白井純(2001.9)「助詞ヨリ・カラの主格標示用法について:キリシタン文献を中心として」『国語学』52-3
要点
- ヨリ・カラの主格標示用法について、
- キリシタン宗教文献類に多く用いられることを指摘し、
- その要因として、上位待遇表現にル・ラルを用いず給フを用いたために受身との混乱が回避されていたことを想定
ヨリ・カラの分類と分布
- 前提として、
- 例えば、石垣(1955)は天草本のカラに「あたかも「から」が主語をしめすごとき用法」を指摘
- ロドリゲス大文典に、ヨリをノ・ガと並ぶ主格として位置づける記述がある
- 従来はヨリ・カラを斜格として、起点、場所、基準、手段などに分類するが、ここでは表示内容が動作主かどうかに着目する
- すなわち、
- 動作主かどうか
- 動作主の場合、それが奪格か主格か
- 例
- 標示内容が非動作主(AがBヨリ・カラVする):この御一体のデウスよりあらゆる程の物、現じ、
- 標示内容が動作主で、
- 奪格(BがAヨリ・カラVされる):智者は、人よりそれと知られ、
- 主格(Aヨリ・カラVする):キリズマとハ、バウチズモを授かりたる人にビスポより授け玉ふ大事のサカラメン卜也
- 分布を見ると、
- 動作主標示は助詞ヨリが先行する
- 特にキリシタン宗教文献類に多い
主格標示のヨリ
- 軍記において場所的性格を帯びやすいという特徴があり、
- 主格標示の見られない狂言にも準ずる例がある
- 方々より縁の事を色々申せども(虎明本)
- これは、許(もと)・方・内などが脱落したことによるもの
- 男の方より…となむ云ひたりける(十訓抄)
- 若衆の内より下知をなし(虎明本)
- このように主格標示用法の発生環境は整っているが、キリシタン文献以外では積極的に使用されない。それはなぜか
積極的使用の理由
- 軍記では格が判別できないヨリが多い
- 上位待遇表現にル・ラルを用いるために受身との区別が曖昧になっている
- この観点から、動作主ヨリが使われた場合の動作主を三階層に分けると、
雑記
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