ronbun yomu

言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

訓点資料

野沢勝夫(1993.4)妙一記念館本仮名書き法華経 小考:その成立時代を中心として

野沢勝夫(1993.4)「妙一記念館本仮名書き法華経 小考:その成立時代を中心として」『妙一記念館本仮名書き法華経 研究編』霊友会. 要点 以下の8点の比較により、妙一本が足利本に先んずるものであることを主張する。足利本は1330写の識語を持つが、妙一本…

大坪併治(2003.9)石山寺本『大智度論』天安点における文法上の諸問題

大坪併治(2003.9)「石山寺本『大智度論』天安点における文法上の諸問題」『訓点語と訓点資料』111. 要点 石山寺本『大智度論』天安点には、以下の文法上問題のある点がある。 動詞:サ変+キにおいて、セシ・セシカでなく、シシ・シシカとする場合がある。…

大坪併治(2008.9)石山寺本大智度論古点における「誰……者」の訓法について

大坪併治(2008.9)「石山寺本大智度論古点における「誰……者」の訓法について」『訓点語と訓点資料』121. 要点 石山寺本大智度論[858~]には、「誰…者」の構文が登場し、「たれか…するもの/ひと」と読む。 誰か当に治せむ者[もの]。 これが定着すること…

大坪併治(1982.5)原因・理由を表はす文末のバナリについて

大坪併治(1982.5)「原因・理由を表はす文末のバナリについて」『訓点語と訓点資料』67. 要点 以下の已然形バ+ナリが、上代にはなく、中古には和歌、和文(散文)、訓読文に見られる。この文体間の差について、比較考察を行う。 吹く風の色の千種に見えつ…

大坪併治(1969.6)提示語法について:訓点資料と今昔物語とを中心に

大坪併治(1969.6)「提示語法について:訓点資料と今昔物語とを中心に」『佐伯博士古稀記念国語学論集』表現社. 要点 提示語法(「文中のある語を無格のままで提示し、これを代名詞で受けて特定の格を与える形式」)は、訓点資料に幅広く認められ、 和漢混…

大坪併治(1981)提示語法

大坪併治(1981)「提示語法」『平安時代における訓点語の文法』風間書房. *1 要点 「文中のある語を無格のままで提示し、これを代名詞で受けて特定の格を与へる形式」を「提示語法」と呼ぶと、平安時代の訓点語にはそれを幅広く認めることができる 第一義、…

月本雅幸(1992.11)院政期の訓点資料における助動詞

月本雅幸(1992.11)「院政期の訓点資料における助動詞」『国語と国文学』69(11) 要点 平安初期訓点資料に比して院政期訓点資料が活用されることは少ないが、価値が低いとは言い切れない 当時の口語を含む部分がありそうな一方で、移点などによる年代的重層…

榎木久薫(1996.9)平安初期訓点資料における使役の格表示:ヲシテの使用に着目して

榎木久薫(1996.9)「平安初期訓点資料における使役の格表示:ヲシテの使用に着目して」『訓点語と訓点資料』98 要点 平安初期訓点資料における使役の格標示は「~ヲ~シム」「~ニ~シム」「~ヲシテ~シム」の性格について これらは中期に「~ヲシテ~シム…