吉田永弘(2015.11)「とも」から「ても」へ
吉田永弘(2015.11)「「とも」から「ても」へ」秋元実治・青木博史・前田満編『日英語の文法化と構文化』ひつじ書房
要点
- 「とも」から「ても」への交替過程とその要因について
- 「ても」は当初逆接仮定の形式ではなかった
- 中世後期に助詞「て」+助詞「も」から接続助詞「ても」に変化したものと見る
逆接仮定の「ても」の成立
- 「ても」は中古に既に見られるが、逆接仮定の形式ではなく、「とも」相当ではない
- 逆接専用形式のとも(仮定)、ども(確定)
- 現代語「ても」に置き換えられない例がある
- 昔を忘れざらむ人は、徒然を忍びても(我慢してでも)、幼き人を見捨てずものし給へ
- 「たとえ」「いかに」との呼応、反実仮想文で用いた例がない(全て「とも」にはある)
- 「たとえ」との照応は中世後期から
- 「たとひ」は主に漢文訓読資料で用いられるが、中世後期には文体的な偏りがなくなる
- 「とも」との照応が時代を通じて見られる
- 「ども」との照応も16C頃まである
- 「いかに」との照応も中世後期から
- 反実仮想文との例はよくわからない
- これらの事実をどう解釈するか?
- 古代語の「ても」が「たとひ」「いかに」を承けることができなかったのは、「ても」が逆接仮定節を構成していなかったから
- 助詞「て」+助詞「も」から接続助詞「ても」に変化したものと見る
「ても」の変化
- 「ても」は「とも」と後退しただけでなく、「ども」の一部の用法(一般条件)も持ち、順接の「已然形+ば」の変化とも並行的に捉えられる
- 「ても」の接続助詞化の外的な要因は「とも」「ども」の衰退に求められる
- 「とも」は
- なりとも・たりとも・ずともに偏る
- 「う+とも」が出現するが、これは「とも」が単独で仮定を表しにくくなっているから
- この衰退した領域を「ても」が担う
- 「ども」は逆接確定と一般条件を表すが、特に一般条件が衰退する
- 「ども」が「たとひ」と照応しなくなる時期と「ても」の出現が重なることから、一般条件を「ても」が担うようになったものと見る
- 「とも」は
- 確定条件と一般条件を同一形式で表せなくなる変化が、順接と逆接で並行する
- 「已然形+ば」 → 確定条件:ほどに・によって 一般条件は仮定条件に拡張
- 「仮定」と「一般・確定」から、「仮定・一般」と「確定」へ
- 内的な要因を考えるために、「て+も」の時期の要因を見る(用例は全て覚一本平家)
- ①ても+用言:手にだに取っても見給はず
- ②ても+名詞・副詞+用言:命生きても何かはせん
- ③並列:明けても暮れても、都の事のみ思ひゐたれば、
- この点、「ても」は条件節を構成したのではなく、後句との連接性の高い修飾節を構成したものが、条件節に読み替えられたものと考える
- ①に打消表現が多く、②には反語が多い
- この点で、「ても」自体には未実現・既実現を決めるものはない
- また、前件と後件で主体が変わる例もない
- 一般条件は前件と後件の結びつきを問題とするので、「ても」の接続助詞化は一般条件から成立したものと推測される
- 「已然形+ば」の拡張と同様、一般条件から仮定条件へ拡張したものか
雑記
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