福田嘉一郎(1991.4)「ロドリゲス日本大文典の不完全過去について」『詞林』9
要点
- 大文典の「直説法・不完全過去」に現在形が含まれるが、これは連体法である
前提
- ロドリゲスは直説法において、ルもタも「不完全過去」を表すものとし、これはアルバレスラテン文典に基づくものであるが、
- キリシタン的規範によるキリシタン資料(平家・エソポ)では、現在形が過去の事態を表す事態は歴史的現在の場合を除いて存在しない
- これをどのように考えるか
大文典の不完全過去
- 終止形によって「生き生きとした表現効果」(安田章)をもたらす、いわゆる歴史的現在があるが、ロドリゲスの不完全過去はこれには該当しないはずである
- 物語の前景にあたる完全過去を現在形で表す例もあるが、大文典の完全過去には現在形はない
- 歴史的現在は文典類で捉えられることはない(なぜなら文体論上の事象であるから)
- ロドリゲスの直説法は、終止法ではなく、「話し手が叙述内容を現実とする叙法」であるので、連体法の一部も含まれる
- 関係節の記述からも、連体用法述語一般について、その叙述内容が現実であるときは直説法に含めることが分かる
- これに基づき、現在形の連体節が過去の事態を示す例を見ると、主節述語が示す事態の時と同時の事態を示す例などがある
- 都より罷り下る時、路次で殊の外辛労しまらした。
- 現代語ではテイルも同様の位置付けにあることがある(ここを歩いている時、君のことを思い出した)が、中世当時はテイルが発達していなかった
- 動詞現在形の連体形は、未完了過去・不完全過去に置き換えられるものと考えられ、対訳例も存する
雑記
- いいイスが欲しい