ronbun yomu

言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

現代

三宅知宏(2015.3)日本語の「補助動詞」について

三宅知宏(2015.3)「日本語の「補助動詞」について」『鶴見日本文学』19 要点 補助動詞として呼ぶべきカテゴリーを明確にし、 補助動詞の分析に「文法化」と「構文」の観点が有効であることを示す 前提 V1テV2の後項を指して「補助動詞」とする いわゆる複…

藤田保幸(2017.3)複合辞であることを支える共時的条件:動詞句由来の複合辞を中心に

藤田保幸(2017.3)「複合辞であることを支える共時的条件:動詞句由来の複合辞を中心に」『龍谷大学グローバル教育推進センター研究年報』26 要点 通時的視点ではない、「複合辞が複合辞であることの根拠付け」を考える 前提 複合辞が複合辞であることは通…

野田尚史(2015.4)文の階層構造から見た現代日本語の接続表現

野田尚史(2015.4)「文の階層構造から見た現代日本語の接続表現」『国語と国文学』92-4 要点 接続表現の、文の階層構造の中の位置付けを考える 前提 南モデルを発展させた野田に基づく、述語語幹~対人的ムードまでの階層 述語語幹・ヴォイス・アスペクト・…

天野みどり(2017.11)受益構文の意味拡張:《恩恵》から《行為要求》ヘ

天野みどり(2017.11)「受益構文の意味拡張:《恩恵》から《行為要求》ヘ」天野みどり・早瀬尚子『構文の意味と拡がり』くろしお出版 要点 恩恵のテモラウがテモラワナイトの形で行為要求を表すことについて、構文の観点から考察 # テモラワナイト - 言い…

張又華(2013.3)「テシマウ」構文における話者の感情・評価的意味について

張又華(2013.3)「「テシマウ」構文における話者の感情・評価的意味について」児玉一宏・小山哲春編『言語の創発と身体性』ひつじ書房 要点 テシマウのアスペクト的意味と話者の感情・評価的意味を、連続性のある構文として捉える この意味は、話者の意志性…

ハイコ・ナロク(1998.10)日本語動詞の活用体系

ハイコ・ナロク(1998.10)「日本語動詞の活用体系」『日本語科学』4 要点 特定の理論に拠らず、検証可能な枠組みで動詞の活用・派生体系を分析 活用・派生の中心的要素が活用語尾と、活用語~であることを示す 活用語尾と派生接尾辞 まず、活用語尾と派生接尾…

衣畑智秀(2012.1)日本語における話者指向性

衣畑智秀(2012.1)「日本語における話者指向性」『福岡大学日本語日本文学』21 要点 金田一(1953)の「主観的表現」が示す「話者のその時の」という性質を「話者志向性」と呼び、 話者志向性が種々の文法カテゴリに見られることを示す hjl.hatenablog.com …

江口匠(2016.3)〈逆接〉を表す「て」をめぐって

江口匠(2016.3)「〈逆接〉を表す「て」をめぐって」『人文』14 要点 逆接の「て」が現れる構文条件について 自分でいって、わすれるやつがあるか。 あんな事故にあって助かったのですか。本当に運がいい人だ。 これまでの指摘と枠組み 前提的に予測される…

大堀壽夫(2012.11)文の階層性と接続構造の理論

大堀壽夫(2012.11)「文の階層性と接続構造の理論」『国語と国文学』89-11 要点 南モデルに、RRG(Role and Reference Grammar)の理論を導入し、南モデルの現代的意義を検討する RRG RRG*1は、文の構造を3つの層からなるものと考える 内核(nucleus)、中…

尾上圭介(2012.3)不変化助動詞とは何か:叙法論と主観表現要素論の分岐点

尾上圭介(2012.3)「不変化助動詞とは何か:叙法論と主観表現要素論の分岐点」『国語と国文学』89-3 hjl.hatenablog.com 要点 現代のモダリティ論は非現実形式としてのモダリティ(A説)と話者の主観表現としてのモダリティ(B説)に分かれ、金田一の不変化…

金田一春彦(1953)不変化助動詞の本質:主観的表現と客観的表現の別について

このあたりを読む 金田一春彦(1953)「不変化助動詞の本質:主観的表現と客観的表現の別について」『国語国文』22-2, 3 金田一春彦(1953)「不変化助動詞の本質、再論:時枝博士・水谷氏両家に答えて」『国語国文』22-9 尾上圭介(2012.3)「不変化助動詞…

島田泰子(2018.3)副詞〈なんなら〉の新用法:なんなら論文一本書けるくらい違う

島田泰子(2018.3)「副詞〈なんなら〉の新用法:なんなら論文一本書けるくらい違う」『二松學舍大学論集』61 要点 タイトルまんま、現代における「なんなら」の新用法の発達に関して 従来の「なんなら」 日国に立項されるのは、以下の2種 (1)相手の意志・希…

永澤済(2016.9)判決における漢語動詞の特殊用法:「XとYとを離婚する」をめぐって

永澤済(2016.9)「判決における漢語動詞の特殊用法:「XとYとを離婚する」をめぐって」『言語文化論集(名古屋大学大学院国際言語文化研究科)』38-1 doi.org 要点 民事判決に見られる「離婚する」の特殊な格支配について 原告と被告とを離婚する XとYとを…

竹内史郎・岡﨑友子(2018.1)日本語接続詞の捉え方:ソレデ,ソシテ,ソレガ,ソレヲ,ソコデについて

竹内史郎・岡﨑友子(2018.1)「日本語接続詞の捉え方:ソレデ,ソシテ,ソレガ,ソレヲ,ソコデについて」『国立国語研究所論集』14 doi.org 要点 指示詞を含む接続詞に関して、照応関係のあり方と統語環境からの整理を試みるもの 田村(2005)*1 モーダル…

大塚望(2004.7)「たい」と「たがる」:主語の人称を中心として

大塚望(2004.7)「「たい」と「たがる」:主語の人称を中心として」『新潟大学国語国文学会誌』46 要点 「たい」は一人称、「たがる」は三人称という主語の人称制限があるとされるが、実態は異なるので記述し直す これまでの「人称制限」の原則と反例 「た…

志波彩子(2018.3)受身と可能の交渉

志波彩子(2018.3)「受身と可能の交渉」『名古屋大学人文学研究論集』1 要点 「ラレル」文がどのようにして「受身」と「可能」という離れた意味を表すか、その原理について 併せて、志波彩子(2018.4)「ラル構文によるヴォイス体系:非情の受身の類型が限…

三宅知宏(2017.11)日本語の発見構文

三宅知宏(2017.11)「日本語の発見構文」天野みどり・早瀬尚子編『構文の意味と拡がり』くろしお出版 要点 「外に出てみると、雨が降っていた」のようなものを「発見構文」として扱う。課題として、 型の記述 テミルが生起しやすいこととその特性 英語との…

砂川有里子(2000.10)空間から時間へのメタファー:日本語の動詞と名詞の文法化

砂川有里子(2000.10)「空間から時間へのメタファー:日本語の動詞と名詞の文法化」青木三郎・竹沢幸一編『空間表現と文法』くろしお出版 要点 空間概念を表す自立語が格助詞・接続助詞・助動詞へと変化する機能語化の類型について(論文では文法化、ここで…

石田尊・田川拓海(2018.3)他動詞可能文における例外的格パターンの出現:主格保持の原則をめぐって

石田尊・田川拓海(2018.3)「他動詞可能文における例外的格パターンの出現:主格保持の原則をめぐって」『日本語文法』18-1 要点 存在しない(容認度が低い)とされてきた「ニ-ヲ」の他動詞可能文が、特定の環境では現れ得ることを主張するもの 他動詞可能…

藤田保幸(2016.2)引用形式の複合辞への転成について

藤田保幸(2016.2)「引用形式の複合辞への転成について」『国文学論叢』61 要点 「と」+「言う」「思う」「する」に由来する複合辞が種々あることについて、共時的観点から、「引用形式から複合辞がさまざま生まれるのには、それなりの契機というべきいき…