小田勝(2010.2)「疑問詞の結び」『岐阜聖徳学園大学紀要 教育学部編』49
要点
- 疑問詞疑問文における結びの形について、上代~中古の実態を調査し、疑問詞~終止形/連体形の両型が存することを説明する
問題
- 疑問詞疑問文の文末に、連体形・終止形の両方が存する
- 疑問詞~連体形:いづこより入り来つる(紫)/いづちおはしまさむずる(今昔)
- 疑問詞~終止形:年の内出で来る節会の中に、いづれ、いと切に労あり。定め申されよや(うつほ)/起きてゆく空も知られぬ明けぐれにいづくの露のかかる袖なり(源氏)
- これまで、
実例
- 上代は例が少ないが、すべて終止形で結ぶ
- 中古韻文では、
- など~連体形が現れる
- など(<なにと)だが、「なぞ」との類推でなど~連体形が成立したものか
- これにより、係の副詞としての疑問詞が登場する
- 一方で、疑問詞~終止形は上代を引き継ぐ形で継続される
- など~連体形が現れる
- 中古散文では、単独の疑問詞は疑問~連体形の型が基本であると捉えられる
まとめ
- 上代歌謡・『万葉集』では、疑問の係助詞を伴わない疑問詞疑問文は、すべて終止形で結び、例外がない。
- 平安時代になって、[など―連体形]の形式が現れ、単独で文末に連体形を要求する「係の副詞」としての疑問詞が国語に登場した。
- 中古和歌の[疑問詞―終止形]の形式は、上代語を継承したものと考えられる。
- 中古散文にあっては、疑問の係助詞を伴わない疑問詞疑問文は連体形で結ぶのを基本とする。
雑記
- 年末らしさが特にない(年賀状も書いてない)