ronbun yomu

言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

清水登(1988.12)抄物における「ゾナレバ」の用法について

清水登(1988.12)「抄物における「ゾナレバ」の用法について」『長野県短期大学紀要』43

要点

  • 抄物に特徴的なゾナレバは連語として見なすべきではなく、疑問文ト云ヘバと可換

前提

  • 鈴木博はゾナレバを「接的接続詞」として扱い、「…か?そのわけは…」「…かというと…」のどちらの訳が妥当かを決定できないとする

ゾナレバ

  • 「疑問詞…ゾナレバ」の定型があり、連語として認めてもよいように思うが、
  • ただし、写本によって異同があるので、ゾとの因果関係は認められないとも考えられる
    • ナセニ…賞翫セラルヽソナレハ(十八行本中華若木詩抄)
    • ナセニ…賞翫セラルヽナレハ(尊経閣本中華若木詩抄)
  • 両足院本山谷抄にもゾを欠くナゼニ…ナレバや、ナゼニナレバ、間を欠くナゼニゾナレバがあるので、ゾナレバを連語として扱うことはできない
  • ナレドモにも同様の指摘があるので、これはゾナレバ全体の話というより、ナリの文法的機能によるものと考える
  • ゾは疑問詞とともに疑問文を構成する要素であるので、やはりゾナレバの接続詞的用法はナレバによるものと考える*1
  • 訳としては「かというと」が妥当か

ナレバとイヘバ

  • 疑問詞…(ゾ)ナレバと並行して、疑問詞…ト云ヘバが同一の意味用法を担当している*2
    • ナンタルモノソト云ヘハ / ナンタル事ソナレハ(漢書抄)
  • ナレバは平叙文を引用句とする用法を持つので、それが疑問文にも広がったものであろう
    • ありさまにこそ見ゆなれば、(徒然)

雑記

  • 論文読んでて、たまに逆に凹むことがある

*1:ここの根拠が徒然で、なぜ…?

*2:この箇所、そういう理由で、「ゾナレバのナリは伝聞・推定のナリである可能性が高い」とあるが…