村上謙(2010)「対照表形式の近世後期上方語彙資料」『埼玉大学国語教育論叢』13
要点
- 近世後期における上方・江戸の対照形式の、これまで注目されてこなかった資料について
- 『浪花聞書』『新撰大阪詞大全』、『浮世風呂』の方言会話部分といったものが有名
上方出身者の随筆
- 上方出身者の随筆として、
- 『宝暦雑録』に、上方内の珍しい言い方である「さんしよう」や「せんぼう」といった特殊社会語彙が収録される
- 女をげんさい 男をひで
- 浪花見聞雑話にも「せんぼう」や流行語についての記述あり、
- 貴様をどうじく さかなをたつほ
- 当時はやり詞 一 声じや 安永 一 すか 天明
- ほか、『摂陽落穂集』(1808)に符帳の記述あり
- 『宝暦雑録』に、上方内の珍しい言い方である「さんしよう」や「せんぼう」といった特殊社会語彙が収録される
- 一般社会語彙のものとしては、
上方洒落本
- 『粋行弁』(1783序)の附録「浪華粋言」「京都粋言」「東武通言」「中華言」
- 浪華粋言:せんぼうをいふを あがくといひ
- 京都粋言:きつい十一とは 土じやといふ事
- 東武通言:つうとは 粋の事
- 中華言:スウクワン 侍
- 影響を受けたものに『客野穴』(1840)
- 物いわすを ひつそり
非上方出身者による見聞記類
- 『見た京物語』(1766)
- 天気暑寒の事、気分の事あんばいといふ。
- 『羇旅漫録』(1802)
- すべて女はなといふことをそへていふ。
- わしがけふな、かみあらふてな、とんとおちんさかい、いま〳〵しうてな、
- 『燕石雑志』(1809頃)
- 江戸のからといふべきを、京より以西なる人はなべてさかひといふ
- その他、『浪花洛陽振』(1828頃か)などがある
雑記
- もう11月かと思った頃には11月が終わっている