ronbun yomu

言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

自動詞・他動詞

山口翔平(2022.3)『万葉集』における動詞「さす」の意味用法:上代における自他両用動詞の一例

山口翔平(2022.3)「『万葉集』における動詞「さす」の意味用法:上代における自他両用動詞の一例」『国文学』106. 要点 上代において既に自他両用である多義的な動詞サス(光がさす/針をさす)を事例として、古代語の自他両用動詞について考える。 用法整…

駒走昭二(2017.10)ゴンザ資料におけるカス型動詞

駒走昭二(2017.10)「ゴンザ資料におけるカス型動詞」『日本語の研究』13(4) 要点 ゴンザ資料のカス型動詞を取り上げ、18C薩隅での特徴を整理する 形態的特徴、 akasuが多い(中世の中央語と同様) 半数がラカス 音節数は4音節が多く(中央語は5音節)、2音…

橋本行洋(2001.2)カス型動詞の一展開:ワラカスの成立からワラケルの派生へ

橋本行洋(2001.2)「カス型動詞の一展開:ワラカスの成立からワラケルの派生へ」『語文』75-76 要点 標記の問題について、成立・派生と現代語の語彙体系の位置付けを考える ワラカスについて、 江戸末期江戸語~明治初期東京語から見られ始め、近年ではむし…

青木博史(1997.7)カス型動詞の消長

青木博史(1997.7)「カス型動詞の消長」『国語国文』67(7) 要点 以下の問題点を踏まえて、近世以降のカス型動詞について考える 現代語には見られないものがあること(くゆらかす、ふくらかす、つからかす) 意味用法を大きく変えた例があること(胸を冷やか…

青木博史(1997.3)カス型動詞の派生

青木博史(1997.3)「カス型動詞の派生」『国語学』188 要点 カス型動詞(散らかす、冷やかす)について明らかになっていること カスが肥大化した接尾語であること スの動詞(タブル・タブラス・タブラカス)を持つ代入型が直接型に先行すること 「よくない…

鈴木英夫(1985.5)「ヲ+自動詞」の消長について

鈴木英夫(1985.5)「「ヲ+自動詞」の消長について」『国語と国文学』62(5) 前提 「腹を立つ」の疑問から出発して、 ヲ+自動詞の消長について考える ヲ+自動詞 Ⅰ「太郎が川を渡る」類には消長はない 自動詞の移動動詞がヲ格を取る場合、自動詞主語が他動…

岡村弘樹(2019.8)上代における自他対応と上二段活用

岡村弘樹(2019.8)「上代における自他対応と上二段活用」『国語国文』88(8) 要点 他動詞派生をしてもよさそうな上二段動詞が自他対応に関わらないのは、四段の連用形と形態が類似していたから 前提 上二段活用は自動詞のうち、特に非対格動詞に偏る 上二段…

宮腰賢(2007.11)自動詞「思ひ出づ」について

宮腰賢(2007.11)「自動詞「思ひ出づ」について」『国学院雑誌』108(11) 要点 中古の「思ひ出づ」には自動詞の用法もある 前提 他動詞としての「思ひ出づ」 君をあはれと思ひ出でける(竹取) 次の歌は「あの人を」「そのことを」などを補って解釈されるが…

釘貫亨(1990.6)上代語動詞における自他対応形式の史的展開

釘貫亨(1990.6)「上代語動詞における自他対応形式の史的展開」佐藤喜代治編『国語論究2 文字・音韻の研究』明治書院 要点 上代語動詞の自他対応に3つのパターンを見出し、より合理的な方向へと進んだものと推定する 上代語の自他対応 上代語における自他対…

堀畑正臣(2018.2)動詞の自他対応による方言の成立とその分布:「かたる」と「のさる」をめぐって

堀畑正臣(2018.2)「動詞の自他対応による方言の成立とその分布:「かたる」と「のさる」をめぐって」西岡宣明ほか編『ことばを編む』開拓社 要点 動詞の自他対立における、方言独自の発達事例について 「かたる」と「かてる」 「加わる」の意で用いられる…

佐々木淳志(2010.3)自動詞・他動詞と二段活用の一段化

佐々木淳志(2010.3)「自動詞・他動詞と二段活用の一段化」『愛知教育大学大学院国語研究』18 要点 近世の一段化が、特に自他対応のある語において、形態上の同定を容易にするために進行していたことを示す 動詞の自他と一段化 自動詞他動詞の両方が二段活…

坂梨隆三(2015.2)春色梅児誉美の「腹を立つについて」

坂梨隆三(2015.2)「春色梅児誉美の「腹を立つについて」」『近代語研究』18 概観 近世後期に「腹を立つ」という言い方がある おまはんは腹をたゝしつたのかへ 腹が立つ/腹を立てる とありたいところ、以下の見方がある 自他両用の「立つ」を想定し、この…

永澤済(2007.10)漢語動詞の自他体系の近代から現代への変化

永澤済(2007.10)「漢語動詞の自他体系の近代から現代への変化」『日本語の研究』3-4 doi.org 要点 近代から現代にかけての、漢語動詞の自他について、自他両用から自動詞専用・他動詞専用 近代の漢語動詞の自他 (現代ではそうではないが、)近代において…

永澤済(2016.9)判決における漢語動詞の特殊用法:「XとYとを離婚する」をめぐって

永澤済(2016.9)「判決における漢語動詞の特殊用法:「XとYとを離婚する」をめぐって」『言語文化論集(名古屋大学大学院国際言語文化研究科)』38-1 doi.org 要点 民事判決に見られる「離婚する」の特殊な格支配について 原告と被告とを離婚する XとYとを…