ronbun yomu

言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

中世後期

風間力三(1967)ロドリゲス日本文典の引用した平家物語

風間力三(1967)「ロドリゲス日本文典の引用した平家物語」『甲南大学文学会論集』35 前提 天草平家の場合は訳文を通して原典を考えなければいけないが、ロドリゲス大文典の引例は直接の資料として扱うことができる 方法 天草平家と原拠本が同文であるもの…

福田嘉一郎(1991.4)ロドリゲス日本大文典の不完全過去について

福田嘉一郎(1991.4)「ロドリゲス日本大文典の不完全過去について」『詞林』9 要点 大文典の「直説法・不完全過去」に現在形が含まれるが、これは連体法である 前提 ロドリゲスは直説法において、ルもタも「不完全過去」を表すものとし、これはアルバレスラ…

村上昭子(1981.3)接尾辞ラシイの成立

村上昭子(1981.3)「接尾辞ラシイの成立」『国語学』124 要点 ラシイの成立には、名詞+情態言ラ+接尾辞シイが想定される 諸説 以下3説があるが、前2説は採れない(下地となった可能性は否定できないが) 推量の助動詞ラシ由来説 時代に断絶があり、抄物に…

岸本恵実(2018.5)キリシタン版対訳辞書にみる話しことばと書きことば

岸本恵実(2018.5)「キリシタン版対訳辞書にみる話しことばと書きことば」高田博行・小野寺典子・青木博史(編)『歴史語用論の方法』ひつじ書房 前提 大文典における「話しことば」と「書きことば」の区別について考えたい ロドリゲスは日本語の大きな特徴…

清水登(1988.12)抄物における「ゾナレバ」の用法について

清水登(1988.12)「抄物における「ゾナレバ」の用法について」『長野県短期大学紀要』43 要点 抄物に特徴的なゾナレバは連語として見なすべきではなく、疑問文ト云ヘバと可換 前提 鈴木博はゾナレバを「接的接続詞」として扱い、「…か?そのわけは…」「…か…

高見三郎(1990.6)『杜詩続翠抄』の「マジイ」「ベイ」

高見三郎(1990.6)「『杜詩続翠抄』の「マジイ」「ベイ」」『女子大国文』107 要点 杜詩続翠抄にはマジイがある程度用いられており、ベイも固定せずに用いられている 前提 杜詩続翠抄はナリ体だが、ナリ・ゾは口語性の一つの目安に過ぎないので、マジイ・ベ…

高見三郎(1977.3)杜詩の抄:杜詩続翠抄と杜詩抄

高見三郎(1977.3)「杜詩の抄:杜詩続翠抄と杜詩抄」『山辺道』21 諸本 杜詩続翠抄 両足院蔵「杜詩続翠抄」 国会図書館蔵「杜詩続翠鈔」 杜詩抄 両足院蔵「杜詩抄」 足利学校図書館蔵「杜詩抄」 原典は『集千家註批点杜工部詩集』 続翠抄 両足院本続翠抄は…

小川志乃(2003.3)テヨリとテカラの意味的相違に関する史的研究

小川志乃(2003.3)「テヨリとテカラの意味的相違に関する史的研究」『国語国文学研究(熊本大学)』38 要点 天草平家と原拠本平家において、ヨリ→カラの交替は顕著だが、テヨリはテカラと対応しない テヨリとテカラには意味差があり、それが交替を許容しな…

松尾弘徳(2008.3)因由形式間の包含関係から見た天理図書館蔵『狂言六義』

松尾弘徳(2008.3)「因由形式間の包含関係から見た天理図書館蔵『狂言六義』」『文献探究』46 要点 天理本の因由形式の包含関係は中世末のそれと、天理本の内部変異を反映する 前提 李(1998)の観点に基づき、天理本における因由形式の包含関係を調べたい …

李淑姫(2002.8)『応永二十七年本論語抄』の因由形式の階層

李淑姫(2002.8)「『応永二十七年本論語抄』の因由形式の階層」『筑波日本語研究』7 要点 応永本論語抄のニヨッテは、キリシタン資料・虎明本と比べると階層的にはホドニに近い 前提 抄物における因由形式についての小林1973の記述 ホドニ・ニヨッテは口語…

李淑姫(2000.8)キリシタン資料における原因・理由を表す接続形式:ホドニ・ニヨッテ・トコロデを中心に

李淑姫(2000.8)「キリシタン資料における原因・理由を表す接続形式:ホドニ・ニヨッテ・トコロデを中心に」『筑波日本語研究』5 要点 虎明本ではC類だったトコロデ・アイダが、キリシタン資料ではB類だった 前提 虎明本を分析した李(1998)では、 ニヨッ…

李淑姫(1998.10)大蔵虎明本狂言集の原因・理由を表す接続形式について:その体系化のために

李淑姫(1998.10)「大蔵虎明本狂言集の原因・理由を表す接続形式について:その体系化のために」『筑波日本語研究』3 要点 虎明本の因由形式を、南の従属句の観点に基づいて分類する 前提 中世の因由形式の包含関係を階層的分類と関連付けて考えたい ホドニ…

福嶋健伸(2011.3)中世末期日本語の~ウ・~ウズ(ル)と動詞基本形

福嶋健伸(2011.3)「中世末期日本語の~ウ・~ウズ(ル)と動詞基本形」『国語国文』80(3) 前提 ウ・ウズ(ル)が連体節内に生起することについて、 この学者を殺さうことは本意ない / 不慮の恥にあわうずる事わ家のため、 山口(1991)は「ムードという主…

京健治(2003.12)否定過去の助動詞「なんだ」に関する一考察

京健治(2003.12)「否定過去の助動詞「なんだ」に関する一考察」『語文研究』96 要点 否定過去のナンダの成立と、特に連用形ナンデ、並立助詞的ナンダリに注目しつつ、 ナンの由来にはヌアッタ説を採る 前提と問題 ナンダ→ナカッタへの交替については詳しい…

福嶋健伸(2004.2)中世末期日本語の~テイル・~テアルと動詞基本形

福嶋健伸(2004.2)「中世末期日本語の~テイル・~テアルと動詞基本形」『国語と国文学』81(2) 要点 中世末期のテイル・テアルは進行態を十分に表せる環境になく、動詞基本形がそこを補っている その背景として、テイル・テアルにイル・アルの意味が残って…

福嶋健伸(2000.8)中世末期日本語の~テイル・~テアルについて:動作継続を表している場合を中心に

福嶋健伸(2000.8)「中世末期日本語の~テイル・~テアルについて:動作継続を表している場合を中心に」『筑波日本語研究』5 要点 中世末期日本語のテイル・テアルには動作継続を表す例が少ない 前提 中世末期日本語のテイル・テアルについてのこれまでの指…

菅原範夫(1989.3)キリシタン版ローマ字資料の表記とよみ:ローマ字翻字者との関係から

菅原範夫(1989.3)「キリシタン版ローマ字資料の表記とよみ:ローマ字翻字者との関係から」『国語学』156 要点 ローマ字本キリシタン資料の誤字や翻字の偏りを手がかりに、以下の2点を指摘 ローマ字本は翻訳者と翻字者の手を経たものであり、 翻字者は複数…

小林賢次(1979.2)中世の仮定表現に関する一考察:ナラバの発達をめぐって

小林賢次(1979.2)「中世の仮定表現に関する一考察:ナラバの発達をめぐって」『中田祝夫博士功績記念国語学論集』勉誠社 要点 ナラバの上接語の種類の拡大という観点からナラバの発達過程を見る 前提 院政期までのナラバは、 活用語ナラバに完了性仮定(~…

岩田美穂(2007.12)「ノ・ダノ」並列の変遷:例示並列形式としての位置づけについて

岩田美穂(2007.12)「「ノ・ダノ」並列の変遷:例示並列形式としての位置づけについて」『語文』89 要点 並列のノ・ダノが引用のトに支えられて成立した形式であること、 他の並列形式と同様の変化の方向性を持つものとして捉えられることを示す 前提 「言…

信太知子(2006.3)衰退期の連体形準体法と準体助詞「の」:句構造の観点から

信太知子(2006.3)「衰退期の連体形準体法と準体助詞「の」:句構造の観点から」『神女大国文』 要点 信太(1976)の再検討 信太(1976) 準体ノの起源を「我がの」の格助詞+ノに求め、 「我がの」の発生が中古、活用語+ノの発生が中世末~近世初頭という…

黒木邦彦(2018.3)否定過去動詞接尾辞-(a)naNdaなどが内包する-(a)naN-の起源

黒木邦彦(2018.3)「否定過去動詞接尾辞-(a)naNdaなどが内包する-(a)naN-の起源」『Theoretical and applied linguistics at Kobe Shoin : トークス』21 要点 西日本のナンダ -(a)naNda の起源を、東日本の否定動詞接尾辞ナフ{-(a)nap-}に求める 構成 まず…

佐藤嘉惟(2018.6)世阿弥自筆能本の表音的表記:表記の揺れと執筆過程

佐藤嘉惟(2018.6)「世阿弥自筆能本の表音的表記:表記の揺れと執筆過程」『能と狂言』16 要点 表音的とされてきた世阿弥能本に非表音的箇所があることを指摘し、 その表記揺れの生まれる過程に書写行為があったことを想定 研究史 能本への注目は、日本語史…

中沢紀子(2004.11)連体修飾節にみられるウ・ウズル

中沢紀子(2004.11)「連体修飾節にみられるウ・ウズル」『筑波日本語研究』9 要点 中世末期における連体用法のウ・ウズルについて、以下の点を示す タリ・テアル・ズとの共起が少ない 形式名詞を修飾しやすい 連体節の事態が主節より後のもの 前提 ウ・ウズ…

松尾弘徳(2000.6)天理図書館蔵『狂言六義』の原因・理由を表す条件句:ホドニとニヨッテを中心に

松尾弘徳(2000.6)「天理図書館蔵『狂言六義』の原因・理由を表す条件句:ホドニとニヨッテを中心に」『語文研究』89 要点 ホドニ・ニヨッテの交替現象が、天理本内部で見られることを指摘し、 従来虎明本→虎寛本の時期での交替現象と見られたものを、むし…

細川英雄(1982.7)『天草版平家物語』の「な—そ」をめぐって

細川英雄(1982.7)「『天草版平家物語』の「な—そ」をめぐって」『国語学研究と資料』6 前提 禁止表現「ナーソ」は室町末から江戸初期にかけて口頭語から姿を消す 否定の要素が文頭に来る構造が極めて稀であるため その過渡期の資料として天草平家を見ると…

吉田永弘(2012.3)平家物語と日本語史

吉田永弘(2012.3)「平家物語と日本語史」『愛知県立大学説林』60 要点 原拠本と天草版との対照による研究方法のあり方について 前提 一般的な諸本系統図のモデル(図1)は、書写過程以外における「作られた本文」を持つ異本の発生のある平家においては適用…

山田昌裕(2000.6)主語表示「ガ」の勢力拡大の様相:原拠本『平家物語』と『天草版平家物語』との比較

山田昌裕(2000.6)「主語表示「ガ」の勢力拡大の様相:原拠本『平家物語』と『天草版平家物語』との比較」『国語学』51-1 要点 原拠本平家と天草版平家に対照によるガの勢力拡大について、主に以下の3点を示す 対象を明示化する指向があること 疑問文におい…

吉田永弘(2015.5)『源平盛衰記』語法研究の視点

吉田永弘(2015.5)「『源平盛衰記』語法研究の視点」松尾葦江『文化現象としての源平盛衰記』笠間書院 要点 延慶本・覚一本との比較により、源平盛衰記の後代的言語現象を探る 前提 源平盛衰記は14C前半成立だが、現存伝本は16C中頃以降成立 慶長古活字版に…

大木一夫(2018.10)中世後期日本語動詞形態小見

大木一夫(2018.10)「中世後期日本語動詞形態小見」青木博史・小柳智ー・吉田永弘編『日本語文法史研究 4』ひつじ書房 要点 虎明本の動詞の形態論的分析と、古代語との接続 大木(2010) 分析手順は大木(2010)と同様 すなわち、 動詞と非自立形式を分け、…

白井純(2001.9)助詞ヨリ・カラの主格標示用法について:キリシタン文献を中心として

白井純(2001.9)「助詞ヨリ・カラの主格標示用法について:キリシタン文献を中心として」『国語学』52-3 要点 ヨリ・カラの主格標示用法について、 キリシタン宗教文献類に多く用いられることを指摘し、 その要因として、上位待遇表現にル・ラルを用いず給…