日高水穂(2013.10)「複合辞「という」の文法化の地域差」藤田保幸編『形式語研究論集』和泉書院
要点
- 「という」を事例として「文法化の地域差」を考える
前提
- 共通語において、トイウ/ッテ/ッチュウ・ッツウ
- 引用・伝聞に用いられるが、ッチュウ・ッツウは単独で伝聞になりづらい
- 一方、各地方言においてはトイウ縮約形が単独で伝聞形式になるほか、単独の文末詞として機能する場合もある
分布
伝聞形式と地域差の要因
- ここで、伝聞形式(GAJ250-252 いたそうだ)の分布を整理する
- 認識系:ソー、ゲ、フー、ラシー
- 引用系
- 助詞+動詞:チュー、チョー、チャ、テ
- 助詞単独:ト
- ゼロ助詞:ユー
- 認識系は東北南部から九州にかけて分布、引用系はその外側に分布し、周圏分布をなすことから、引用系は認識系より古いものと予想される
- チュー(チョー・チャ含む)の分布を見たとき、A 東北~中部の日本海側、B 岐阜、C 和歌山、D 近畿~四国の瀬戸内海側に分布が薄いが、これはなぜか
- A 文末詞のチャ、ゼァ、ズなどがあり、トイウの文法化が抑制されているわけではなく、むしろ促進する力が強い
- B 「言う」がヤ行音化(ユー)していないのが要因
- C 伝聞表現に単独トが用いられることが、トユーの維持(チューの抑制)に関わっている可能性あり
- D ゼロ助詞のユーが優勢なので、ここから縮約は生じない
- ただし、D以外のゼロ助詞の地域ではチューが併用されるので、ただちにゼロ助詞→チューの抑制とは認められない
- 高知沿岸部では、引用でゼロ助詞、伝聞でチューが現れる
- (引用がゼロ助詞の地域は伝聞に認識系を用いることが多いために機能レベルでの差異を見ることができない)
- 引用標識がゼロ化する地域でも、縮約で現れる引用標識の使用率が高ければ縮約形チュー類が発生し、伝聞形式への機能拡張が生じる
- 逆に言えば、Dは引用標識のゼロ化率が高いために縮約形の発生が抑制され、さらに、縮約形によって担われる伝聞形式の発達も抑制されたと考えられる
雑記
- 引越しめんどくさ~、岩波講座日本語とか揃3000円で買えるし輸送費の方がかかりそう
- ちょっと無理が生じてきたのでまたしばらくお休みします