ronbun yomu

言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

終助詞

小出祥子(2020.3)奈良時代語におけるラムカ構文とケムカモ構文

小出祥子(2020.3)「奈良時代語におけるラムカ構文とケムカモ構文」『名古屋短期大学研究紀要』58 要点 ム系助辞と終助詞カ・カモの接続関係について考える ラム・ケムの出現環境をまとめると次の通りで、 p.5 ラムカはあるのにケムカは少なく、ケムカモは…

上林葵(2019.8)関西方言における終助詞的断定辞「ジャ」の機能:マイナス感情・評価の提示

上林葵(2019.8)「関西方言における終助詞的断定辞「ジャ」の機能:マイナス感情・評価の提示」『日本語の研究』15(2) 要点 関西方言のジャはヤと類似するが、ジャは限定的なモーダルな働きを強く帯びる働きを持つ (本の所有者が誰かを単に尋ねられて)そ…

富岡宏太(2017.10)中古和文の助詞カシ

富岡宏太(2017.10)「中古和文の助詞カシ」『日本語の研究』13(4) 要点 よく分からないカシの意味を、中古和文を対象に考える カシに対人性のある例とない例とがあるのはなぜか。 確認や弱めなどをカシが担うのはなぜか。 カシの意味は、事態めあてのモダリ…

大江元貴(2017.12)間投助詞の位置づけの再検討:終助詞との比較を通して

大江元貴(2017.12)「間投助詞の位置づけの再検討:終助詞との比較を通して」 pragmatics.gr.jp 要点 間投助詞と終助詞の違いと、間投助詞の位置付けについて考えたい 近年は終助詞と間投助詞の区別を認めない立場が優勢である 共通性は認識されているが、…

佐藤宣男(1974.10)平安、院政・鎌倉期における終助詞「なむ」:散文中の例を中心にして

佐藤宣男(1974.10)「平安、院政・鎌倉期における終助詞「なむ」:散文中の例を中心にして」『藤女子大学国文学雑誌』16 要点 終助詞ナムは中世以降に古語化したとされるが、実態について触れられたことはない まず平安期において見ると、 和歌の例が多いが…

任利(2005.8)文末の「かしら」と非文末の「かしら」:性差表示の出現位置をめぐる一考察

任利(2005.8)「文末の「かしら」と非文末の「かしら」:性差表示の出現位置をめぐる一考察」『筑波日本語研究』10 要点 現代語の文末カシラは使用者が女性であることを積極的にマークするが、 不定指示の機能を持つ非文末のカシラ(何かしら~)は、性差表…

Seongha Rhee, Hyun Jung Koo, 2020. From quotation to surprise: The case in Korean

Seongha Rhee, Hyun Jung Koo, 2020. From quotation to surprise: The case in Korean. Journal of Pragmatics 155, 83-100. 要点 韓国語の mirativity を表す終助詞、 -tani などの発達について考えたい。 ku-ka cwuk-ess-tani! he-NOM die-PST-MIR ‘That …

Seongha, Rhee, 2012.5. Context-induced reinterpretation and (inter)subjectification: the case of grammaticalization of sentence-final particles

Seongha, Rhee. 2012.5. Context-induced reinterpretation and (inter)subjectification: the case of grammaticalization of sentence-final particles. Language Sciences 34(3), 284-300. (コンテクストが誘発する再解釈と(間)主観化:終助詞の文法化…

小林美沙子(2010.3) 新方言として終助詞化した「し」の命令・禁止・勧誘表現について

小林美沙子(2010.3)「新方言として終助詞化した「し」の命令・禁止・勧誘表現について」『首都圏方言の研究』1-1 要点 接続助詞シに由来する終助詞シに、「しろし」などの命令・禁止・勧誘が見られる 調査 命令・依頼・禁止にはつかないとされているが、つ…

中野伸彦(1990.12)江戸語における「命令文+終助詞『ね』」

中野伸彦(1990.12)「江戸語における「命令文+終助詞『ね』」」『山口大学教育学部研究論叢 第1部 人文科学・社会科学』40 要点 江戸語と現代語の命令文+ネは意味合いが異なる 「聞き手の自覚をもとにして、その自覚を確認する」という要求の仕方をする、…

中野伸彦(1999.10)江戸語における終助詞の相互承接

中野伸彦(1999.10)「江戸語における終助詞の相互承接」『近代語研究』10 前提 文の構成に関わらない終助詞の相互承接を、五十音順に見ていき、整理する 終助詞の相互承接 い いの のみで、文語調・疑問文に偏る え えぞよ 1例のみ、平叙文 さ さな、平叙文…

青野順也(2007.10)終助詞「な・ね」と希望表現

青野順也(2007.10)「終助詞「な・ね」と希望表現」『国学院雑誌』108(10) 要点 上代の終助詞ナ・ネはナが先行し、意味分化はネの成立によるもの 前提 上代の希望表現ナ・ナム・ニ・ネのうち、ナ・ネについて考える 以下の定義付けに基づけば、ナは願望・勧…

堀尾香代子(2018.3)『万葉集』にみる非活用語に下接する文末助詞「や」

堀尾香代子(2018.3)「『万葉集』にみる非活用語に下接する文末助詞「や」」『北九州市立大学文学部紀要』88 id.nii.ac.jp 要点 一見特異に見える、活用語につかない文末の「や」の性質 多くは終止形・已然形に下接して疑問・反語を表すが、それとは性質が…