葉集』の無助詞喚体句について」『古代語の疑問表現と感動表現の研究』和泉書院(2000『親和国文』35) 要点 終助詞を伴わない無助詞の感動喚体句について考える ~思ほゆる君(915) 連体修飾部を伴…

近藤要司(2019.3)古代語における感動喚体句の諸相について:関係する助詞に着目して

近藤要司(2019.3)「古代語における感動喚体句の諸相について:関係する助詞に着目して」『古代語の疑問表現と感動表現の研究』和泉書院(1998「古代語における感動喚体句表現の諸相について」『大阪市私立短期大学協会研究報告週』35) 要点 山田は感動喚…

小出祥子(2020.3)奈良時代語におけるラムカ構文とケムカモ構文

小出祥子(2020.3)「奈良時代語におけるラムカ構文とケムカモ構文」『名古屋短期大学研究紀要』58 要点 ム系助辞と終助詞カ・カモの接続関係について考える ラム・ケムの出現環境をまとめると次の通りで、 p.5 ラムカはあるのにケムカは少なく、ケムカモは…

衣畑智秀(2005.3)副助詞ダニの意味と構造とその変化:上代・中古における

衣畑智秀(2005.3)「副助詞ダニの意味と構造とその変化:上代・中古における」『日本語文法』5(1) 要点 極限の副助詞には最低限(≒だけでも)を示すものがないが、ダニはその両方を持ち、上代では最低限に限られていたことが知られる この歴史変化について…

大鹿薫久(1997.2)助動詞「らし」について

大鹿薫久(1997.2)「助動詞「らし」について」『語文』67 ラシの以下の特徴について考える 1 疑問文で用いられない 2 ラシの根拠の事態を明示することが多い 3 仮定条件句の帰結にならない これをもとに、時代別は「確信的に推量する」とするが、確信的なら…

須田淳一(2005.11)ミ語法の時と主体

須田淳一(2005.11)「ミ語法の時と主体」『国語と国文学』82(11) 要点 ミ語法のミは、意味的には属性と活動、機能的には修飾と述定に跨る(須田1997) これを踏まえて、統語論的振る舞いを考えたい (i) ミは形態的テンスを欠き、キ・ケリやムとも共起しない…

須田淳一(1997.7)「単語」をどう扱うのか:「を+ミ語形」構文の場合

須田淳一(1997.7)「「単語」をどう扱うのか:「を+ミ語形」構文の場合」『国文学解釈と鑑賞』62(7) 要点 ミ語法のミの位置付けについて、「品詞相互が緩やかに連続している」という考え方に基づいて考える 意味的・形態的・構文的に、動詞性・形容詞性を…

軽部利恵(2018.3)上代仮名遣いの「違例」について

軽部利恵(2018.3)「上代仮名遣いの「違例」について」『叙説』45 要点 上代特殊仮名遣の違例について考える 木簡にはツ婆木(椿)や波支(萩)などがあり、 「木簡は万葉集より書き分けがルーズ」とされてきたが、それは違例それ自体の意味づけにはならず…

山口堯二(1980.3)「て」「つつ」「ながら」考

山口堯二(1980.3)「「て」「つつ」「ながら」考」『国語国文』49(3) 前提 古代語のテ・ツツ・ナガラを、その前句・後句の関係性から考える テ テの基本的な意味は並列性 「二つ(以上)の事態がただ空間的または時間的に並列されているという関係」で、継…

堀川智也(1998.3)希望喚体の文法

堀川智也(1998.3)「希望喚体の文法」『大阪外国語大学論集』18 要点 山田が挙げる希望喚体の例には、「N+終助詞」という条件を厳密には満たさないものがある 別れの無くもがな/長くもがな/鳥にもがも これが、希望喚体のプロトタイプからのどのような拡…

高山善行(1996.10)助動詞ベシの成立:意味変化の視点から

高山善行(1996.10)「助動詞ベシの成立:意味変化の視点から」『国語語彙史の研究』16 要点 主観化の方向性からすると、ベシの成立はウベシ説より接尾語説を採ったほうがよい 前提 ベシの成立2説 ウベシ説 接尾語説 接尾語マの音交替形バが、形容詞化(ba+i…

蔦清行(2006.10)ミとミト

蔦清行(2006.10)「ミとミト」『国語国文』75(10) 要点 上代のミトはミ語法+引用のトとは考えにくく、 ミ単体が失った「主観的判断」の意を明確に示すために、新たにトを援用した形式と考えられる 前提 ミ語法にトの後接するミトの形について考えたい 力を…

蔦清行(2004.12)ミの世界

蔦清行(2004.12)「ミの世界」『国語国文』73(12) 要点 ミ語法のミは「見る」と関連を持ち、 原因・理由の意は本質的ではなく、対象についての判断を示す表現形式であった ミ語法の用字と構文的問題 ミ語法のミには「見」字が用いられることが多く、 一方勿…

佐佐木隆(2014.1)散文と韻文のミ語法

佐佐木隆(2014.1)「散文と韻文のミ語法」『国語国文』83(1) ※同(2016)『上代日本語構文史論考』おうふう による 前提 ミ語法に関する根本的な問題 はづかしみいとほしみなもおもほす(続紀27) 日国はイトオシムに引用、すなわち動詞連用形と見て、 古語…

岡村弘樹(2019.8)上代における自他対応と上二段活用

岡村弘樹(2019.8)「上代における自他対応と上二段活用」『国語国文』88(8) 要点 他動詞派生をしてもよさそうな上二段動詞が自他対応に関わらないのは、四段の連用形と形態が類似していたから 前提 上二段活用は自動詞のうち、特に非対格動詞に偏る 上二段…

川村大(1995.10)ベシの諸用法の位置関係

川村大(1995.10)「ベシの諸用法の位置関係」『築島裕博士古稀記念国語学論集』汲古書院 要点 ベシの用法を、「観念上の事態成立主張用法」と「事態の妥当性主張用法」の2類に分ける その2つには「観念の次元における事態存在の主張」という共通性が見出さ…

蜂矢真弓(2019.5)一音節名詞ア・イ・ウ・エ・オ

蜂矢真弓(2019.5)「一音節名詞ア・イ・ウ・エ・オ」毛利正守監修『上代学論叢』和泉書院 前提 上代特殊仮名遣の崩壊に伴う一音節名詞の同音衝突と、その回避のための方策 必要な一音節語のみを残し、 それ以外は廃語にするか、 既存の多音節語に置き換える…

柳田征司(2007.10)上代日本語の母音連続

柳田征司(2007.10)「上代日本語の母音連続」『国学院雑誌』108(11) 前提 母音連続に関する以下の諸問題について考える なぜ脱落や転成が起こったか なぜ全ての母音連続には起こらなかったか 平安時代以降それが起きなくなるだけでなく、イ音便が定着するの…

菊田千春(2004.6)上代日本語におけるノ・ガ格と名詞性:規則性と例外の共存をめざして

菊田千春(2004.6)「上代日本語におけるノ・ガ格と名詞性:規則性と例外の共存をめざして」石黒明博・山内信幸編『言語研究の接点:理論と記述』英宝社 前提 LFG(Lexical Functional Grammar)を用いて上代の主格表示を分析する 上代のノ・ガの分布は野村…

青野順也(2007.10)終助詞「な・ね」と希望表現

青野順也(2007.10)「終助詞「な・ね」と希望表現」『国学院雑誌』108(10) 要点 上代の終助詞ナ・ネはナが先行し、意味分化はネの成立によるもの 前提 上代の希望表現ナ・ナム・ニ・ネのうち、ナ・ネについて考える 以下の定義付けに基づけば、ナは願望・勧…

清水真澄(2014.2)『万葉集』における接続表現:「なへ(に)」の機能と意味関係

清水真澄(2014.2)「『万葉集』における接続表現:「なへ(に)」の機能と意味関係」『中央大学大学院 大学院研究年報 文学研究科篇』43 要点 上代のナヘ(ニ)は、同時並行を表すものではなく、継時的な関係性を表現者の中で関連付ける表現であり、 前件の…

竹内史郎(2008.3)助詞シの格助詞性について:非動作格性と品詞分類

竹内史郎(2008.3)「助詞シの格助詞性について:非動作格性と品詞分類」『語学と文学(群馬大学)』44 竹内(2008)の続き、助詞シの振る舞いについて、同じように活格性の下で理解できることを主張する 上代のシと中古のシ 特に体言シ、シ+係助詞の、名詞…

佐佐木隆(2007.3)続紀宣命と『万葉集』に見える助詞「し」

佐佐木隆(2007.3)「続紀宣命と『万葉集』に見える助詞「し」」『学習院大学文学部研究年報』53 要点 助詞シの用法を万葉集と続紀宣命とで比較したとき、 万葉集の用法が広いだけでなく、続紀宣命独自の用法も見出される 前提 散文と韻文の構文上の差異を知…

釘貫亨(1990.6)上代語動詞における自他対応形式の史的展開

釘貫亨(1990.6)「上代語動詞における自他対応形式の史的展開」佐藤喜代治編『国語論究2 文字・音韻の研究』明治書院 要点 上代語動詞の自他対応に3つのパターンを見出し、より合理的な方向へと進んだものと推定する 上代語の自他対応 上代語における自他対…

安田尚道(2003.4)石塚龍麿と橋本進吉:上代特殊仮名遣の研究史を再検討する

安田尚道(2003.4)「石塚龍麿と橋本進吉:上代特殊仮名遣の研究史を再検討する」『国語学』54(2) 要点 橋本進吉は上代特殊仮名遣を「再発見」してはいないし、 石塚龍麿も既に音韻の区別であったと考えていたのではないか 前提 上代特殊仮名遣の発見につい…

大鹿薫久(1999.3)「べし」の文法的意味について

大鹿薫久(1999.3)「「べし」の文法的意味について」『ことばとことのは 森重先生喜寿記念』和泉書院 要点 上代のベシの意味について 他のモダリティとの相違点について、対象的・作用的意味の両方を認めることで説明する 前提 上代語ベシに、推量周辺のム…

釘貫亨(2016.3)上代語意志・推量の助辞ムの成立と展開

釘貫亨(2016.3)「上代語意志・推量の助辞ムの成立と展開」『訓点語と訓点資料』136 前提 活用助辞ム(いわゆる助動詞)が、精神的心理的意味を持つム語尾動詞から分出されて成立したと考える(釘貫2014) ムの意味は人称によって決まるのではなく、上接語…