福嶋健伸(2011.3)「中世末期日本語の~ウ・~ウズ(ル)と動詞基本形」『国語国文』80(3)
前提
- ウ・ウズ(ル)が連体節内に生起することについて、
- この学者を殺さうことは本意ない / 不慮の恥にあわうずる事わ家のため、
- 山口(1991)は「ムードという主体の作用面だけではなく、対象のありようも表していた(作用面と対象面が強く融合していた)ことの結果である」とする
- この見解を認めた上で、中世末期のウ・ウズ(ル)と基本形の分布、その分布の背景を考える
- 上例、現代では「殺すこと」「あうこと」となるところだが、「基本形が使用されていないこと」の背景を考える必要がある
仮説
- 中古の動詞基本形が未来を表しにくいことに基づきつつ、以下2つの仮説を立てる
- 1 中世末の動詞基本形は未来以後を表しにくかった
- 2 その領域にはウ・ウズ(ル)が分布していた
- その背景に何があったかを含めて検証したい
- 原因・理由節と目的節が出来事の先後関係の把握に有効であるので、その2つを用いる
- 1 が正しければ、原因・理由節には未来の例が少なく、目的節の基本形も制限されているはず
- 2 が正しければ、原因・理由節の未来の例、目的節の節述語はウ・ウズ(ル)が高いはず
調査
原因・理由節
- 予想通り、動詞基本形による従属節事態が未来を表す例は少ない
- 一番舞ほどに鼓打ちを呼べ
- ~スルほどに、命令 が多く、固定的な言い回しか
- すなわち、次のような未来以外の例が多い
- 敵に馬の腹を射られてしきりにはぬるによって、[有国が]弓杖をついてをりたって、
- 一番舞ほどに鼓打ちを呼べ
- ウ・ウズ(ル)の例は未来に傾く
- ざぜんをいたさうほどに、七日七夜の隙をくれさしめ
目的節
- 目的節もやはり、動詞基本形の例が少なく、
- ウ・ウズ(ル)の例が多い
考察
- 以上の分布の背景に、 現代のテイルの領域を基本形が表していたこと(福嶋2004)があり、
- 現代の 基本形/テイル → 未来(以後)/現在(同時) の領域を
- 中世末では 未来(以後)/現在(同時) ウ・ウズ(ル)/動詞基本形(と発達前のテイル) が担っていたと考える*1
- 連体節内にウ・ウズ(ル)が頻用されるのも「動詞基本形を使用する場面でウ・ウズ(ル)が出現」することと並行する*2
雑記
- 午後まるまる会議とかあると、異常な疲れが襲ってくる(何もしてないのになぜなのか)