ronbun yomu

言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

日本言語学会 第156回大会(2018/06/23)

日本言語学会第156回大会 (予稿集もここから)

期日:2018年6月23日(土)・24日(日)

会場:東京大学本郷キャンパス(文京区本郷)

聞いたものをいくつか

B-2 古典日本語における「ての」について

要点

  • 古典語の「ての」と現代語の「ての」
    • 青柳梅との花を折りかざし飲みての後は散りぬともよし(万821)
    • 家族を連れての外出は楽しい 。(ての+動作性)
    • 一生懸命努力しての結果であれば仕方がない。(ての+非動作性)
  • 古典語では
    • 動作性のある名詞は後接しない
    • 形容詞が前接する(若くての)
    • 様態「生きての仏の国」、時間の前後関係「身まかりての秋」の用法を持ち、後者が中心的な用法であった

思ったこと

  • 古典語の「の」は文レベルでもまるごと包摂しちゃう*1ので、「ての」が名詞句を構成しないとするならその根拠がもう少し欲しかった
    • [〜連体]の心 [〜て]の心 はどちらもいけるが、
    • [〜連体]を取りて *[〜て]を取りて か?
    • このあたりから「ての」の特殊性が見えないか

B-3 九州方言における主語標示の使い分けと動作主性   

  • 九州方言の(ここでは主文の)ガ・ノ交替に、いわゆる尊卑説よりも妥当な説明として、動作主性の高低というスケールを導入する
  • めちゃんこおもしろかった

A-4 「こんな紳士をつかまえて何をいうか!」―動詞「つかまえる」の文法化の観察―

要点

  • こんなかわいい子捕まえてなんてこと言うの の「つかまえて」が(に対して相当として)文法化していることを指摘し、
  • その構文的動機付けとして以下の3点を考える
    • 「つかまえる」との関連性
    • 「て」が逆接の「て」であること
    • 情報構造として、「~をつかまえて」を用いると、目的語が文の焦点的位置にきやすくなる

思ったこと

  • 対象格+評価性として、複合格助詞的に機能語化していると見るとき、逆接の「て」ではない
    • 例えば「に対して」が次の文脈で、順接・逆接が入れ替わると判断することはないと思う
      • 先生に対してこんにちはと言う
      • あんな偉い先生に対してバカと言う(なんて)
    • 逆接ではなくてただ不本意な気持ちがあるというだけで、それはつかまえての語彙的なとこから出てくる
      • 「捕まえる」対象は捕まえておかないとどっかに行ってしまう(泥棒とかネズミとか)ところからマイナスの意味が出るか?
  • 質疑に「関しましては言えるが捕まえましては言えない」という点ではむしろ文法化が進行しているとする意見があった(三宅先生)
    • 「捕まえる」が不本意であるという事情で「ます」付加が不可能か、もしくは一種の構文として固定化しているせいでそうなっているのであって、「複合格助詞化が」進行しているわけではない?*2
    • 「つかまえておいて」は言えるので範列的にはまだ自由度が残っている?と思ったが、
    • そもそも「ておいて」に同様の不満を表す用法があるのかな

*1:「〜せよの○○」

*2:私のようなレディーをお捕まえになってそんなことを仰るのかしら、と言えなくはない気もするが