ronbun yomu

言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

中世後期

李淑姫(2004.3)中世日本語の原因・理由を表す接続形式の階層構造:抄物資料を中心に

李淑姫(2004.3)「中世日本語の原因・理由を表す接続形式の階層構造:抄物資料を中心に」『日本學報』58 要点 小林千草(1973)の中世末のホドニとニヨッテの指摘は、現代語のカラ・ノデと並行する ウ・ヨウ・マイが上接可能かどうか/後件に推量・意志・命…

深津周太(2013.4)動詞「申す」から感動詞「モウシ」へ

深津周太(2013.4)「動詞「申す」から感動詞「モウシ」へ」『国語国文』82(4) 要点 16C後半成立のモウシの成立事情についての問題 どのような文脈に用いられたモウスからモウシが生まれたか 動詞としての構文的機能をどのように喪失したか 呼びかけの意味を…

川口敦子(2002.9)キリシタン資料の「口語資料」と「文語資料」:「ござる」の用法を手がかりに

川口敦子(2002.9)「キリシタン資料の「口語資料」と「文語資料」:「ござる」の用法を手がかりに」『国語国文』71(9) 要点 ゴザルの使われ方を手がかりに、キリシタン資料における「口語」「文語」について考える 天草平家における「世話」のようなものが…

大倉浩(1993.7)和泉家古本にみる狂言用語の整理・統一:「おりゃる」と「まらする」

大倉浩(1993.7)「和泉家古本にみる狂言用語の整理・統一:「おりゃる」と「まらする」」『小松英雄博士退官記念日本語学論集』三省堂 要点 オリャルとマラスルの使用状況を通して、天理本(1624-44)と古本六議(1652-1703)のことを考える 古本は、固定化…

坂詰力治(1993.7)室町時代における助詞「バシ」について

坂詰力治(1993.7)「室町時代における助詞「バシ」について」『小松英雄博士退官記念日本語学論集』三省堂 要点 鎌倉時代語のバシが室町にどのように推移したかを観察したい バシの例は文語よりも口語資料に目立つ キリシタン資料には少ないが、これは宣教…

村上昭子(1993.7)『大蔵虎明本狂言集』における終助詞「ばや」について

村上昭子(1993.7)「『大蔵虎明本狂言集』における終助詞「ばや」について」『小松英雄博士退官記念日本語学論集』三省堂 要点 舞台言語の文体の問題として、虎明本のバヤに焦点を当てて考える 「名乗り」とその後の独白による「行動予定の提示」を類型化す…

山口堯二(2000.3)中世末期口語における「べし」の後身:『天草版平家物語』の訳語による

山口堯二(2000.3)「中世末期口語における「べし」の後身:『天草版平家物語』の訳語による」『文学部論集(佛教大学)』84 要点 文語化したベシの後身について、原拠本平家と天草平家との対照から考える ベシが残る場合、成句として当時の口語に残る シカ…

小林正行(2010.10)抄物資料における副助詞ガナ

小林正行(2010.10)「抄物資料における副助詞ガナ」『近代語研究』15 要点 小林(2005)以前のガナの状況を調べたい 抄物・キリシタンには全体的に用例が少なく、 上接語はほぼ不定語、 直接(ナニガナ)が先行し、ト等を介在するようになる(ナニトガナ) …

渡辺由貴(2011.3)中世における文末表現「と思ふ」と「と存ず」

渡辺由貴(2011.3)「中世における文末表現「と思ふ」と「と存ず」」『早稲田日本語研究』20 前提 中世における文末表現の「と思う」「と存ず」の位置付けを、以下2点から考えたい 話し手と聞き手の関係性 モダリティとしての表現性 分析1 身分の関係を見る…

李淑姫(2006.8)虎明本狂言集における「ウと思う」の用法:推量・意志の助動詞「ウ」との比較

李淑姫(2006.8)「虎明本狂言集における「ウと思う」の用法:推量・意志の助動詞「ウ」との比較」『日本學報』68 要点 虎明本のウと思う は意味的にはウよりも狭く、機能的にはウを補う 前提 虎明本のウと思うはウ同様、意志推量を表すが、意味機能に異なり…

山内洋一郎(2007.10)助動詞「そうだ」の表記と機能:中世語研究の視点を中心に

山内洋一郎(2007.10)「助動詞「そうだ」の表記と機能:中世語研究の視点を中心に」『国学院雑誌』108(11) 要点 ソウダのソウは(「様」ではなく)「相」由来で、連用ソウダが先行する 前提 ソウダのソウは相とも様とも言われるが、よく分からない ソウダの…

風間力三(1967)ロドリゲス日本文典の引用した平家物語

風間力三(1967)「ロドリゲス日本文典の引用した平家物語」『甲南大学文学会論集』35 前提 天草平家の場合は訳文を通して原典を考えなければいけないが、ロドリゲス大文典の引例は直接の資料として扱うことができる 方法 天草平家と原拠本が同文であるもの…

福田嘉一郎(1991.4)ロドリゲス日本大文典の不完全過去について

福田嘉一郎(1991.4)「ロドリゲス日本大文典の不完全過去について」『詞林』9 要点 大文典の「直説法・不完全過去」に現在形が含まれるが、これは連体法である 前提 ロドリゲスは直説法において、ルもタも「不完全過去」を表すものとし、これはアルバレスラ…

村上昭子(1981.3)接尾辞ラシイの成立

村上昭子(1981.3)「接尾辞ラシイの成立」『国語学』124 要点 ラシイの成立には、名詞+情態言ラ+接尾辞シイが想定される 諸説 以下3説があるが、前2説は採れない(下地となった可能性は否定できないが) 推量の助動詞ラシ由来説 時代に断絶があり、抄物に…

岸本恵実(2018.5)キリシタン版対訳辞書にみる話しことばと書きことば

岸本恵実(2018.5)「キリシタン版対訳辞書にみる話しことばと書きことば」高田博行・小野寺典子・青木博史(編)『歴史語用論の方法』ひつじ書房 前提 大文典における「話しことば」と「書きことば」の区別について考えたい ロドリゲスは日本語の大きな特徴…

清水登(1988.12)抄物における「ゾナレバ」の用法について

清水登(1988.12)「抄物における「ゾナレバ」の用法について」『長野県短期大学紀要』43 要点 抄物に特徴的なゾナレバは連語として見なすべきではなく、疑問文ト云ヘバと可換 前提 鈴木博はゾナレバを「接的接続詞」として扱い、「…か?そのわけは…」「…か…

高見三郎(1990.6)『杜詩続翠抄』の「マジイ」「ベイ」

高見三郎(1990.6)「『杜詩続翠抄』の「マジイ」「ベイ」」『女子大国文』107 要点 杜詩続翠抄にはマジイがある程度用いられており、ベイも固定せずに用いられている 前提 杜詩続翠抄はナリ体だが、ナリ・ゾは口語性の一つの目安に過ぎないので、マジイ・ベ…

高見三郎(1977.3)杜詩の抄:杜詩続翠抄と杜詩抄

高見三郎(1977.3)「杜詩の抄:杜詩続翠抄と杜詩抄」『山辺道』21 諸本 杜詩続翠抄 両足院蔵「杜詩続翠抄」 国会図書館蔵「杜詩続翠鈔」 杜詩抄 両足院蔵「杜詩抄」 足利学校図書館蔵「杜詩抄」 原典は『集千家註批点杜工部詩集』 続翠抄 両足院本続翠抄は…

小川志乃(2003.3)テヨリとテカラの意味的相違に関する史的研究

小川志乃(2003.3)「テヨリとテカラの意味的相違に関する史的研究」『国語国文学研究(熊本大学)』38 要点 天草平家と原拠本平家において、ヨリ→カラの交替は顕著だが、テヨリはテカラと対応しない テヨリとテカラには意味差があり、それが交替を許容しな…

松尾弘徳(2008.3)因由形式間の包含関係から見た天理図書館蔵『狂言六義』

松尾弘徳(2008.3)「因由形式間の包含関係から見た天理図書館蔵『狂言六義』」『文献探究』46 要点 天理本の因由形式の包含関係は中世末のそれと、天理本の内部変異を反映する 前提 李(1998)の観点に基づき、天理本における因由形式の包含関係を調べたい …

李淑姫(2002.8)『応永二十七年本論語抄』の因由形式の階層

李淑姫(2002.8)「『応永二十七年本論語抄』の因由形式の階層」『筑波日本語研究』7 要点 応永本論語抄のニヨッテは、キリシタン資料・虎明本と比べると階層的にはホドニに近い 前提 抄物における因由形式についての小林1973の記述 ホドニ・ニヨッテは口語…

李淑姫(2000.8)キリシタン資料における原因・理由を表す接続形式:ホドニ・ニヨッテ・トコロデを中心に

李淑姫(2000.8)「キリシタン資料における原因・理由を表す接続形式:ホドニ・ニヨッテ・トコロデを中心に」『筑波日本語研究』5 要点 虎明本ではC類だったトコロデ・アイダが、キリシタン資料ではB類だった 前提 虎明本を分析した李(1998)では、 ニヨッ…

李淑姫(1998.10)大蔵虎明本狂言集の原因・理由を表す接続形式について:その体系化のために

李淑姫(1998.10)「大蔵虎明本狂言集の原因・理由を表す接続形式について:その体系化のために」『筑波日本語研究』3 要点 虎明本の因由形式を、南の従属句の観点に基づいて分類する 前提 中世の因由形式の包含関係を階層的分類と関連付けて考えたい ホドニ…

福嶋健伸(2011.3)中世末期日本語の~ウ・~ウズ(ル)と動詞基本形

福嶋健伸(2011.3)「中世末期日本語の~ウ・~ウズ(ル)と動詞基本形」『国語国文』80(3) 前提 ウ・ウズ(ル)が連体節内に生起することについて、 この学者を殺さうことは本意ない / 不慮の恥にあわうずる事わ家のため、 山口(1991)は「ムードという主…

京健治(2003.12)否定過去の助動詞「なんだ」に関する一考察

京健治(2003.12)「否定過去の助動詞「なんだ」に関する一考察」『語文研究』96 要点 否定過去のナンダの成立と、特に連用形ナンデ、並立助詞的ナンダリに注目しつつ、 ナンの由来にはヌアッタ説を採る 前提と問題 ナンダ→ナカッタへの交替については詳しい…

福嶋健伸(2004.2)中世末期日本語の~テイル・~テアルと動詞基本形

福嶋健伸(2004.2)「中世末期日本語の~テイル・~テアルと動詞基本形」『国語と国文学』81(2) 要点 中世末期のテイル・テアルは進行態を十分に表せる環境になく、動詞基本形がそこを補っている その背景として、テイル・テアルにイル・アルの意味が残って…

福嶋健伸(2000.8)中世末期日本語の~テイル・~テアルについて:動作継続を表している場合を中心に

福嶋健伸(2000.8)「中世末期日本語の~テイル・~テアルについて:動作継続を表している場合を中心に」『筑波日本語研究』5 要点 中世末期日本語のテイル・テアルには動作継続を表す例が少ない 前提 中世末期日本語のテイル・テアルについてのこれまでの指…

菅原範夫(1989.3)キリシタン版ローマ字資料の表記とよみ:ローマ字翻字者との関係から

菅原範夫(1989.3)「キリシタン版ローマ字資料の表記とよみ:ローマ字翻字者との関係から」『国語学』156 要点 ローマ字本キリシタン資料の誤字や翻字の偏りを手がかりに、以下の2点を指摘 ローマ字本は翻訳者と翻字者の手を経たものであり、 翻字者は複数…

小林賢次(1979.2)中世の仮定表現に関する一考察:ナラバの発達をめぐって

小林賢次(1979.2)「中世の仮定表現に関する一考察:ナラバの発達をめぐって」『中田祝夫博士功績記念国語学論集』勉誠社 要点 ナラバの上接語の種類の拡大という観点からナラバの発達過程を見る 前提 院政期までのナラバは、 活用語ナラバに完了性仮定(~…

岩田美穂(2007.12)「ノ・ダノ」並列の変遷:例示並列形式としての位置づけについて

岩田美穂(2007.12)「「ノ・ダノ」並列の変遷:例示並列形式としての位置づけについて」『語文』89 要点 並列のノ・ダノが引用のトに支えられて成立した形式であること、 他の並列形式と同様の変化の方向性を持つものとして捉えられることを示す 前提 「言…