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言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

岡﨑友子(2018.5)「頃」の用法と歴史的変化:現代語・中古語を中心に

岡﨑友子(2018.5)「「頃」の用法と歴史的変化:現代語・中古語を中心に」藤田保幸・山崎誠編『形式語研究の現在』和泉書院

要点

形式名詞・接続助詞的な「頃」の現代語・中古語でのあり方と歴史的変遷について - 東京へ出てきた頃、この鞄を買った

接続助詞的な「頃」

  • 現代語と中古語の「頃」の前接語は、
    • 現代語では名詞が多いが中古語では低い
    • 現代語では動詞前接が少ないが中古語では(比較的)多い
    • 指示詞の前接率は同程度だが、この頃・その頃についても見ていく
    • Nの頃についても見る

現代語の「頃」

  • 以下の分類が可能
    • Nの頃(形式名詞、大学入試の頃)
    • N頃
      • 属性/時期+頃の場合(形式名詞、3歳頃)
      • 時点+頃(接尾辞、10月頃・秋頃)
    • 修飾節+頃
      • 文の補充成分であるもの(形式名詞)
      • 従属節であるもの(接続助詞)
        • 補充成分:東京へ出てきた頃に亮介に会った → 亮介に会ったのは東京へ出てきた頃だ
        • 従属節:東京へ出てきた頃(*頃に)、ずっと就活で忙しくしていた

中古の「頃」

  • 接尾辞の例はない
  • 接続助詞として働く例はない
  • 実質的な名詞であったため、「この」が直示する例がある(このごろ)
  • Nの頃に時期を読み取れないものがある(紅葉頃)
  • 実質的な意味を持つ、複合語の「頃」の例がある(年頃)

中世以降の「頃」

  • 中世に単独で用いられる「頃」は慣用表現化し、衰退
  • 中世に近頃・今頃などが見出される
  • 近世に至っても接続助詞的な用例はない

まとめ

  • 中古の「頃」は実質的な名詞か形式名詞
  • 接続助詞・接尾辞の機能は後発的なもの