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言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

近代

斎藤文俊(2018.11)明治初期における聖書の翻訳と日本語意識:漢文訓読語法「欲ス」を例に

斎藤文俊(2018.11)「明治初期における聖書の翻訳と日本語意識:漢文訓読語法「欲ス」を例に」沖森卓也編『歴史言語学の射程』三省堂 要点 聖書翻訳において、漢訳聖書の「欲す」が他本でどのように現れるかを見ることで、その文体選択のあり方を見る 聖書…

宮内佐夜香(2007.10)江戸語・明治期東京語における接続助詞ケレド類の特徴と変化:ガと対比して

宮内佐夜香(2007.10)「江戸語・明治期東京語における接続助詞ケレド類の特徴と変化:ガと対比して」『日本語の研究』3-4 問題 逆接確定条件について、現代語はケレドが多いが、江戸語ではガが目立つ 江戸語にはケドが確認されないなどの時代的差異もある …

渡辺由貴(2007.3)「と思う」による文末表現の展開

渡辺由貴(2007.3)「「と思う」による文末表現の展開」『早稲田日本語研究』16 要点 タイトルそのまま、モダリティ形式史として 渡辺(2015)の前提 hjl.hatenablog.com 「と思う」 文末、終止形、非過去という条件で用いられる、助動詞的な「と思う」 明日…

新野直哉(2012.3)昭和10年代の国語学・国語教育・日本語教育専門誌に見られる言語規範意識 :副詞”とても”・「ら抜き言葉」などについて

新野直哉(2012.3)「昭和10年代の国語学・国語教育・日本語教育専門誌に見られる言語規範意識:副詞”とても”・「ら抜き言葉」などについて」『言語文化研究(静岡県立大学短期大学)』11 要点 タイトルまんま、専門誌の論文における言語意識の記述について …

田中章夫(1965)近代語成立過程に見られるいわゆる分析的傾向について

田中章夫(1965)「近代語成立過程に見られるいわゆる分析的傾向について」『近代語研究』1 要点 広義近代語への変化の過程として、整理・分散・単純による「分析的傾向」の存することを指摘する 分析的傾向 古代語の推量に関係する助動詞を見ると、 花咲か…

宮内佐夜香(2013.10)近世後期江戸語における逆接表現旧形式「ド」「ドモ」について

宮内佐夜香(2013.10)「近世後期江戸語における逆接表現旧形式「ド」「ドモ」について」『近代語研究』17 要点 近世~近代にかけて衰退したド・ドモが、衰退期にどのようにガ・ケレド・ケレドモと共存しているか 接続形式など、環境は限定的で、文語的位相…

青木博史(2010.6)近代語における「断り」表現:対人配慮の観点から

青木博史(2010.6)「近代語における「断り」表現:対人配慮の観点から」『語文研究』108・109 要点 広義の近代語(中世後期~昭和前期)を対象として、「断り」の歴史上の変化を見る 断り表現の要素に「詫び」「理由説明」「断りの述部」(尾崎モデル)を設…

川瀬卓(2018.5)前置き表現から見た行為指示における配慮の歴史 ほか

川瀬卓(2018.5)「前置き表現から見た行為指示における配慮の歴史」高田博行・小野寺典子・青木博史『歴史語用論の方法』ひつじ書房 要点 行為指示場面における、定型的前置き表現 すみませんが、この書類に署名をお願いします。(恐縮・謝罪) お菓子を作…

矢田勉(2014.7)近世・近代間における口頭語の表記体選択意識の変化

矢田勉(2014.7)「近世・近代間における口頭語の表記体選択意識の変化」『国語文字史の研究』14 要点 平仮名・片仮名併存の問題に関して、傾向とその基盤となる表記意識の解明を目標として、特に、近世・近代における表記体選択のあり方を、「口頭語性」(≠…

藏本真由(2018.3)前接要素・形態的特徴からみる「気がする」の意味変化

藏本真由(2018.3)「前接要素・形態的特徴からみる「気がする」の意味変化」『国語語彙史の研究』37 要点 現代にかけて、「気がする」に意味変化が起こっていることの指摘 ただ其当時に立ち戻りたい様な気もした(漱石・思ひ出す事など) この間より、ちょ…

田中章夫(1998.10)標準語法の性格

田中章夫(1998.10)「標準語法の性格」『日本語科学』4 要点 文法形式の標準語らしさ・方言らしさを以下の3タイプに類型化し、 累加型・段階型 単能型・多能型 微差消滅型・微差保有型 これらがどのような歴史的経緯の所産であるかについても述べる 対照さ…

永澤済(2007.10)漢語動詞の自他体系の近代から現代への変化

永澤済(2007.10)「漢語動詞の自他体系の近代から現代への変化」『日本語の研究』3-4 doi.org 要点 近代から現代にかけての、漢語動詞の自他について、自他両用から自動詞専用・他動詞専用 近代の漢語動詞の自他 (現代ではそうではないが、)近代において…

永澤済(2016.9)判決における漢語動詞の特殊用法:「XとYとを離婚する」をめぐって

永澤済(2016.9)「判決における漢語動詞の特殊用法:「XとYとを離婚する」をめぐって」『言語文化論集(名古屋大学大学院国際言語文化研究科)』38-1 doi.org 要点 民事判決に見られる「離婚する」の特殊な格支配について 原告と被告とを離婚する XとYとを…

志波彩子(2016.1)近代日本語の間接疑問構文とその周辺:従属カ節を持つ構文のネットワーク

志波彩子(2016.1)「近代日本語の間接疑問構文とその周辺:従属カ節を持つ構文のネットワーク」『国立国語研究所論集』10 間接疑問文の発達について、高宮(2003*1, 2004, 2005)を承けて、明治期の共時的なあり方がどうであるかを報告 2004, 2005について…

兪三善(2015.10)アーネスト・サトウ『会話篇』における言いさし表現について

兪三善(2015.10)「アーネスト・サトウ『会話篇』における言いさし表現について」『実践国文学』88 要点 サトウ『会話篇』に見られる言いさしについて ご ていねい に ありがとう ございます.さあ まず, まず, こちら へ どうか.わざと とそ を しとつ…

鳴海伸一(2017.11)程度副詞「けっこう」の成立と展開

鳴海伸一(2017.11)程度副詞「けっこう」の成立と展開」『和漢語文研究(京都府立大学)』15 要旨 「けっこう」の主に、程度副詞用法の成立について述べるもの けっこうな物を着たがるは婬欲の心なり(六物図抄・形容動詞) それでもけっかう勤りますのさ(…

柴﨑礼士郎(2017.12)談話構造の拡張と構文化について:近現代日本語の「事実」を中心に

柴﨑礼士郎(2017.12)「談話構造の拡張と構文化について:近現代日本語の「事実」を中心に」加藤重広・滝浦真人編『日本語語用論フォーラム 2』ひつじ書房、pp.107-133 主旨 漢語の文副詞化(論文では名詞の副詞化)に関して、特に「事実」が近代以降に文副…