ronbun yomu

言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

尾谷昌則(2015.12)接続詞「なので」の成立について

尾谷昌則(2015.12)「接続詞「なので」の成立について」加藤重広編『日本語語用論フォーラム 1』ひつじ書房

要点

  • 文頭なのでの成立に関する問題
    • これまでの指摘や文体的・語用論的特徴をまとめ、
    • 接続詞化のプロセスに関しては「それなので」の「それ」の削除を想定する

接続詞化に関する指摘と文体的特徴

  • 読売新聞の2004-2005に「なので」の新用法の記事が3件あり
  • 一般書や、就活本にも指摘が見られる
  • 梅林(2010)*1は、「文体的制約からくる苦渋の選択」とする
    • それゆえ、したがっては堅い印象があり、ですから、なので、だから、くらいに使用語彙が限定されている
    • しかし、ですます、は避けるよう指導されており、さらに、だからは話し言葉であるという意識が働くとなのでしか残らない
  • 小学生の語彙発達を見ると、だから→すると→そこで→したがって、の順で使用語彙化する
    • 小4程度で「丁寧な言葉を使う」意識が芽生えるようで、ちょうど文頭なのでを使う時期とも合致する
  • 語用論的特徴として、丁寧さに関して、だから・ですからの中間に位置する

なのでの成立

  • 明治頃に遡る可能性はあるが、一般化したのは2000年頃と見てよい

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  • 接続詞化のプロセスに関して、他の事例を見ると、
    • 照応関係:花子が行くなら、僕も行く → それなら、僕も行く → なら、僕も行く
    • 再分析:太郎は若いが|よくやるよ。 → 太郎は若い|がよくやるよ。
  • 「なので」に関して、会議録を見ると、「それなので」が先行して使用数を伸ばし始め、その後に「それ」が脱落した「なので」の使用数が増える

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  • 以上より、「それなので」の「それ」の省略によって「なので」が接続詞化したものと考える(再分析とは考えない)
    • ただしこれはあくまでも定着のプロセスで、発生には再分析が関わる可能性もある

諸例

雑記

  • あと20分くらい講義の時間があるから補足のプリント配ろうと思ったらなぜか10部ほどしか刷っておらず、じゃあ他の補足のやつも、と思ったらそれもなく、あたふたしてたら学生がつまんね~帰ろ~ってぞろぞろ帰ってしまう、という夢を見た

*1:梅林博人 (2010)「接続詞 「なので」についての覚え書き」『相模国文』37

*2:14年前放映開始て…そら平成も終わるよね