ronbun yomu

言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

係り結び

鈴木博(1982.3)『勅規桃源鈔』の国語学的考察

鈴木博(1982.3)「『勅規桃源鈔』の国語学的考察」『滋賀大学教育学部紀要 人文・社会・教育科学』31. 要点 両足院本の『勅規桃源鈔』(雲章一慶講、桃源瑞山1462抄)の資料性について。 (「諸本の概略」は原論文参照) コソの結びにサフラウメが多く現れ…

木下書子(1991.9)係り結び衰退の経緯に関する一考察

木下書子(1991.9)「係り結び衰退の経緯に関する一考察」『国語国文学研究』27. 要点 係り結びにおいて、係りの語と結びの語との間に意味関係が成り立たない例があり、これは例は少ないものの、全てが異例であるとまでは言い難い。 隠れなき御匂ひぞ、風に…

近藤要司(2020.11)述部内部の係り結び:連体形ニアリに係助詞が介入する場合

近藤要司(2020.11)「述部内部の係り結び:連体形ニアリに係助詞が介入する場合」青木博史・小柳智一・吉田永弘編『日本語文法史研究5』ひつじ書房. 要点 ニアリ構文に係り結びが介入する例の変遷について考える。 間なく恋ふれにかあらむ草枕(万621) 上…

伊牟田経久(1976.12)ナムの係り結び

伊牟田経久(1976.12)「ナムの係り結び」『佐伯梅友博士喜寿記念国語学論集』表現社. 要点 ナム・ナモを中心とした係り結びについて、 1 ナムの特徴に、「ナムの場合、ゾの違って、結びが連体修飾語となる場合がある」ことが挙げられる 2 上代のナモは、以…

勝又隆(2022.3)『竹取物語』の地の文におけるゾとナムの係り結びの文章構成上の働きについて

勝又隆(2022.3)「『竹取物語』の地の文におけるゾとナムの係り結びの文章構成上の働きについて」『福岡教育大学国語科研究論集』63. 要点 竹取中のゾ・ナムによる係り結びの役割が、以下の差異を持つことを主張する 「ゾは補足的な解説を挿入し、」 「ナム…

森野崇(1987.12)情報伝達と係助詞:「は」及び「ぞ」「なむ」「こそ」の場合

森野崇(1987.12)「情報伝達と係助詞:「は」及び「ぞ」「なむ」「こそ」の場合」『学術研究 国語・国文学編(早稲田大学教育学部)』36. 要点 情報伝達の側面から、係助詞の機能を考える 旧情報・新情報を以下のように定義しておく 「旧情報」とは、受容主…

森野崇(2021.12)奈良時代の係助詞「なも」に関する考察

森野崇(2021.12)「奈良時代の係助詞「なも」に関する考察」『早稲田大学日本語学会設立60周年記念論文集 第2冊』ひつじ書房. 要点 上代の宣命に見られるナモを、中古と比較しながら記述する まず前接語と結びについて、 前接語はト・テがほとんどで、中古…

森野崇(1987.12)係助詞「なむ」の機能:そのとりたての性質と待遇性をめぐって

森野崇(1987.12)「係助詞「なむ」の機能:そのとりたての性質と待遇性をめぐって」『国語学研究と資料』11. 要点 前稿(1987.6)で示した以下のナムの機能のうち、伝達性については前稿で論じたので、ここでは「とりたて」と待遇性について述べる 「「なむ…

近藤泰弘(1980)構文上より見た係助詞「なむ」:「なむ」と「ぞ――や」との比較

近藤泰弘(1980)「構文上より見た係助詞「なむ」:「なむ」と「ぞ――や」との比較」『国語と国文学』56(12).*1 要点 ナムを中心に係助詞の「強調」の内実について考える 阪倉のナムの「卓立(prominence)の強調」*2という指摘は、以下の3点によって妥当であ…

森野崇(1987.6)係助詞「なむ」の伝達性『源氏物語』の用例から

森野崇(1987.6)「係助詞「なむ」の伝達性『源氏物語』の用例から」『国文学研究』92. 要点 ナムが、「確定的なモノ・コトをとりたて、それを聞き手に対して丁寧に、穏やかにもちかける機能を有する」ことを主張する まず、先学の指摘する伝達性については…

中川祐治(2004.3)「コソ」「ゾ」による係り結びと交替する副詞「マコトニ」について:原拠本『平家物語』と『天草版平家物語』の比較を手がかりに

中川祐治(2004.3)「「コソ」「ゾ」による係り結びと交替する副詞「マコトニ」について:原拠本『平家物語』と『天草版平家物語』の比較を手がかりに」『文学・語学』178. 要点 大野(1993)の「副詞表現の発達が係り結びの衰退の要因となった」という指摘…

森野崇(1989.12)係助詞「ぞ」についての考察:『源氏物語』の用例から

森野崇(1989.12)「係助詞「ぞ」についての考察:『源氏物語』の用例から」『国語学研究と資料』13. 要点 係助詞ゾが、「表現主体による指定の判断を明示する」助詞であることを主張する どの部分をとりたてるかで、2通りがあり得る 上接する部分をとりたて…

内間直仁(1985.3)係り結びのかかりの弱まり:琉球方言の係り結びを中心に

内間直仁(1985.3)「係り結びのかかりの弱まり:琉球方言の係り結びを中心に」『沖縄文化研究』11 要点 中央語の係り結び衰退の要因は明らかでないが、琉球語が示唆する点がある 琉球の活用形について2点、 奄美・沖縄では終止形、連体形、du係結形が概ね区…

勝又隆(2005.10)上代「−ソ−連体形」文における話し手の認識と形容詞述語文

勝又隆(2005.10)「上代「−ソ−連体形」文における話し手の認識と形容詞述語文」『日本語の研究』1(4) 要点 上代におけるソの係り結び(論文では「ーソ―連体形」)が、推量系の助辞を結びに取りにくいことが何の反映であるのかを考える 機能の点から 上代の…

木下書子(1997.2)係助詞「なむ」の表現性:『源氏物語』における結びの省略例を通して

木下書子(1997.2)「係助詞「なむ」の表現性:『源氏物語』における結びの省略例を通して」『国語国文学研究』32 要点 ナムの衰退過程について考えたい ナムに指摘される特徴3点に基づいて、結びの省略例を中心に考えると、 結びの省略例が多い 省略の場合…

土岐留美江(2005.10)平安和文会話文における連体形終止文

土岐留美江(2005.10)「平安和文会話文における連体形終止文」『日本語の研究』1(4) 要点 中古における表現性のない連体形終止の例は、先駆的な例として位置づけられているが、合一が室町に完了することを考えれば「直接的な走りと見るのはやや短絡すぎる」…

吉田茂晃(2005.11)"結び"の活用形について

吉田茂晃(2005.11)「"結び"の活用形について」『国語と国文学』82(11) 前提 吉田(2001, 2004) 品詞ごとの文終止能力の見取り図 弱活用 存在詞 形容詞 終止形 弱 強 強 連体形 強 強 弱 連体形係り結び すなわち、弱活用の連体形は文終止がむしろ中心的な…

吉田茂晃(2004.3)文末時制助動詞の活用形について

吉田茂晃(2004.3)「文末時制助動詞の活用形について」『山辺道』48 前提 吉田(2001) 会話文における弱活用の連体形終止の用例は終止形のそれよりもむしろ多く、 連体形は叙述の流れを切るところにその本質がある 動詞述語文で係助詞と文末活用の関係が確…

吉田茂晃(2001.3)文末用言の活用形について

吉田茂晃(2001.3)「文末用言の活用形について」『山辺道』45 前提 係り結び研究は係り結び文だけを見ているが、用言述語全例を見て考えるべきではないか 弱活用、アリ、形容詞の終止・連体・已然形の例を考える 資料を以下の4類に分け、地の文・会話文に分…

永田里美(2018.3)『源氏物語』における反語表現:会話文中の「ヤハ」、「カハ」について

永田里美(2018.3)「『源氏物語』における反語表現:会話文中の「ヤハ」、「カハ」について」『跡見学園女子大学文学部紀要』53 要点 いわゆる反語のヤハ・カハの差異を示す ヤハの結びは既実現要素、カハの結びはムなどの未実現要素に偏り、 ヤハは聞き手…

鴻野知暁(2012.3)助詞コソの文末における一用法

鴻野知暁(2012.3)「助詞コソの文末における一用法」『言語情報科学』10 要点 終止位置におけるコソについて、以下のことを示す 上代に文の中間で用いられていたコソが、中古に文末の述語内部にも生起し、 それに伴い、ニコソアレが頻繁に使われるようにな…

小田勝(2010.2)疑問詞の結び

小田勝(2010.2)「疑問詞の結び」『岐阜聖徳学園大学紀要 教育学部編』49 要点 疑問詞疑問文における結びの形について、上代~中古の実態を調査し、疑問詞~終止形/連体形の両型が存することを説明する 問題 疑問詞疑問文の文末に、連体形・終止形の両方が…

坂詰力治(1990.2)室町時代における「こそ」の係り結び

坂詰力治(1990.2)「室町時代における「こそ」の係り結び」『近代語研究』8 要点 「こそ」の係り結びの崩壊の過程について 文語資料において 文語資料として、謡曲(車屋本)、曽我物語(大山寺本) 文語資料はどちらも9割弱が正しく係り結びされている 結…

青木博史(2015.11)終止形・連体形の合流について

青木博史(2015.11)「終止形・連体形の合流について」秋元実治・青木博史・前田満編『日英語の文法化と構文化』ひつじ書房 要点 終止形・連体形の合流に関して、中古は終止形→中世は連体形という見方をせず、文末準体句の広がりから見る 先行論 形態論的な…

大西拓一郎(2002.9)方言の係り結び

大西拓一郎(2002.9)「方言の係り結び」『国語論究 第9集 現代の位相研究』明治書院 要点 本土方言の係り結びについての共時的整理と、通時的見通しの提示 方言の係り結び 以下の3タイプが見られる こそ~已然形 疑問詞~已然形 疑問文~連体形 形態面のの…

衣畑智秀(2007.7)付加節から取り立てへの歴史変化の2つのパターン

衣畑智秀(2007.7)「付加節から取り立てへの歴史変化の2つのパターン」青木博史(編)『日本語の構造変化と文法化』ひつじ書房 要点 係り結び、間接疑問文はいずれもその成立に注釈節が想定されるが、異なる特徴(係り結びは直接疑問)を持つ 「注釈節のよ…

野村剛史(2001.1)ヤによる係り結びの展開

野村剛史(2001.1)「ヤによる係り結びの展開」『国語国文』70-1 要点 ヤによる係り結びに倒置・注釈・挿入説を想定せず、カの係り結びの位置に侵入したものと考える ヤの性格と係り結び 終助詞・間投助詞ヤは呼びかけ、問いかけなどの対者的性格が大方認め…

野村剛史(1995.9)カによる係り結び試論

野村剛史(1995.9)「カによる係り結び試論」『国語国文』64-9 要点 カによる係り結びの成立に注釈説を据え、その展開に以下の三段階を想定する 注釈的二文連置 「疑問的事態カ…実事的事態」 「…カ…ム系助動詞」 成立諸説 諸説は以下参照 hjl.hatenablog.com…

野村剛史(2005.11)中古係り結びの変容

野村剛史(2005.11)「中古係り結びの変容」『国語と国文学』82-11 語順法則 上代は以下の語順がほぼ守られるが、中古に入ると崩壊する …係助詞…ノ・ガ…連体形 物思へれかも声の悲しき これは、結びの部分が連体形句(≠連体形述語)であることの現れだが、中…

鴻野知暁(2010.12)ゾの係り結びの発生について

鴻野知暁(2010.12)「ゾの係り結びの発生について」『国語国文』79-12 要点 ゾの係り結びの成立に注釈説を想定する ただし、カの注釈的説明(原因・理由)と必ずしも同一視できない点があり、ゾの場合はそれを「体言ゾ」の説明性に求める 係り結び成立諸説…