ronbun yomu

言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

村上昭子(1981.3)接尾辞ラシイの成立

村上昭子(1981.3)「接尾辞ラシイの成立」『国語学』124

要点

  • ラシイの成立には、名詞+情態言ラ+接尾辞シイが想定される

諸説

  • 以下3説があるが、前2説は採れない(下地となった可能性は否定できないが)
    • 推量の助動詞ラシ由来説
      • 時代に断絶があり、抄物にもラシは見られない
    • 異分析説
      • アタラシイ・メズラシイ・ホコラシイくらいしか素材がなく、考えにくい
    • 名詞+ラ+シイ説
      • これに沿って検討していく

ラシイの成立

  • 史記抄・玉塵抄で異なり8語、25例と少ない
    • ツベラシイを除けば語基は名詞である(アイソラシイ、ハカラシイ、ドクラシイ、バケラシイ、ヒトラシイなど)
  • 日葡辞書も名詞+ラシイ、もしくは語根+ラシイで、おおむね名詞と言える
  • 名詞+接尾辞で形容詞を作るのは他に、シイ・ガマシイクラウシイなどがあり、シイはラシイと関係を持ちそうである
  • シイには2つの型があり、
    • 名詞反復+シイ:カドカドシイ
    • 名詞+シイ:オトナシイ
  • 抄物にも名詞反復シイが多く、その語基はラシイと共通するところが多い
    • ハカラシイ・ハカバカシイ バケラシイ・バケバケシイ ツベツベシイ・ツベラシイ
    • 反復シイ = 非反復ラシイ という対応関係があり、意味用法にも際立った違いがない
  • 反復形によるオノマトペは抄物に多く、~リト・~ラト型のものもそれに次いで多い。そのうち、反復形と~ラトが対応するものがある
    • ウルウルト・ウルラト ヌクヌク・ヌクラト スキスキ・スキラト
  • 以上2点より、次の関係性が導かれる
    • p.24
  • すなわち、非反復ラは反復形に相当し、非反復ラシイも、非反復+ラ+シイであると推定できる
    • ラは反復形と同様、情態言を形成する働きを持つラである
  • 名詞シイは反復形を取りにくい3音節以上の名詞からの派生に偏り、ラシイは「名詞のもつ属性をあらわす面をより明確化するために」、中世以降にそこに加わったものではないか

雑記

  • Kittens game 面白すぎる……