ronbun yomu

言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

白井純(2001.9)助詞ヨリ・カラの主格標示用法について:キリシタン文献を中心として

白井純(2001.9)「助詞ヨリ・カラの主格標示用法について:キリシタン文献を中心として」『国語学』52-3 要点 ヨリ・カラの主格標示用法について、 キリシタン宗教文献類に多く用いられることを指摘し、 その要因として、上位待遇表現にル・ラルを用いず給…

山田昌裕(2014.2)「デサエ」二種の由来

山田昌裕(2014.2)「「デサエ」二種の由来」『恵泉女学園大学紀要』26 要点 山田(2012)の続き hjl.hatenablog.com 問題 デサエには、連接「デ+サエ」と、融合化「デサエ」がある(山田2012) 連接デサエ:有名観光地{でさえ/で}、多言語での看板やパ…

間淵洋子(2000.6)格助詞「で」の意味拡張に関する一考察

間淵洋子(2000.6)「格助詞「で」の意味拡張に関する一考察」『国語学』51-1 要点 格助詞「で」の意味拡張について、 特に動作主格(自分でやる)、原因格(風邪で休む)が発達したことを示し、 付加的な格を示す「で」が、中心的用法要素へと参入したこと…

山田昌裕(2012.10)「デサエ」の融合化とその背景

山田昌裕(2012.10)「「デサエ」の融合化とその背景」『表現研究』96 要点 デ相当でないデサエについて、その発生の背景を考える 融合化したデサエ 融合化したデサエの問題を扱う ひっきりなしに通る電車の音{でさえ/*で/が}、ここでは商店街の活気をさ…

坂梨隆三(2015.2)春色梅児誉美の「腹を立つについて」

坂梨隆三(2015.2)「春色梅児誉美の「腹を立つについて」」『近代語研究』18 概観 近世後期に「腹を立つ」という言い方がある おまはんは腹をたゝしつたのかへ 腹が立つ/腹を立てる とありたいところ、以下の見方がある 自他両用の「立つ」を想定し、この…

榎木久薫(1996.9)平安初期訓点資料における使役の格表示:ヲシテの使用に着目して

榎木久薫(1996.9)「平安初期訓点資料における使役の格表示:ヲシテの使用に着目して」『訓点語と訓点資料』98 要点 平安初期訓点資料における使役の格標示は「~ヲ~シム」「~ニ~シム」「~ヲシテ~シム」の性格について これらは中期に「~ヲシテ~シム…

竹内史郎(2007.7)節の構造変化による接続助詞の形成

竹内史郎(2007.7)「節の構造変化による接続助詞の形成」青木博史編『日本語の構造変化と文法化』ひつじ書房 要点 ガ(格助詞→接続助詞)に代表される、節の構造変化による接続助詞の形成について、 他の事例の指摘 契機や要因の考察 ガ・ヲ ガ Xノ連体ガ:…

佐々木隆(2012.3)二つの目的語をもつ上代語の構文:助詞「を」の機能

佐々木隆(2012.3)「二つの目的語をもつ上代語の構文:助詞「を」の機能」『人文』10 要点 上代の「二重ヲ格」(に見える)構文についての分析 上代の場合、2つの目的語のうち1つめだけがヲを伴う「二重目的語構文」と呼ぶべきもの 上代の二重目的語構文 上…

佐伯暁子(2009.4)平安時代から江戸時代における二重ヲ格について

佐伯暁子(2009.4)「平安時代から江戸時代における二重ヲ格について」『国語と国文学』86-4 hjl.hatenablog.com と関連して 要点 近世以前では、現代で容認されない二重ヲ格が容認されることがある そのあり方の整理 現代語における二重ヲ格 ヲの組み合わせ…

松野美海(2014.11)感情動詞オソルのヲ/ニ格選択について:中世和漢混交文を中心に

松野美海(2014.11)「感情動詞オソルのヲ/ニ格選択について:中世和漢混交文を中心に」『名古屋大学国語国文学』107 要点 「恐れる」の格体制について、中世和漢混淆文を対象として、ヲ・ニの機能的対立を明らかにする 太郎は事業の失敗を恐れて、何もでき…

永澤済(2016.9)判決における漢語動詞の特殊用法:「XとYとを離婚する」をめぐって

永澤済(2016.9)「判決における漢語動詞の特殊用法:「XとYとを離婚する」をめぐって」『言語文化論集(名古屋大学大学院国際言語文化研究科)』38-1 doi.org 要点 民事判決に見られる「離婚する」の特殊な格支配について 原告と被告とを離婚する XとYとを…

佐伯暁子(2017.3)平安時代から江戸時代における「~ヲバ~ヲ」文について:二重ヲ格との比較も含めて

佐伯暁子(2017.3)「平安時代から江戸時代における「~ヲバ~ヲ」文について:二重ヲ格との比較も含めて」『岡大国文論稿』45 ヲバ~ヲの類型 対象ヲバ対象ヲ:女御殿、「笛をば聲をこそ聞け、見るやうやは有」とて(栄花) 相手ヲバ内容ヲ:適ニ出入スル人…

杉山俊一郎(2018.5)動詞「むくいる」の格支配について

杉山俊一郎(2018.5)「動詞「むくいる」の格支配について」『論輯(駒澤大学)』44 以下と関連して、動詞の格支配について hjl.hatenablog.com 問題 「むくいる」の格支配のあり方について 現代語は「~に報いる」 古代語は「~を報ゆ」 この交替は、 格助…

小田勝(2012.3)動詞「着換ふ」の格支配について

小田勝(2012.3)「動詞「着換ふ」の格支配について」『 岐阜聖徳学園大学国語国文学』31 id.nii.ac.jp 要点 中古における「着換ふ」の格支配の特殊なあり方について 問題点 「着換ふ」の格配置、現代語では「旧服ヲ新服ニ着替える」だが、中古では無助詞で…

山田昌裕(2018.1)格助詞「ガ」の用法拡大の様相:ヲ格名詞(対象)に下接する用法を中心として

山田昌裕(2018.1)「格助詞「ガ」の用法拡大の様相:ヲ格名詞(対象)に下接する用法を中心として」『国語と国文学』95-1 研究史(史的研究) 「水が飲みたい」に見られるガヲ交替の問題に関して 松村(1951)*1:室町以降に既に「水が飲みたい」「水を飲み…