信太知子(2007.3)「古代語終止形の機能:終止連体同形化と関連させて」『 神女大国文』18
要点
終止形連体形の合流について、連用終止同形の活用語が、その異形態化を目指したものであると考える
問題
- 終止形連用形が同形の語において、それがどちらであるかは校訂者に委ねられる
- やぎのやすのりというひとあり。このひと、くににかならずしもいひつかふものにあらざなり(土左)
- つかはれんとて、つきてくるわらはあり、それがうたふふなうた、(土左)
- 終止形連体形の合流には、「連用終止異形化」「終止形の確立」という意味合いもあったのではないか?
文終止のあり方
- 以上の観点から見たとき、活用語は以下のように整理される
- 終止連体同形:四段・一段・じ・まじ・らし
- 終止連体異形
- 連用終止同形:ラ変・ず
- 連用終止異形:二段・カ変・サ変・那辺・形容詞・キ
- 所属語数では多い四段型よりも、ラ変型の方が多い
- また、連用形中止・終止形終止の区別のつきにくい例が各文献に1割程度あり、不都合な存在であったと考えられる
- 連用形と終止形の区別がなくなったことでこれは回避され、しかも、連用形中止もほぼ「て」の付加があるために、連用終止同形は、現代語において連用形・終止形の双方から否定されていることになる
- 活用形の機能の点から見ても、終止形の文終止の「切る」機能はそれほど積極的なものではなく、終止形は連体形というよりむしろ連用形に近い(終止形による中止など)
ラ変と連体形終止
- 「連用形相当の形状言が語基として存在し、そこから終止形が派生する」と考えたとき、ラ変は成立当初からアリであったと考えられる
- アリの終止形の形態について、古来アルだったものが状態性らしさによってアリとなったとする説は、アル→アリ→アル、という経路をたどる点において受け入れ難い
- アリにアリ・アルの二形態を認める説もあるが、これも、終止法がアリとなる理由の説明が必要
- 連体形終止形の合流の過程を見ると、やはり早い例は連用終止同形の語に偏る
- 連用終止同形語においては連用形・終止形の異形態化、
- 連用終止異形語においては形態の示差性の増大として位置付けられる
雑記
- 我々花粉症患者は北島三郎を決して許さない