近藤泰弘(1998.2)「平安時代の「をば」の構文的特徴について:『源氏物語』の用例を中心に」『東京大学国語研究室創設百周年祈念国語研究論集』汲古書院
要点
- 中古のヲバ(<ヲ+ハ)について考える
- ヲバとヲの共通性
- ヲバとハの共通性
- ヲバ特有の機能
- 1点目について、
- 他動詞ヲバの例があり、対格標示の機能を持つ
- 一見対格ではないと見られる例もあるが、本質的問題ではない
- 2点目について、
- 主題・対照のどちらの意味も持つとは思われるが、意味的な判断だけでは難しい
- 「さるものにて」に注目すると、ヲバはハと同様主題性を持つと考えられるし、
- {をば・は}さるものにて がある一方で、「を、さるものにて」はない
- 「を…ものにて」は他動性の構文であるが、「さる」が主題化を要求するものと考える(cf.それ{は/*を}それとして)
- 未然形バ中にも現れない(*雨は降ったら傘をさす)のも主題性の現れであろう
- 3点目について、
- ヲバをヲ・ハと比べたときの差異は小さいが、
- 述語と遠い場合にヲバによって格関係を明示する例や、
- 他の係助詞と共起しないことが指摘できる
雑記
- 「書類書いたりうろうろしたりしてたらいつの間にか夕方」のパターン、やめてほしい