ronbun yomu

言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

黒木邦彦(2018.3)否定過去動詞接尾辞-(a)naNdaなどが内包する-(a)naN-の起源

黒木邦彦(2018.3)「否定過去動詞接尾辞-(a)naNdaなどが内包する-(a)naN-の起源」『Theoretical and applied linguistics at Kobe Shoin : トークス』21

要点

  • 西日本のナンダ -(a)naNda の起源を、東日本の否定動詞接尾辞ナフ{-(a)nap-}に求める

構成

  • まず、-daはテ形接尾辞として見る
    • 延慶本の否定過去のナムシの例がナム-シと分析できること、
    • naN-da, -dasi, - dar-eba, - de, -du, -dari のように、極性で対立する動詞接尾辞が存在することによる
  • -(a)naN側について、ザッタ -(a)zaQ-ta(<ずありたり)説は採れない
    • nとzが音韻的に統一されることはまず無い
    • ar-(i)tar- からナンダのNdは出力され得ない
  • ヌアッタ説も採れない
    • 「しないのがあった」とは取れるが、否定過去ではない
  • -(a)naN- の基底形には nan(cf. 死んで), nam(cf.読んで), nab(読んで)のいずれかが想定されるが、nan の場合、(否定の連続がこれを実現する可能性があるが、)否定辞を重ねる動機がないので棄却される
  • nam, nab について、類似する形式には東日本方言の nap が挙げられる
    • ap-anap-aba(万3426)
    • これは、nam, nan の確例がないこと、東日本的方言の西での借用を想定しなければいけない点で問題があるが、
    • 口音化と静音化による派生関係は想定できるので、「それほど悪くもなかろう」
    • また、ナツタ・ナムシすら -(a)nap-(i)tar-, -(a)nap-(i)si- から得られる点に利点がある

雑記