李淑姫(2006.8)虎明本狂言集における「ウと思う」の用法:推量・意志の助動詞「ウ」との比較
李淑姫(2006.8)「虎明本狂言集における「ウと思う」の用法:推量・意志の助動詞「ウ」との比較」『日本學報』68
要点
- 虎明本のウと思う は意味的にはウよりも狭く、機能的にはウを補う
前提
- 虎明本のウと思うはウ同様、意志推量を表すが、意味機能に異なりはないか
ウ と ウと思う
- 意味の面から3点
- ウ系には勧誘の意があるが、ウと思うには勧誘の意がない
- いたひてみうと存る / いざさらば吟じてみう
- ウの場合は独話の例があるが、ウと思うは(名乗りでの観客も含めて)聞き手を想定して発話される
- 「ウと思うがどうか」という反問はあるが、「ウがどうか」はない
- cf. 私が{*行こう/行こうと思う}が、君はどう思う
- ウ系には勧誘の意があるが、ウと思うには勧誘の意がない
- 機能的にはウを補う*1
- 連用中止:参らふとぞんじて、
- 条件句の構成:せいばひせふと思へども、
- 時制の付与:ゆかうと思ふた
条件句とウ・ウと思う
- 巨海代抄に以下の例がある
- 早ヤ老僧コソ今マ時節至テ見ヱタホドニ本国ヱ帰ヱ郎ズト思ウガ
- 以下の例と同様、ウと思う類まで含めて後件と見るべき(~から帰ろうと思う、という意志を表明している)
- 此比花ざかりじやと申程に、はなみにまいらふとぞんずる
- さりながらあまり心もなひ事じやほどに、かたかげへまいり、人のみぬ花をみうと存る
- 小林(1973)の指摘によれば、
- ホドニ~ウはあるがニヨッテ~ウはない
- ウホドニはあるがウニヨッテはない
- ウと思うの場合、ニヨッテの場合も制約がない
- なるまひと思ふによって
- 酒をぬすんでのむに依て、此ことくにめされた物であらふと思ふ
雑記
- がんばるぞ6
*1:こう見てるとやっぱり不変化化することで生まれる制約って大きいし、それを補償する方法って他にもあったdろうなと思う