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言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

補助動詞

山本佐和子(2012.6)中世室町期における「ねまる」の意味

山本佐和子(2012.6)「中世室町期における「ねまる」の意味」『國學院雑誌』113(6). 要点 抄物に以下のような~テネマルがあることに注目して、ネマルの語史を記述する。 盆瓶ヲ洗テネマル婦女ノアルマテソ。(四河入海) 本動詞のネマルは名語記に初例が…

井上直美(2020.4)「彼は笑ってみせた。」は何を見せたか:書きことばの「てみせた。」の意味機能に注目して

井上直美(2020.4)「「彼は笑ってみせた。」は何を見せたか:書きことばの「てみせた。」の意味機能に注目して」『日本語の研究』16(1) 要点 テミセタを補助動詞として認め、文末の「てみせた。」の主語の人称、共起動詞、何を見せたかに注目し、その多義性…

小島聡子(2002.3)古典語のテ型の一用例:「~てやる」

小島聡子(2002.3)「古典語のテ型の一用例:「~てやる」」『明海日本語』7 要点 中古において、補助動詞と解すべきテヤルの例はない 前提 テ形補助動詞のテヤルについて、現代語訳と古文の意味との関係に注意しつつ、中古の例を検討する ヤルの意味を確認…

荻野千砂子(2007.7)授受動詞の視点の成立

荻野千砂子(2007.7)「授受動詞の視点の成立」『日本語の研究』3-3 要点 授受動詞の視点制約について、テ形補助動詞に生じた制約が本動詞に影響した可能性があることを示す 前提 敬語形・テ形補助を持つクレル・ヤル・モラウの3語について考える あなたが私…

梁井久江(2009.6)「役割語」としての〜チマウの成立

梁井久江(2009.6)「「役割語」としての〜チマウの成立」『都大論究』46 問題 チマウは後発のチャウの使用拡大により現代ではほぼ用いられないが、シナリオではなお用いられる 困ろうが何しようが、とにかく、クーはお前を母親と思い込んじまってんだ、いや…

山口響史(2016.7)テイタダクの成立と展開

山口響史(2016.7)「テイタダクの成立と展開」『国語国文』85-7 要点 授受補助動詞テイタダクの成立と、テモラウの敬語形としての地位を確立するまでの過程について、 当初話し手起点だったイタダクが受け手起点の機能を獲得することでテモラウの敬語形とな…

梁井久江(2009.1)テシマウ相当形式の意味機能拡張

梁井久江(2009.1)「テシマウ相当形式の意味機能拡張」『日本語の研究』5-1 要点 テシマウのアスペクト意味内での拡張と、評価的意味への意味拡張について 問題 テシマウが持つアスペクト的意味(広義の完了) 完遂:おやつを食べてしまってからにしなさい …

森山卓郎(2017.11)意志性の諸相と「ておく」「てみる」

森山卓郎(2017.11)「意志性の諸相と「ておく」「てみる」」森山卓郎・三宅知宏編『語彙論的統語論の新展開』くろしお出版 要点 「意志性」の語彙的意味について、事態のあり方に応じた整理を提示し、 無意志的事態とテオク・テミルとの結びつきについて、…

菊田千春(2011.9)複合動詞テミルの非意志的用法の成立:語用論的強化の観点から

菊田千春(2011.9)「複合動詞テミルの非意志的用法の成立:語用論的強化の観点から」『日本語文法』11-2 要点 テミルの非意志的用法の成立に、語用論的推意の前景化による試行の意味の希薄化を想定 問題 テミルは主節において試行の意で用いられ、意志的行…

三宅知宏(2015.11)日本語の「補助動詞」と「文法化」・「構文」

三宅知宏(2015.11)「日本語の「補助動詞」と「文法化」・「構文」」秋元実治・青木博史・前田満『日英語の文法化と構文化』ひつじ書房 要点 三宅(2015)の続き 特に構文スキーマの観点による、補助動詞の分析の有効性を示す 前提 前稿では補助動詞の分析…

三宅知宏(2015.3)日本語の「補助動詞」について

三宅知宏(2015.3)「日本語の「補助動詞」について」『鶴見日本文学』19 要点 補助動詞として呼ぶべきカテゴリーを明確にし、 補助動詞の分析に「文法化」と「構文」の観点が有効であることを示す 前提 V1テV2の後項を指して「補助動詞」とする いわゆる複…

青木博史(2018.10)「ござる」の丁寧語化をめぐって

青木博史(2018.10)「「ござる」の丁寧語化をめぐって」青木博史・小柳智一・吉田永弘編『日本語文法史研究 4』ひつじ書房 要点 ござるの丁寧語化について、以下の点を示す 尊敬から謙譲を表す段階を経て、特に補助動詞「てござる」類において丁寧語化した…

張又華(2013.3)「テシマウ」構文における話者の感情・評価的意味について

張又華(2013.3)「「テシマウ」構文における話者の感情・評価的意味について」児玉一宏・小山哲春編『言語の創発と身体性』ひつじ書房 要点 テシマウのアスペクト的意味と話者の感情・評価的意味を、連続性のある構文として捉える この意味は、話者の意志性…

山口堯二(1998.10)対比的な複文の前句における「あり」の朧化用法

山口堯二(1998.10)「対比的な複文の前句における「あり」の朧化用法」『京都語文』3 (山口堯二(2000.9)『構文史論考』和泉書院 所収) 要点 複文において、実質的な意味が希薄化したアリが用いられる 雁なきて菊の花さく秋はあれど春の海辺にすみよしの…

山口響史(2015.10)補助動詞テモラウの機能拡張

山口響史(2015.10)「補助動詞テモラウの機能拡張」『日本語の研究』11-4 doi.org 要点 テモラウのヴォイス体系内での拡張に関して 対立的な2種のテモラウ 恩恵的(受益型):プレゼントを買ってもらう 迷惑的:そんなこと言ってもらっちゃ困る(→受身的) …

三宅知宏(2017.11)日本語の発見構文

三宅知宏(2017.11)「日本語の発見構文」天野みどり・早瀬尚子編『構文の意味と拡がり』くろしお出版 要点 「外に出てみると、雨が降っていた」のようなものを「発見構文」として扱う。課題として、 型の記述 テミルが生起しやすいこととその特性 英語との…