野間純平(2013.3)「高知県四万十市西土佐方言における準体助詞」『阪大社会言語学研究ノート』11
要点
- 四万十市西土佐方言の準体助詞について、以下の点を示す
- ガが基本的にノとパラレルで用いられること、
- モノ準体に属格助詞を介する(ノガ)場合があること、
- コト準体の一部とノニ用法にφ準体が用いられること
- ノニ用法にコピュラを介するガジャニがあること
前提
- 基本的な準体をモノ準体・コト準体に分け、さらに、ノダやノデ・ノニまで含めて考える
準体用法
- 「のもの」相当にノガ・ガの2種類があるが、ガは属格助詞としては使えないので、これは以下のように分析すべき
- 名詞+属格助詞+準体助詞:この鍵は車ノガぞ。
- 名詞+準体助詞:この鍵は車ガぞ。
- 名詞以外に後接する場合、ガを用いる
- 昨日買った{ガ/ノ/*ン}が冷蔵庫にある。
- ソノガ・コノガのような「指示形容詞+準体助詞」の形がある(ex.新潟市古津「コノガン」)
- コト準体にはガの場合とφの場合がある
- あの人は暑い{ガ/ノ/*ン}が苦手よ。
- 車は買い物に行く{φ/ガ/ノ/*ン}に便利よ。
- 「ニが後接すればφ」というわけではなく、「準体節が必須補語ではない場合(副詞節である場合)にφが可能」と考えたい
- 孫が急に結婚した{φ/ガ/ノ/ン}に驚いた
ノダ・接続助詞
- 形態統語的特徴は基本的にノダと同じ
- 言い切り:病院に行ってきたガヨ。
- 言い切り以外:来とーて来たガジャナイ。
- 疑問文:どこに行くガ?
- 接続助詞は、ノニの場合に異なる
- ノデ:洗剤がなくなったガデ、買いに行ってくる。(それほど自然ではない)
- ノニの場合、ガ以外にφ・ノ・ガジャが用いられ、特にコピュラの入るガジャが注目される
- あの人はあんなに食べるニ、痩せちょる。
- 合格できると思っていたガニ、いかざった。
- あんなに家が近かったガジャニ、いつも遅刻しちょった。(*ノダニ)
- せっかく木を植えたノニ、枯れてしもた。
- ガジャニは「名詞+ジャ+ニ」が「名詞+ジャニ」と再分析され、用言述語の場合に「用言+ガ+ジャニ」となったものか
- もう出発の時間ジャニ、まだ来ん。
雑記
- ガキの使いの街ぶら企画、お願いだからやめていただきたい