ronbun yomu

言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

日高水穂(2005.7)方言における文法化:東北方言の文法化の地域差をめぐって

日高水穂(2005.7)「方言における文法化:東北方言の文法化の地域差をめぐって」『日本語の研究』1-3

要点

  • 事例:格助詞サ、格助詞コト・トコ、過去のテアッタ・タッタ
  • 記述のまとめ:日本海側では文法形式の機能を大幅に変質させる文法化が生じているのに対し、東北地方の太平洋側では本来の意味用法を維持する範囲での文法化が生じている(要旨)

  • 格助詞サは、分布として(2.1)

    • 「東の方サ行く」(移動の着点):最も広い
    • 「仕事サ行く」(移動の目的)、「俺サ貸せ」(授与の受け手):広い
    • 「見サ行く」(動詞接続):太平洋側
    • 「ここサ有る」(存在、移動を伴わない):日本海
  • 太平洋側では日本海側では「移動性」の制約あり、日本海側は制約を超えて拡張

    • 地域社会の標準語化が急速に進み、「サ」と「に」がスイッチされることで用法拡張が進行(2.2)
  • 格助詞コト・トコは、

    • 太郎が次郎{コト・トコ}殴った(有情物)
    • 太郎がボール{コト・トコ}蹴った(非情物)
      • 津軽から日本海側沿岸部では有→非に拡張、太平洋側では制限が維持→日高(2003, 2004)
      • 弘前・本荘・酒田では有情物・非情物の差なし、喜多方の若年層のみ非情物トコが低い

関連するもの

  • 日高水穂(2006) 「文法化」『シリーズ方言学2 方言の文法』岩波書店→ヤル・クレル、コト・トコ
  • 日高水穂(2007)「文法化理論から見る『方言文法全国地図』」『日本語学』26-11→とりたて否定形
  • 日高水穂(2011)「やりもらい表現の発達段階と地理的分布」『日本語学』30-11
  • 日高水穂(2013)「複合辞「という」の文法化の地域差」藤田保幸編『形式語研究論集』和泉書院

その他