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言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

中古

高山善行(1999)連体ナリの已然形

高山善行(1999)「連体ナリの已然形」『国語語彙史の研究18』和泉書院. 要点 中古の連体ナリには、連体ナレド・ナレバとしての、已然形として積極的に認められる例が(ほぼ)ない ナレバには、連体ナリと確定できる例がなく、同形ナリ(終止ナリと区別のつ…

大川孔明(2022.3)叙述類型から見た平安鎌倉時代の文学作品の文体類型

大川孔明(2022.3)「叙述類型から見た平安鎌倉時代の文学作品の文体類型」『国語学研究』61. 要点 述語形式を基準として、クラスター分析を用いて、平安鎌倉時代の文学作品に以下の文体類型を得た A:事象叙述型 B:準事象叙述型 C:属性叙述型 D:主観叙述…

大川孔明(2020.9)叙述語から見た平安鎌倉時代の文学作品の文体類型

大川孔明(2020.9)「叙述語から見た平安鎌倉時代の文学作品の文体類型」『計量国語学』32(6). 要点 叙述語(副詞・形状詞・形容詞)を指標とした多変量解析により、平安鎌倉時代の文学作品に、以下の文体類型を得た*1 A 物語日記-和文体型 B 物語日記-漢文…

大川孔明(2020.8)文連接法から見た平安鎌倉時代の文学作品の文体類型

大川孔明(2020.8)「文連接法から見た平安鎌倉時代の文学作品の文体類型」『日本語の研究』16(2). 要点 文連接法(接続詞、指示詞、接続助詞、無形式)を指標としたクラスター分析により、平安鎌倉時代の文学作品に以下の文体類型の位置付けができることを…

金銀珠(2016.10)中古語の名詞修飾節における主語の表示:無助詞と「の」と「が」の相互関係

金銀珠(2016.10)「中古語の名詞修飾節における主語の表示:無助詞と「の」と「が」の相互関係」『日本語の研究』12(4). 要点 中古語の名詞節における主語の表示(髪{ノ・ガ・∅}長き女)は、「構造の大きさ」と「指示」という2つの指標で条件付けられ、各…

辻本桜介(2022.4)中古語の状態性述語を持つ引用構文について

辻本桜介(2022.4)「中古語の状態性述語を持つ引用構文について」『文学・語学』234. 要点 状態性述語をとる引用構文の文法論的位置付けを検討する 杉の御社は、しるしやあらむとをかし。(枕227) 吉田(2017)は体験話法であることに重点を置いたもので、…

吉田光浩(2017.6)中古の引用句を導く感情形容詞述語文と体験話法:『源氏物語』の例を中心に

吉田光浩(2017.6)「中古の引用句を導く感情形容詞述語文と体験話法:『源氏物語』の例を中心に」『文学・語学』219. 要点 中古和文の形容詞述語文に散見される、「心中詞を形容詞が承けて文を終止する例」について検討する 女君、〈いかに聞くらむ〉とはず…

吉田光浩(1996.3)「仮定条件句+うれし」の表現性について

吉田光浩(1996.3)「「仮定条件句+うれし」の表現性について」『大妻国文』27. 要点 中古和文の「仮定条件句+うれし」に、下例(うつほ)の後者のように、「聞き手に一定のリアクションを求めるはたらきかけ」の機能を持つものがあることを述べる いたはら…

近藤要司(2022.3)「活用語カナ」型詠嘆表現の衰退について

近藤要司(2022.3)「「活用語カナ」型詠嘆表現の衰退について」『神戸親和女子大学言語文化研究』16. 要点 活用語+終助詞カナ(活用語カナ)の衰退の要因を以下の点に求める 中古のカナは上代の「~も~かな」を引き継ぎ、話者の内面の情動そのものを述べ…

菊池そのみ(2021.8)古典語における形容詞テ形節の副詞的用法の変遷

菊池そのみ(2021.8)「古典語における形容詞テ形節の副詞的用法の変遷」『国語語彙史の研究40』和泉書院. 要点 標記の問題について、以下2点を考える 通時的概観と、下接する動詞の特徴についての検討 形容詞テ形節の修飾のタイプに基づく各時期の様相の記…

吉田光浩(1990.3)主成分分析法による形容詞の活用分析:「枕草子」を資料として

吉田光浩(1990.3)「主成分分析法による形容詞の活用分析:「枕草子」を資料として」『大妻国文』21. 要点 形容詞の活用形の分布の偏りから、その機能の分布を検討したい 枕草子に出現する形容詞の、各活用形+補助活用の出現率を求めると、以下の相関があ…

安本真弓(2009.3)中古における感情形容詞と感情動詞の対応とその対応要因:中古前期・中期の和文作品を対象として

安本真弓(2009.3)「中古における感情形容詞と感情動詞の対応とその対応要因::中古前期・中期の和文作品を対象として」『国語語彙史の研究28』和泉書院. 要点 中古において、現代語よりも感情形容詞と感情動詞の対応(アサマシ・アサム、オドロカシ・オ…

菊池そのみ(2019.1)古代語の「ての」について

菊池そのみ(2019.1)「古代語の「ての」について」『筑波日本語研究』23. 要点 標記形式(飲みての後は・万821)について、以下2点を考えたい 1 古代語における、テノによる連体修飾と、連体形連体修飾との間の差異 2 古代語のテノと現代語のテノの差異 調…

近藤泰弘(2005.11)平安時代語の副詞節の節連鎖構造について

近藤泰弘(2005.11)「平安時代語の副詞節の節連鎖構造について」『国語と国文学』82(11) 要点 現代語の書き言葉とは異なる、古典語の副詞節の問題について考える 古典語は従属節が連続する傾向があるが、特に副詞節は連続する傾向が強い 行く先多く、夜も更…

高山善行(2021.6)連体「なり」の機能をどう捉えるか:「のだ」との比較を通して

高山善行(2021.6)「連体「なり」の機能をどう捉えるか:「のだ」との比較を通して」野田尚史・小田勝(編)『日本語の歴史的対照文法』和泉書院. 要点 ノダとの比較に基づき、連体ナリの記述分析を行い、以下の3点を主張する*1 連体ナリの性質はノダとの…

近藤泰弘(1992.3)丁寧語のアスペクト的性格:中古語の「はべり」を中心に

近藤泰弘(1992.3)「丁寧語のアスペクト的性格:中古語の「はべり」を中心に」『辻村俊樹教授古稀記念日本語史の諸問題』明治書院. 要点 ハベリは謙譲語的側面と丁寧語的側面があるが、そのアスペクト的性格については明らかでない ハベリと非敬語の対応と…

鈴木泰(2017.11)古典日本語における認識的条件文

鈴木泰(2017.11)「古典日本語における認識的条件文」有田節子(編)『日本語条件文の諸相:地理的変異と歴史的変遷』くろしお出版 要点 認識的条件文の前件の以下の3分類に基づき、今昔の条件文を概観する A 発話時の時点で成立・非成立が決定している(昨…

辻本桜介(2017.10)文相当句を受けるトナリについて:中古語を中心として

辻本桜介(2017.10)「文相当句を受けるトナリについて:中古語を中心として」『ことばとくらし』29 要点 中古語では、文相当句を受けるトにナリが付く。このことについて考える *僕が思ったのは、「もう春が来た」とだ。 かく言ひそめつとならば、何かはお…

小田勝(2006)不十分終止の句(5,6)句の並立、句の素材化

小田勝(2006)「不十分終止の句」『古代語構文の研究』おうふう 要点 挿入句・提示句・成分の句化以外の不十分終止の句について概観し、不十分終止句の全体像を捉える(5節) 並列の関係に立つ不十分終止の句がある 返しせねば情けなし、えせざらむ人は、は…

小田勝(2006)不十分終止の句(4)挿入句と成分の句化

小田勝(2006)「不十分終止の句」『古代語構文の研究』おうふう 要点 以下の特殊性について考えるために、挿入句の構文的職能について考える 白き衣の萎えたると見ゆる着て、掻練の張綿なるべし、腰よりしもに引きかけて、側みてあれば、顔は見えず(落窪)…

小田勝(2006)不十分終止の句(3)提示句の諸相

小田勝(2006)「不十分終止の句」『古代語構文の研究』おうふう 要点 「提示句」とその連続について、a の変形に b, cがあることを指摘する(第3節) a 此ノ牛、片山ニ―ノ石ノ穴有リ、其ノ穴ニ入ル。(典型的な提示句) b 此ノ牛、片山ニ―ノ石ノ穴有リ、入…

三宅清(2005.3)推定の助動詞「めり」と「なり」の意味用法:証拠の在り様をめぐって

三宅清(2005.3)「推定の助動詞「めり」と「なり」の意味用法:証拠の在り様をめぐって」『国語学研究』68 要点 メリは視覚、ナリは聴覚に基づく推定とされるところ、Evidential の観点から改めて、視覚・聴覚という分析を超えて考えたい 先行論、メリ・ナ…

木下書子(1997.2)係助詞「なむ」の表現性:『源氏物語』における結びの省略例を通して

木下書子(1997.2)「係助詞「なむ」の表現性:『源氏物語』における結びの省略例を通して」『国語国文学研究』32 要点 ナムの衰退過程について考えたい ナムに指摘される特徴3点に基づいて、結びの省略例を中心に考えると、 結びの省略例が多い 省略の場合…

田中重太郎(1966)逆接仮定条件を示す接続助詞「と」の用例について

田中重太郎(1966)「逆接仮定条件を示す接続助詞「と」の用例について」『明日香』31(9) 要点 平安朝文法史のト・トモの項に、以下の例が引かれている さはれさまでなくと、いひそめてむことはとて、(枕) あいきやうなくと、ことばしなめきなどいへば、(…

小松光三(1992.11)体言に連なる助動詞「む」の表現:『枕草子』の場合

小松光三(1992.11)「体言に連なる助動詞「む」の表現:『枕草子』の場合」『国語と国文学』69(11) 要点 連体ムの「仮定・婉曲」の説明に問題があるので、統一的説明を目指して、(中古和文の代表としての)枕草子の連体ムについて考える 以下の5つの傾向が…

江原由美子(2002.11)トモによる逆接条件表現

江原由美子(2002.11)「トモによる逆接条件表現」『岡山大学大学院文化科学研究科紀要』14 要点 逆接仮定条件のトモが事実を述べる場合に用いられることがある(大わだ淀むとも) このいわゆる「修辞的仮定」が何なのかを考えるために、トモの現象面を明ら…

小島聡子(1995.10)動詞の終止形による終止:中古仮名文学作品を資料として

小島聡子(1995.10)「動詞の終止形による終止:中古仮名文学作品を資料として」『築島裕博士古稀記念国語学論集』汲古書院 要点 動詞の終止形で言い切られる文を整理する そもそも、終止形終止の例は多くない 文体的に、消息文(評論文的)な文には終止形終…

土岐留美江(2005.10)平安和文会話文における連体形終止文

土岐留美江(2005.10)「平安和文会話文における連体形終止文」『日本語の研究』1(4) 要点 中古における表現性のない連体形終止の例は、先駆的な例として位置づけられているが、合一が室町に完了することを考えれば「直接的な走りと見るのはやや短絡すぎる」…

近藤泰弘(1995)中古語の副助詞の階層性について:現代語と比較して

近藤泰弘(1995)「中古語の副助詞の階層性について:現代語と比較して」益岡隆志ほか編『日本語の主題と取り立て』くろしお出版 要点 中古語の副助詞の体系全体の特徴を、語順を中心に記述する ダニ・スラ・サヘ・ノミ・バカリ・マデ・ナド(・ヅツ) 格助…

酒匂志野(2002.7)源氏物語における複合動詞「~しそむ」の意味

酒匂志野(2002.7)「源氏物語における複合動詞「~しそむ」の意味」『国文』97 要点 源氏を対象に、Vシソムのアスペクト的な意味について考える 以下の観点から分類する 「短時間の具体的な動作・変化」か「長期にわたる大規模で複合的な動作・変化・状態」…