ronbun yomu

言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

中世後期

永田里美(2000.8)勧誘表現「~マイカ」の衰退:狂言台本を資料として

永田里美(2000.8)「勧誘表現「~マイカ」の衰退:狂言台本を資料として」『筑波日本語研究』5 要点 虎明本には勧誘表現Vマイカがあるが、虎寛本ではVウデハアルマイカが該当し、Vマイカは見られない そへ発句をせまひか > 此に添発句をせうでは有るまいか …

京健治(2001.3)「ウズ」「ウズル」の衰退に関する一考察

京健治(2001.3)「「ウズ」「ウズル」の衰退に関する一考察」『文献探究』39 要点 近世期に急速に衰退するウズ・ウズルについて考える 大まかな流れ、 ウ優勢の流れにあって、ウズ・ウズルが衰退する その中で、ウズル優勢からウズ優勢へと逆転していく こ…

京健治(1993.6)「不十分終止」の史的展開:旧終止形残存の文法史的意義

京健治(1993.6)「「不十分終止」の史的展開:旧終止形残存の文法史的意義」『語文研究』75 要点 キリシタン資料や狂言に見られる旧終止形の例について考える 既に消えたとされるツ・ヌ・タリ・ナリ・タシ・形容詞終止形が当時の口語にも生きていたものと考…

山田潔(2020.5)『玉塵抄』における「らう・つらう・うずらう」の用法

山田潔(2020.5)「『玉塵抄』における「らう・つらう・うずらう」の用法」『国学院雑誌』121(5) 要点 標題形式について、以下の3点を考える ツラウが多くコソの結びとして用いられること ラウの上接語がアルに偏ること ウズラウがコソ・ゾと呼応せずにカと…

山田潔(2001.9)助動詞「らう」とその複合辞(4)助動詞「らう」「うずらう」の用法

山田潔(2001.9)「助動詞「らう」「うずらう」の用法」『玉塵抄の語法』清文堂出版、初出2001 要点 ツラウに引き続き、ラウ・ウズラウの意味用法について考える ラウについて、 ゾ・コソの結びが大半を占め、村上1979の言う通り、推量の強調をラウが担うと…

山田潔(2001.9)助動詞「らう」とその複合辞(3)複合助動詞「つらう」の用法

山田潔(2001.9)「複合助動詞「つらう」の用法」『玉塵抄の語法』清文堂出版、初出1995 要点 室町のツラウについて考える 斯道本平家のケンは天草版ではツラウに交替する ケンの用法を以下の3種に分類すると、ケン→ツラウの例はA, Bしか見られない(木下書…

村上昭子(1979.2)助動詞ラウ:中世末期の用法

村上昭子(1979.2)「助動詞ラウ:中世末期の用法」『中田祝夫博士功績記念国語学論集』勉誠社 要点 中世末のラウに終止法が多く、しかも係助詞の結びが多いことについて、以下の2点から考えたい ラウと係助詞との関係 ラウとウとの意味上の関係 1点目、 ラ…

古田龍啓(2020.9)清原良賢講『論語抄』の諸本について

古田龍啓(2020.9)「清原良賢講『論語抄』の諸本について」『訓点語と訓点資料』145 要点 東山本の良賢抄は『応永27年本論語抄』としてよく使われるが、誤写の問題については看過されている 東山本、米沢本、大東急本、両足院本と、良賢抄の書き入れがある…

江原由美子(2019.3)逆接仮定を表す接続助詞トモとトをめぐって

江原由美子(2019.3)「逆接仮定を表す接続助詞トモとトをめぐって」『岡大国文論稿』47 要点 トモ・トの歴史について考える 現代語では生産的でないが、かつては主要形式であったこと モの有無と、トの使用が中世末期以降に増えること ドモ・ドからの類推説…

坂詰力治(2002.3)中世における助動詞の接続用法に関する一考察:終止形接続の助動詞「まじ」「らん」「べし」を中心に

坂詰力治(2002.3)「中世における助動詞の接続用法に関する一考察:終止形接続の助動詞「まじ」「らん」「べし」を中心に」『文学論藻』76 要点 終止形連体形の統合が終止法以外の終止形にも及ぶことについて、特に室町におけるマジ・ラン・ベシを見る 室町…

福田嘉一郎(2000.3)天草本平家物語の助動詞ラウ

福田嘉一郎(2000.3)「天草本平家物語の助動詞ラウ」『国文研究(熊本女子大学)』45 要点 原拠本との天草版との比較により、室町のラウの意味や機能について考える 天草版のラウは原拠本では、 ラウの場合:ラムの他、ムズラム、ツラム、ケムで、前接語は…

山口明穂(1969.3)中世文語における接続助詞「とも」

山口明穂(1969.3)「中世文語における接続助詞「とも」」『国語と国文学』46(3) 要点 トモの接続の様相を通して、文語行為について考えたい 詠歌大概註で宗祇は「ぬるとも」を「ぬるゝとも」に置き換えて説明する 当たり前のことのようであるが、宗祇自身の…

山口明穂(1972.3)中世文語における「つつ」についての問題:意味認識の過程

山口明穂(1972.3)「中世文語における「つつ」についての問題:意味認識の過程」『国文白百合』3 要点 ツツは秘伝書において以下のように記述され、あゆひ抄などでは認識されている「一つの動作の反復」についての説明がない 程経之心(動作の経過)/二事…

佐々木峻(1993.11)大蔵流狂言詞章の文末表現法:「……か知らぬ。」「……ぢゃ知らぬ。」等の言い方について

佐々木峻(1993.11)「大蔵流狂言詞章の文末表現法:「……か知らぬ。」「……ぢゃ知らぬ。」等の言い方について」山内洋一郎・永尾章曹(編)『継承と展開2近代語の成立と展開』和泉書院 要点 虎明本・虎寛本の「か知らぬ」系の形式について見る ひとまず、「ぞ…

安田章(2006.1)アドリブの意味

安田章(2006.1)「アドリブの意味」『国語国文』75(1) 要点 天草平家の2%程度、右馬、喜一の、平家とは関係のない対話部分(アドリブ)がある。この資料性と意味について考える 二人の関係について、 喜一→右馬では、敬語動詞・(サ)セラルルなどの「最高…

丸田博之(1994.7)ロドリゲス編「日本大文典」に於ける日本人の関与について

丸田博之(1994.7)「ロドリゲス編「日本大文典」に於ける日本人の関与について」『国語国文』63(7) 要点 大文典には、イエズス会の方針と食い違う編集態度が見られる キリシタンが禁止事項とする起請文が収められる 起請文や願書が、日本の神仏をデウスに差…

豊島正之(1982.2)初期キリシタン文献の文語文に見える「ともに」について

豊島正之(1982.2)「初期キリシタン文献の文語文に見える「ともに」について」『国語と国文学』59-2 要点 現代語トモニの2用法 同格の場合にトモニ:AとBはともにデパートに買い物に行った 同格でないときにトトモニ:AはBとともにデパートに買い物に行った…

坂梨隆三(2001.5)ロドリゲス『日本大文典』の「ないで」

坂梨隆三(2001.5)「ロドリゲス『日本大文典』の「ないで」」宮下志朗・丹治愛(編)『シリーズ言語態3書物の言語態』東京大学出版会 要点 大文典の否定の記述に「上げないでござる」「申さないでござる」があるが、「なんで」とあるべきものではないか し…

小島和(2012.1)キリシタン資料における助詞ヨリの「主格」用法について:コンテムツスムンヂを中心に

小島和(2012.1)「キリシタン資料における助詞ヨリの「主格」用法について:コンテムツスムンヂを中心に」『上智大学国文学論集』45 要点 ヨリについての説明のズレについて考える 大文典(やアルバレス)はヨリに主格と奪格を認めるが、 日葡は奪格、比較…

小島和(2011.1)『天草版平家物語』に用いられる待遇表現について:「地の文」を中心に

小島和(2011.1)「『天草版平家物語』に用いられる待遇表現について:「地の文」を中心に」『上智大学国文学論集』 要点 天草平家の地の文が対話による語りであることに注目する 喜一は右馬に対して「こなた」を使い、右馬は喜一に「そなた」を使う この差…

山田潔(2019.9)『両足院本毛詩抄』における「う」「うず」の用法

山田潔(2019.9)「『両足院本毛詩抄』における「う」「うず」の用法」『近代語研究』21 要点 概ねウはムの用法を継承し、ウズはベシを継承するが、毛詩聴塵と毛詩抄(両足院本)の対応関係は必ずしも「ム:ベシ=ウ:ウズ」ではない 報スベキニ - 報セウ物…

山田潔(2001)助動詞「うず」の表現性(5)玉塵抄の助動詞「うず」

山田潔(2001)「助動詞「うず」の表現性」『玉塵抄の語法』清文堂出版 初出1998「玉塵抄の助動詞「ウズ」」『学苑』694 要点 ウズについてこれまで分かったこと6点 1 ウは疑問詞と呼応し、単純な推量を表すのに対し、ウズは確かな推量および近接した未来を…

山田潔(2001)助動詞「うず」の表現性(4)助動詞「うず」の表現性

山田潔(2001)「助動詞「うず」の表現性」『玉塵抄の語法』清文堂出版 初出1991「助動詞「ウズ」の表現性」『国語国文』60(6) 要点 百二十句本から天草版への以下のような口訳の例を問題意識として、ウズについて考える 奉公ノ忠ヲイタサントスレバ → 奉公…

山田潔(2001)助動詞「うず」の表現性(3)蒙求抄における助動詞「ウ」「ウズ」の考察:史記抄との比較を通して

山田潔(2001)「助動詞「うず」の表現性」『玉塵抄の語法』清文堂出版 初出1976「蒙求抄における助動詞「ウ」「ウズ」の考察:史記抄との比較を通して」『学芸国語国文学』12 要点 史記抄・キリシタンで得られた結論と、ウズ衰退期の蒙求抄(寛永15版)を比…

山田潔(2001)助動詞「うず」の表現性(2)史記抄における助動詞「う」「うず」

山田潔(2001)「助動詞「うず」の表現性」『玉塵抄の語法』清文堂出版 初出1975「史記抄における助動詞「ウ」「ウズ」の考察」『国学院雑誌』76(7) 要点 キリシタンの結果に基づきつつ、抄物におけるウ・ウズについて考える 以下の点はキリシタンと同様 1 …

山田潔(2001)助動詞「うず」の表現性(1)推量の助動詞「う」「うず」「うずる」の一考察:キリシタン資料における実態

山田潔(2001)「助動詞「うず」の表現性」『玉塵抄の語法』清文堂出版 初出1971「推量の助動詞「う」「うず」「うずる」の一考察:キリシタン資料における実態」『学芸国語国文学』7 要点 キリシタン資料におけるウ・ウズについての観察4点 1 ウは疑問詞と…

菅原範夫(1992.3)「うず」の消滅過程

菅原範夫(1992.3)「「うず」の消滅過程」『小林芳規博士退官記念国語学論集』汲古書院 標題の問題について、中世後期から近世前期のウズの消滅過程について考える 天草平家と原拠本の比較に基づくと、 終止法では「「べし」の表現していた意味上の空隙を「…

青木博史(2007.7)近代語における述部の構造変化と文法化

青木博史(2007.7)「近代語における述部の構造変化と文法化」青木博史編『日本語の構造変化と文法化』ひつじ書房 要点 モダリティ形式のゲナの成立を、一般的な文法変化という観点から考える ゲナリ→ゲナの変化に、以下の3段階が想定される 語 ~ゲナリ:あ…

江口正弘(1990.12)天草版平家物語の動詞について:連体形の終止形化を中心に

江口正弘(1990.12)「天草版平家物語の動詞について:連体形の終止形化を中心に」『国文研究(熊本女子大学)』36 要点 標記の問題について、終止形と連体形の用法を以下のように分類する 終止形:A1 終止法 A2 ベシなどの助動詞に前接 A3 助詞トモ・ナ・ヤ…

李淑姫(2005.5)中世日本語の因由形式ニヨッテの階層

李淑姫(2005.5)「中世日本語の因由形式ニヨッテの階層」『日本學報』63 要点 李(1998)では虎明本の因由形式の階層を以下のように記述したが、ニヨッテとトコロデはその前後で異なる特徴を見せる ホドニ・トコロデ・アイダはC類、已バ・ニヨリテ・ニヨッ…