安田尚道(2003.4)「石塚龍麿と橋本進吉:上代特殊仮名遣の研究史を再検討する」『国語学』54(2)
要点
前提
「再発見」かどうか
- まず、従来説に関して、
- 龍麿と別個に発見したわけではない
- 写本を見たことがある旨の記録あり
- 橋本は「ヌに二類がある」(本来はノ)、「古事記にチの二類がある」という、奥山路の誤りを踏襲している
- 音の区別によると考えたのも、橋本が最初ではない
- モに二類があることを有坂・池上が発見したように説かれるが、宣長や龍麿も指摘している
- 単に橋本が言及しなかっただけである
- 池上・有坂の意義は、その書き分けが音韻の区別以外ではありえないことを証明したことにある
- 橋本は「ヌに二類」を後に「ノに二類」に改める
龍麿はどう考えていたか
- 奥山路は総論の後に万葉仮名の一覧表があり、一見甲乙の配列に明確な原理がないように見えるが、実際は一定の配列を持つ
- イ段:乙→甲
- エ段:甲→乙
- オ段:甲→乙
- 奥山路にも古事記伝にも韻鏡などの韻書の名は見えないが、龍麿には中国漢字音の知識があり、それに基づいて配列したのではないか?
- ただし、橋本は活用体系を意識して甲乙を配列したが、龍麿はおそらくそうではなかった
雑記
- 他のところでは見せない人間味がある