小田勝(1990.8)「中古和文における接続句の構造」『國學院雑誌』91-8
要点
- 中古における日本語文構造の整理
- ツツ-テ-トモ-未バ-已バ-ド・ドモ の階層を提示
前提
- 例えば已然形バは、めば、らめば、けめばを接続しないが、ド・ドモは承けることができる
- 心得ず思しめされつらめども、心強く承らずなりにしこと
- 接続助詞はそれぞれ、結合できる句に制限がある
- つつ・て・とも・未然ば・已然ば・ど(も)について見ていく
- 句と句を繋ぐ、用言専用、格助詞との区別が可能、デ・シテなど他の接続助詞からの派生でないもの、という条件
整理
- まず全体の整理として、
- ツツは、(サ)ス、(ラ)ル以外に接続できない
- テは、(サ)ス、(ラ)ル、連体ナリ、ズ、ヌ、リ、ベシ、マジ、マホシに接続する
- トモは、(サ)ス、(ラ)ル、連体ナリ、ズ、ヌ、リ、ベシ、ツ、タリに接続する
- 未然バは、
- (サ)ス、(ラ)ル、連体ナリ、ヌ、リ、ツ、タリ、キ
- 「ずは」「くは」の形で、ベシ、マジ、マホシ、ズ
- 「ませば」「ましかば」の形でマシに接続するが、マセバは例がほとんどなく、マシカバは已然形バと考える
- 已然バは、ム、ケム、ラム、ジを除く全てに接続する
- (サ)ス、(ラ)ル、連体ナリ、ズ、ヌ、リ、ベシ、マジ、マホシ、ツ、タリ、キ、マシ、終止ナリ、ケリ、メリ
- ド(ドモ)は、ジ以外に接続する
- 「ましかど」は極端に少ない
- 以上の構造は階層性を有する
- ツツ-テ-トモ-未バ-已バ-ド・ドモ
- 「接続助詞テの承接可能な助動詞の領域はツツの承接可能な領域を全て含み」……
- 表のABCは北原保雄の分類によるが、接続句の階層は助動詞の性質とも対応している
- A 連体ナリに上接するもの(客観的)
- B 連体ナリに下接するもの(主観的)
- C 場合によるもの
- ツツ~未バまではA、已バ以下はB
違例処理
- 未然バのうち、「くは」は、連用形+係助詞語源であるが、共時的に未然形+接続助詞であることが支持される
- マシカバに関しては已然形と見ることで体系の整合性が保たれる
- マセバはマシの未然形+バとせず、マシとマセを別語とする説を採るほうが整合性がある
- ムトモは源氏に一例のみ「知らせ奉らむとも」の例があるが、河内本の「んことも」に従うべき箇所である
- 以上の処理の結果、まほしく+とものみが例外として残るが、これは意味の特殊性に起因するものか