ronbun yomu

言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

助動詞

鈴木浩(2002.2)近世上方語のミルヤウナ:ミタイダ成立前史

鈴木浩(2002.2)「近世上方語のミルヤウナ:ミタイダ成立前史」『文芸研究』87 要点 ミルヤウナが比況表現に用いられるようになる過程と ミルヤウナ→ミタヤウナの移行について ミルヤウナ ミタイダはミタヤウダから変化したもの ~ヲミルヤウナまで遡って、…

渡辺由貴(2007.3)「と思う」による文末表現の展開

渡辺由貴(2007.3)「「と思う」による文末表現の展開」『早稲田日本語研究』16 要点 タイトルそのまま、モダリティ形式史として 渡辺(2015)の前提 hjl.hatenablog.com 「と思う」 文末、終止形、非過去という条件で用いられる、助動詞的な「と思う」 明日…

渡辺由貴(2015.9)文末表現「と思ふ」と「とおぼゆ」の史的変遷

渡辺由貴(2015.9)「文末表現「と思ふ」と「とおぼゆ」の史的変遷」『日本語文法』15-2 要点 近代に定着するモダリティ相当形式の「と思う」と、その前身の「とおぼゆ」について 問題と前提 発話者主体、非過去・非否定という条件で、モダリティ形式として…

山口堯二(2002.11)「はずだ」の成立

山口堯二(2002.11)「「はずだ」の成立」『国語と国文学』79-11 要点 「はずだ」が弓の部位の「はず」に始まることを示し、「はずだ」の成立に至るまでを論じる 弓の「はず」 あゆひ抄、「べし」に関して「〈はず〉といふ詞は、弓のはずのあふ事よりいひそ…

仁科明(2016.6)状況・論理・価値:上代の「べし」と非現実事態

仁科明(2016.6)「状況・論理・価値:上代の「べし」と非現実事態」『国文学研究(早稲田大学)』179 以下前提を前稿(仁科2016.3)から 事態のあり方への把握と述べ方について、 まず、発話時を基準とした上での現実領域に属するか非現実領域に属するか 現…

仁科明(2016.3)上代の「らむ」:述語体系内の位置と用法

仁科明(2016.3)「上代の「らむ」:述語体系内の位置と用法」『国語と国文学』93-3 要点 上代の「らむ」に関して、 上代語の述語体系中の「らむ」を「現在未確認事態・臆言」の形式として位置付け、 「らし」との違いを明確にする 上代の述語体系 事態のあ…

小田勝(1994.7)接続句の制約からみた中古助動詞の分類

小田勝(1994.7)「接続句の制約からみた中古助動詞の分類」『國學院雑誌』95-7 要点 小田(1990)の修正と、それに基づく助動詞の階層的分類 hjl.hatenablog.com 前提 接続句中の助動詞の出現の制限は文の階層性を反映するものである 小田(1990)を一部改…

矢島正浩(1993.2)天草版平家物語における打消推量・打消意志の助動詞:資料性との関わりを中心として

矢島正浩(1993.2)「天草版平家物語における打消推量・打消意志の助動詞:資料性との関わりを中心として」『愛知教育大学研究報告 人文科学編』42 要点 天草版平家において、極めて近い用法を持つマジイ・マイが併存することに着目し、その意味について考え…

岩田美穂(2007.7)例示を表す並列形式の歴史的変化:タリ・ナリをめぐって

岩田美穂(2007.7)「例示を表す並列形式の歴史的変化:タリ・ナリをめぐって」青木博史編『日本語の構造変化と文法化』ひつじ書房 要点 不十分終止由来の並列形式の史的変化についての統合的な分析 問題 疑問由来の例示並列は、不定性を有するために例示の…

岡部嘉幸(2011.5)現代語からみた江戸語・江戸語からみた現代語:ヨウダの対照を中心に

岡部嘉幸(2011.5)「現代語からみた江戸語・江戸語からみた現代語:ヨウダの対照を中心に」金澤裕之・矢島正浩編『近世語研究のパースペクティブ』笠間書院 要点 江戸語のヨウダ・ソウダの現代語との差異を指摘し、江戸語のヨウダが現状描写性を持つ一方で…

舘谷笑子(1998.12)助動詞タシの成立過程

舘谷笑子(1998.12)「助動詞タシの成立過程」佐藤喜代治編『国語論究 7 中古語の研究』明治書院 要点 助動詞タシの成立を連用形+イタシ、特にメダタシの語末が分出したものと考える タシ型形容詞分出説 甚だしい意を持つ形容詞イタシがついた複合形容詞の…

松尾弘徳(2009.6)新方言としてのとりたて詞ゲナの成立:福岡方言における文法変化の一事例

松尾弘徳(2009.6)「新方言としてのとりたて詞ゲナの成立:福岡方言における文法変化の一事例」『語文研究』107 要旨 福岡における若者中心の方言の変化に見られる、助動詞ゲナが「数学げな嫌い」となる、とりたてのゲナの成立について 九州のゲナ 近世期に…

高山善行(2014.1)条件表現とモダリティ表現の接点:「む」の仮定用法をめぐって

高山善行(2014.1)「条件表現とモダリティ表現の接点:「む」の仮定用法をめぐって」益岡隆志・大島資生・橋本修・堀江薫・前田直子・丸山岳彦(編)『日本語複文構文の研究』ひつじ書房 要点 「む」の文中用法の一つである仮定用法についての記述 仮定のム…

大木一夫(2012.9)不変化助動詞の本質、続貂

大木一夫(2012.9)「不変化助動詞の本質、続貂」『国語国文』81-9 hjl.hatenablog.com 要点 金田一の論証方法に従って分析を進めると、実は金田一の結論とは異なる帰結(文末に現れる形式も客観的である)が導き出される 併せて、金田一の指摘の現代的意味…

尾上圭介(2012.3)不変化助動詞とは何か:叙法論と主観表現要素論の分岐点

尾上圭介(2012.3)「不変化助動詞とは何か:叙法論と主観表現要素論の分岐点」『国語と国文学』89-3 hjl.hatenablog.com 要点 現代のモダリティ論は非現実形式としてのモダリティ(A説)と話者の主観表現としてのモダリティ(B説)に分かれ、金田一の不変化…

金田一春彦(1953)不変化助動詞の本質:主観的表現と客観的表現の別について

このあたりを読む 金田一春彦(1953)「不変化助動詞の本質:主観的表現と客観的表現の別について」『国語国文』22-2, 3 金田一春彦(1953)「不変化助動詞の本質、再論:時枝博士・水谷氏両家に答えて」『国語国文』22-9 尾上圭介(2012.3)「不変化助動詞…

青木博史(2011.6)日本語における文法化と主観化

青木博史(2011.6)「日本語における文法化と主観化」澤田治美編『ひつじ意味論講座5 主観性と主体性』ひつじ書房 要点 いわゆる「主観化」に関する批判的検討 これが一方向的な変化かどうか 「文法化」と関連付けられるものかどうか 「~キル」 語彙的複合…

大久保一男(2016.2)「思さる」の「る」

大久保一男(2016.2)「「思さる」の「る」」『国語研究』79 要点 思さる(思す+る)の「る」を尊敬と解釈するものがあるが、少なくとも源氏においてはそうではないものと考える 上(桐壺)も、藤壺の見給はざらむを飽かず思さるれば、(紅葉賀) 物足りな…

吉田永弘(2016.2)「る・らる」における否定可能の展開

吉田永弘(2016.2)「「る・らる」における否定可能の展開」『国語研究』79 これとセット hjl.hatenablog.com 要点 吉田(2013)の肯定可能の分類によって否定可能の分析を行い、肯定可能と並行的に推移していることを明らかにする 肯定可能の展開 上記事参…

藏本真由(2018.3)前接要素・形態的特徴からみる「気がする」の意味変化

藏本真由(2018.3)「前接要素・形態的特徴からみる「気がする」の意味変化」『国語語彙史の研究』37 要点 現代にかけて、「気がする」に意味変化が起こっていることの指摘 ただ其当時に立ち戻りたい様な気もした(漱石・思ひ出す事など) この間より、ちょ…

吉田永弘(2013.10)「る・らる」における肯定可能の展開

吉田永弘(2013.10)「「る・らる」における肯定可能の展開」『日本語の研究』9-4 www.jstage.jst.go.jp 要点 後発的な「る・らる」の肯定可能の用法に関して、 なぜ中古では肯定可能を表せなかったのか 肯定可能を表せない場合どのような形式で表していたの…

新田哲夫(2018.7)石川県白峰方言と日本語史:推量意志の「うず」を中心に

新田哲夫(2018.7)「石川県白峰方言と日本語史:推量意志の「うず」を中心に」『日本語学』37-7 要点 白峰方言における、日本語史で問題となる文法的特徴について 意志推量のオ段拗音 意志推量のウズ 白峰方言に関して 石川県南部の白峰、方言的特徴概ね西…

釘貫亨(2014.12)上代語活用助辞と動詞語尾との歴史的関係について

釘貫亨(2014.12)「上代語活用助辞と動詞語尾との歴史的関係について」『国語国文』83-12 要点とこれまでの研究 上代助動詞(論文では活用助辞)成立に関する釘貫説 「す・さす」が自他対応の自動「~る」、と他動「~す」(ex.なる・なす、よる、よす)か…