ronbun yomu

言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

条件表現

菊田千春(2011.9)複合動詞テミルの非意志的用法の成立:語用論的強化の観点から

菊田千春(2011.9)「複合動詞テミルの非意志的用法の成立:語用論的強化の観点から」『日本語文法』11-2 要点 テミルの非意志的用法の成立に、語用論的推意の前景化による試行の意味の希薄化を想定 問題 テミルは主節において試行の意で用いられ、意志的行…

吉田永弘(2001.3)平家物語のホドニ:語法の新旧

吉田永弘(2001.3)「平家物語のホドニ:語法の新旧」『国語研究』64 要点 吉田(2000)のホドニの用法を基準にした、平家諸本の位置付けの検討 hjl.hatenablog.com 前提 吉田(2000)によるホドニの三段階 平安において、前件と後件が時間的に重なる用法(…

小川志乃(2004.6)カラニの一用法:接続助詞カラ成立の可能性をめぐって

小川志乃(2004.6)「カラニの一用法:接続助詞カラ成立の可能性をめぐって」『語文』82 要点 カラ成立の「カラニのニ脱落説」についての検討 従来逆接とされたムカラニを原因理由の一部と捉えることで、カラニが断絶しなかったものと考える 問題 カラ成立の…

山口佳紀(2016.3)『万葉集』におけるテハとテバの用法

山口佳紀(2016.3)「『万葉集』におけるテハとテバの用法」『成蹊大学文学部紀要』51 要点 上代におけるテハ・テバの用法整理と問題例の処理 テハの用法3種 A:前件として既定の事態を述べて、後件にその後に生ずる事態を述べるタイプ。してからは・したあ…

迫野虔徳(2012.12)仮定条件表現「ウニハ」

迫野虔徳(2012.12)「仮定条件表現「ウニハ」」『方言史と日本語史』清文堂 要点 東国抄物に見られる「ウニハ」の再検討 問題 金田弘の指摘する、東国抄物の特徴語 コピュラのダ 助動詞ナイ 助動詞ヨウ 助動詞ベイ ハ行四段動詞連用形促音便 形容詞連用形の…

吉田永弘(2007.7)中世日本語の因果性接続助詞の消長:ニヨッテの接続助詞化を中心に

吉田永弘(2007.7)「中世日本語の因果性接続助詞の消長:ニヨッテの接続助詞化を中心に」青木博史編『日本語の構造変化と文法化』くろしお出版 要点 ホドニからニヨッテへの交替について、 接続助詞化の過程を構造変化に求め、 交替の要因にホドニの用法拡…

竹内史郎(2006.3)ホドニの意味拡張をめぐって:時間関係から因果関係へ

竹内史郎(2006.3)「ホドニの意味拡張をめぐって:時間関係から因果関係へ」『日本語文法』6-1 要点 時間関係を示すホドニから因果関係を示すホドニへの意味拡張について 特にそのプロセスについて「因果連鎖パターン」の慣習化という観点からの説明を試み…

吉田永弘(2000.12)ホドニ小史:原因理由を表す用法の成立

吉田永弘(2000.12)「ホドニ小史:原因理由を表す用法の成立」『国語学』51-3 要点 時間的用法のホドニの原因理由用法への拡張について、以下の過程を想定 平安において、前件と後件が時間的に重なる用法 院政鎌倉期に、時間的重なりを持たず、先後関係を持…

矢島正浩(2018.12)条件表現史から見た近世:時代区分と東西差から浮かび上がるもの

矢島正浩(2018.12)「条件表現史から見た近世:時代区分と東西差から浮かび上がるもの」『日本語学』37-13 前提 近世語の時代的位置付けとして、「文語・口語」「江戸と京阪」「方言の対立」「階級的言語の対立」など、二元・対立の時代とされてきた 条件表…

宮内佐夜香(2007.10)江戸語・明治期東京語における接続助詞ケレド類の特徴と変化:ガと対比して

宮内佐夜香(2007.10)「江戸語・明治期東京語における接続助詞ケレド類の特徴と変化:ガと対比して」『日本語の研究』3-4 問題 逆接確定条件について、現代語はケレドが多いが、江戸語ではガが目立つ 江戸語にはケドが確認されないなどの時代的差異もある …

外山映次(1969)条件句を作る「ウニハ」をめぐって

外山映次(1969)「条件句を作る「ウニハ」をめぐって」『佐伯博士古稀記念国語学論集』表現社 要点 特に洞門抄物に見られる「ウニハ」について ムニハ > ンニハ を経た室町口語のウニハを洞門抄物が取り入れ、固定化したものと見る 問題 無門関抄四十八則の…

蜂谷清人(1977)狂言古本における仮定条件表現:「ならば」「たらば」とその周辺

蜂谷清人(1977)「狂言古本における仮定条件表現:「ならば」「たらば」とその周辺」『成蹊国文』10、『狂言台本の国語学的研究』笠間書院所収 要点 仮定条件表現の変化のうち、特に次の3つの事柄について、狂言台本を主資料として述べる 連体形ナラバ・未…

吉田永弘(2014.1)古代語と現代語のあいだ:転換期の中世語文法

吉田永弘(2014.1)「古代語と現代語のあいだ:転換期の中世語文法」『日本語学』33-1 要点 転換期として位置付けられる中世語の事例として、 連体法の「む」の衰退 仮定形の成立 肯定可能の「る・らる」の拡張 を挙げ、これを軌を一にする変化として統一的…

吉田永弘(2015.11)「とも」から「ても」へ

吉田永弘(2015.11)「「とも」から「ても」へ」秋元実治・青木博史・前田満編『日英語の文法化と構文化』ひつじ書房 要点 「とも」から「ても」への交替過程とその要因について 「ても」は当初逆接仮定の形式ではなかった 中世後期に助詞「て」+助詞「も」…

宮内佐夜香(2013.10)近世後期江戸語における逆接表現旧形式「ド」「ドモ」について

宮内佐夜香(2013.10)「近世後期江戸語における逆接表現旧形式「ド」「ドモ」について」『近代語研究』17 要点 近世~近代にかけて衰退したド・ドモが、衰退期にどのようにガ・ケレド・ケレドモと共存しているか 接続形式など、環境は限定的で、文語的位相…

吉田永弘(2011.11)タメニ構文の変遷:ムの時代から無標の時代へ

吉田永弘(2011.11)「タメニ構文の変遷:ムの時代から無標の時代へ」青木博史編『日本語文法の歴史と変化』くろしお出版 問題 タメニの意味が目的になるか原因になるかは、述語の意味と形式によってある程度決まる 意志性述語の無標形→目的:本を買うために…

村田菜穂子(1996.10)「ケレドモ」の成立:「閉じた表現」への推移と不変化助動詞「マイ」成立との有機的連関を見据えて

村田菜穂子(1996.10)「「ケレドモ」の成立:「閉じた表現」への推移と不変化助動詞「マイ」成立との有機的連関を見据えて」『国語語彙史の研究』16 要点 「ケレドモ」の成立に、ドモの肥大化を背景とする、「マイケレ+ドモ」から「マイ+ケレドモ」への異…

江口匠(2016.3)〈逆接〉を表す「て」をめぐって

江口匠(2016.3)「〈逆接〉を表す「て」をめぐって」『人文』14 要点 逆接の「て」が現れる構文条件について 自分でいって、わすれるやつがあるか。 あんな事故にあって助かったのですか。本当に運がいい人だ。 これまでの指摘と枠組み 前提的に予測される…

高山善行(2014.1)条件表現とモダリティ表現の接点:「む」の仮定用法をめぐって

高山善行(2014.1)「条件表現とモダリティ表現の接点:「む」の仮定用法をめぐって」益岡隆志・大島資生・橋本修・堀江薫・前田直子・丸山岳彦(編)『日本語複文構文の研究』ひつじ書房 要点 「む」の文中用法の一つである仮定用法についての記述 仮定のム…

馬紹華(2017.3)原因・理由を表す「せい」の成立について

馬紹華(2017.3)「原因・理由を表す「せい」の成立について」『訓点語と訓点資料』138 要点 望ましくない原因・理由を表す「せい」について、以下2点を明らかにする 「所為」から「せい」への変化の過程 原因理由用法の成立の過程 「所為」 源流として、 漢…

矢島正浩(2018.3)タラ節の用法変化

矢島正浩(2018.3)「タラ節の用法変化」『国語国文学報(愛知教育大学)』76 この論文とセット hjl.hatenablog.com 要点 「ナラバ節史に対して、タラ節はどのような歴史を描くのか」がテーマ 同じく、タラ用法・ナラ用法の別で見ていく タラ用法:前件と後…

矢島正浩(2017.11)中央語におけるナラバ節の用法変化

矢島正浩(2017.11)「中央語におけるナラバ節の用法変化」有田節子編『日本語条件文の諸相:地理的変異と歴史的変遷』くろしお出版 矢島(2017)による、「ナラバ」「タラバ」に関する小林(1996)説のまとめと問題提起 完了性仮定条件:未来時における動作…

兪三善(2015.10)アーネスト・サトウ『会話篇』における言いさし表現について

兪三善(2015.10)「アーネスト・サトウ『会話篇』における言いさし表現について」『実践国文学』88 要点 サトウ『会話篇』に見られる言いさしについて ご ていねい に ありがとう ございます.さあ まず, まず, こちら へ どうか.わざと とそ を しとつ…