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言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

準体

白田理人(2022.8)北琉球奄美喜界島北部方言の確認要求表現:視覚動詞命令形由来の形式を中心に

白田理人(2022.8)「北琉球奄美喜界島北部方言の確認要求表現:視覚動詞命令形由来の形式を中心に」『西日本国語国文学』9. 要点 喜界島に見られる以下の確認要求・同意要求表現(三宅2017)のうち、 小野津方言の -sumïː と 志戸桶方言の =miri について記…

近藤泰弘(1989.3)中古語の分裂文について

近藤泰弘(1989.3)「中古語の分裂文について」『日本女子大学紀要 文学部』38(近藤2000「中古語の分裂文」を参照). 要点 中古語の分裂文には、主語がモノ・ヒトとして解釈されるが、これが石垣法則に反するという問題がある [たけきものゝふの心をもなぐ…

久保薗愛(2022.1)鹿児島方言史における準体助詞の発達

久保薗愛(2022.1)「鹿児島方言史における準体助詞の発達」『中部日本・日本語学研究論集』和泉書院. 要点 鹿児島方言の準体助詞トの発達について、以下の5点を主張する 18C初頭(ロシア資料)にトは見られるが、コト準体、~ニの環境ではゼロ準体も見受け…

金銀珠(2022.1)主格助詞「が」の拡大と準体法の衰退

金銀珠(2022.1)「主格助詞「が」の拡大と準体法の衰退」『中部日本・日本語学論集』和泉書院. 要点 連体形+ガが、主格のNガの確立の際に与えた影響について、以下4点を主張する NガにおけるNは、古代語では指示対象が明確であるが(金2016, 2019)、中世…

佐藤順彦(2011.3)後期上方語におけるノデアロウの発達

佐藤順彦(2011.3)「後期上方語におけるノデアロウの発達」『日本語文法』11(1). 要点 江戸語のノダロウについては明らかな点が多いが、上方語についてはそうではない 上方語における事情推量を表す形式の調査結果 前期→後期にかけて、モノジャ>ノジャの…

佐藤順彦(2009.3)前期上方語のノデアロウ・モノデアロウ・デアロウ

佐藤順彦(2009.3)「前期上方語のノデアロウ・モノデアロウ・デアロウ」『日本語文法』9(1). 要点 前期上方語で未発達であったノデアロウの機能を、モノデアロウ・デアロウが担っていたことを主張する 現代語のノダロウの機能は事情推量であり、 前期上方…

小田勝(1996.10)連体形接続法:源氏物語を資料として

小田勝(1996.10)「連体形接続法:源氏物語を資料として」『国学院雑誌』97(10) 要点 文中の連体形が接続句として解釈される例について考える 内裏にもさる御心まうけどもある[=のに]、[コノ月モ]つれなくてたちぬ。(例は全て源氏) 連体修飾語や準体…

高山善行(2016.11)準体句とモダリティの関係をめぐって:中古語の実態

高山善行(2016.11)「準体句とモダリティの関係をめぐって:中古語の実態」福田嘉一郎・建石始(編)『名詞類の文法』くろしお出版 要点 以下の観点から、中古における標記の問題について記述する 準体句内のモの生起 モの後接要素 準体句内のモと述部のモ…

福嶋秩子(2017.5)準体助詞の分布と変化

福嶋秩子(2017.5)「準体助詞の分布と変化」大西拓一郎編『空間と時間の中の方言:ことばの変化は方言地図にどう現れるか』朝倉書店 要点 FPJDとGAJの準体助詞の分布と変化を概観し、新潟方言のイガンダベ(行くのだろう)について考える GAJとFPJDの準体助…

久保田篤(2002.11)江戸語における動詞連用形のー用法について

久保田篤(2002.11)「江戸語における動詞連用形のー用法について」『国語と国文学』79(11) 要点 江戸語における、現代には見られない連用形の用法「連用形名詞節」について考える 供を帰しがよかろを(遊子方言)/いっしょにとまりはどふだ(膝栗毛) 例は…

青木博史(2014.10)接続助詞「のに」の成立をめぐって

青木博史(2014.10)「接続助詞「のに」の成立をめぐって」青木他編『日本語文法史研究2』ひつじ書房 前提 以下の2点に留意しつつ、ノニの成立・発達について考えたい ノ+ニの構造をどのように把握すべきか 「意外感」「不満」の意味の出どころ ノニの出自…

平塚雄亮(2019.3)福岡市方言の準体助詞にみられる言語変化

平塚雄亮(2019.3)「福岡市方言の準体助詞にみられる言語変化」『中京大学文学会論叢』5 前提 福岡市の若年層によって、伝統的なトだけでなく、ノ・ンも用いられるようになっている が、どのような環境でそうなるかは報告されていない どういった環境で非伝…

坂井美日(2019.9)南琉球宮古語における準体の変化に関する考察

坂井美日(2019.9)「南琉球宮古語における準体の変化に関する考察」『方言の研究 5』ひつじ書房 要点 宮古語の準体にはゼロ準体と準体助詞 =su, =munu の準体があり、 ゼロ準体はコト準体から許容されなくなり、これは本土方言の歴史と一致する 準体助詞 su…

原口裕(1978.11)連体形準体法の実態:近世後期資料の場合

原口裕(1978.11)「連体形準体法の実態:近世後期資料の場合」『春日和男教授退官記念語文論叢』桜楓社 要点 ノ準体の明確な定着は天保以降である 推移 明和期洒落本においては全体的に頻度は少ない ノ準体は受け型(内の関係、モノ型)に多く、 φ準体はト…

信太知子(1970.9)断定の助動詞の活用語承接について:連体形準体法の消滅を背景として

信太知子(1970.9)「断定の助動詞の活用語承接について:連体形準体法の消滅を背景として」『国語学』82 要点 連体形+ナリは可能なのに、連体形+ダはないのは、連体形準体法の消滅によるもの また、その消滅過程には、ナリ・ニテアリが文相当句を承接する…

信太知子(2006.3)衰退期の連体形準体法と準体助詞「の」:句構造の観点から

信太知子(2006.3)「衰退期の連体形準体法と準体助詞「の」:句構造の観点から」『神女大国文』 要点 信太(1976)の再検討 信太(1976) 準体ノの起源を「我がの」の格助詞+ノに求め、 「我がの」の発生が中古、活用語+ノの発生が中世末~近世初頭という…

野間純平(2013.3)高知県四万十市西土佐方言における準体助詞

野間純平(2013.3)「高知県四万十市西土佐方言における準体助詞」『阪大社会言語学研究ノート』11 要点 四万十市西土佐方言の準体助詞について、以下の点を示す ガが基本的にノとパラレルで用いられること、 モノ準体に属格助詞を介する(ノガ)場合がある…

坂井美日(2012.3)現代熊本市方言の準体助詞:「ツ」と「ト」の違いについて

坂井美日(2012.3)「現代熊本市方言の準体助詞:「ツ」と「ト」の違いについて」『阪大社会言語学研究ノート』10 ir.library.osaka-u.ac.jp 要点 熊本市方言の準体助詞ツ・トの使い分けについて、 これが形態音韻面・意味面での相補分布ではなく、統語的な…

坂井美日(2015.7)上方語における準体の歴史的変化

坂井美日(2015.7)「上方語における準体の歴史的変化」『日本語の研究』11(3) 要点 ゼロ準体からノ準体の移行について、 ノの付き初めには形状・事柄のタイプに差はなく、ノ準体化は形状タイプが先に進行したことを示し、 ノの起源に「属格句ノ」の、連体形…

彦坂佳宣(2006.10)準体助詞の全国分布とその成立経緯

彦坂佳宣(2006.10)「準体助詞の全国分布とその成立経緯」『日本語の研究』2-4 要点 方言における準体助詞について、 分布と問題 準体助詞に関連する用法を以下のように分類(狭義の準体助詞はc, d) a 連体格 b 連体格的準体助詞:今のあるじも前のも c 代…

青木博史(2005.7)複文における名詞節の歴史

青木博史(2005.7)「複文における名詞節の歴史」『日本語の研究』1-3 要点 コトを表す補文の名詞節の歴史に、「準体型・コト型・ノ型」の三種を考え、 コト型がその性質を変化させていないことに基づき、 コト・ノによる準体型の補償はなく、むしろノの伸長…