土岐留美江(1992.6)「江戸時代における助動詞「う」:現代語への変遷」『都大論究』29、(2010)『意志表現を中心とした日本語モダリティの通時的研究』ひつじ書房 を参照
要点
前提
- ウの用法を以下の4つに分類
- 終止法:ウ。/…ウ」ト
- 準終止法:助詞・助動詞下接で、文末に現れるもの
- 準連体法:助詞・助動詞下接で、準終止法に含まれないもの
- 連体法:形式名詞にかかる場合も含め、体言が下接するもの
- 全体的な推移として、終止法はやや現象、連体法は衰退、助詞・助動詞下接は増加
分析
- 終止法は、意志から推量、さらに曖昧表現(確認要求)へ、という流れ
- 確認要求:どうだ。此知恵はおそろしからう。(浮世床)
- 準終止法は時代が下るにつれて多様化
- ウカ、ウゾが中心的だったが、近世後期には中心から外れ、終助詞類が約半数を占めるようになる
- ウカ、ウゾは疑問・反語に偏り、本来の意志・推量の意を明確に打ち出すもの。このようにはっきりとした文脈で用いられることが少なくなる、と考える
- 準連体法は時代が下るに従って、量的には増えるが質的には一本化
- 全体的な増加は、接続助詞ガの下接例が増える(特に仮定の意)ため
- 一方で衰退したニ、モ、格助詞ガ、ハは、意志や確信のある予定などの積極的な用例であるという点で共通する
- 雑談いたゐて参らふに、(虎明本)
- 主を売らうも知れぬ(近松)
- 連体法は可能性・適当・当然などの意を持つものが残るだけで、話者の判断が強く感じられる用法は減る
- ウホドニ
- ウコト、ウタメ、ウモノナラなど
- 全体として、
- 意志から推量へ、そして聞き手への配慮へという大きな流れがある
- 連体法・準連体法において意志や推量の意が強い用法が消え、主体性の薄いものへと拡大し、可能性の意で用いられる
- これも積極的ウから消極的ウの流れに位置付けられる変化
雑記
- よし兄りさ姉の引退報道にショックを受けています