宮内佐夜香(2007.10)「江戸語・明治期東京語における接続助詞ケレド類の特徴と変化:ガと対比して」『日本語の研究』3-4
問題
- 逆接確定条件について、現代語はケレドが多いが、江戸語ではガが目立つ
- 江戸語にはケドが確認されないなどの時代的差異もある
- 江戸後期~明治期のケレド類をガと対比しつつ、以下3点を考察
- i ガとケレド類の使用比率を通時的にみて、ケレド類の増加について確認する。
- ii ケレド類の形態上のバリエーションの実態と変化を確認する。
- iii ケレド類の機能をガと比較し、その特徴と変化を確認する。
- 江戸・明治の文学作品を対象とする
分析
- i 使用比率の通時的変化
- 資料ごとにばらつきはあるが、全体的にケレド類が増加
- 男女別に見ると、男性はガが優勢
- 上接部の文体差を見ると、ガは丁寧体+ガが多い
- ガについて見ると、非丁寧体の接続数が通時的にも減少する
- ii ケレド類の形態上のバリエーション
- 江戸語・江戸生まれ作者のケドの使用は四迷の後期作品まで現れない
- それ以前のケドは全て例外処理が可能
- 四迷のケドの例に、初出ではケレド、単行本でケドとなる例があり、「四迷が写実的な東京の話しことば描写を目指して、意識的に〈ケド〉を使用したものかとも思われる。」
- ケレド類は江戸後期から明治期にかけて、、使用率を伸ばすとともに、ケドの出現という形態面での変化も認められる
- 江戸語・江戸生まれ作者のケドの使用は四迷の後期作品まで現れない
- iii ガ・ケレドの比較
- 逆接的意味の膿むによって「逆接」「注釈・断り」「提示」の3用法に分類する
- 逆接:前件と後件が矛盾するもの
- わたしは上るが、こなたはもつと這入るが能(よい)よ
- 注釈・断り:前件内容が後件の発話の注釈や断りになるもの。前件と後件が対立する点で逆接に近い
- おまへがたの前でいふは悪いが、全体友が悪いからさ
- 提示:逆接的意味がないもの(いわゆる単純接続)
- ハイ、私にも合ひ薬でございますが、てりふり町の足袋やで売る、血の道の薬が能うございます
- 逆接:前件と後件が矛盾するもの
- ガは3つの機能が一定の割合で現れるが、ケレドは提示用法がなく、明治に微増する
- 明治期に至ってケレド類の機能に変化の兆候が現れたもの
- (ケレド←ケレドモはドモを含むので、逆接専用形式だったのではないか)
- 逆接的意味の膿むによって「逆接」「注釈・断り」「提示」の3用法に分類する
雑記
- こたつを出してからというもの、油断すると潜り込んで寝てしまっていて研究時間をゴリゴリ削られている