小西いずみ(2011.7)「出雲方言における「一段動詞のラ行五段化」に関する覚書」『論叢 国語教育学』復刊2
要点
- 出雲方言におけるラ行五段化(見る:未然形ミラン、命令形ミレ)を記述すると、
- 否定・命令・使役・意志形と、とりたて否定形ミリャーシェン・ミラシェン(<連用形+ワ+セン)とで、地理的分布が異なる
- すなわち、別の成立過程・動機を想定する必要がある
- 否定・命令・使役・意志形は出雲北西部にさかんで、東部・南部には少ない
- すなわち、北西部で先行し、それが東部・南部に伝播
- 否定よりも命令・意志形で先に起こったと考えられる
- とりたて否定形のラ行五段化は出雲東南部でも起こり、鳥取・岡山と連続する
- スルはラ行ではなくサ行五段化している
- 否定・命令・使役・意志形と、とりたて否定形ミリャーシェン・ミラシェン(<連用形+ワ+セン)とで、地理的分布が異なる
- 命令形が先行するのは、終止形との同音衝突回避による
- 出雲方言は ri, ru 拍で r が脱落しやすい(mii < miru)
- とりたて否定形のラ行五段化(ミリャーシェン・ミラセン)は、仮定形ミャーととりたて否定形ミャーシェンとの対応からの類推による
- mja(a) : mja(a)-seN = mirja(a) : mirja(a)-seN = mira(直音形) : mira-seN
- 発生と伝播の過程について、
- 各地のレベルでは周圏的とする小林の指摘と整合するが、
- 出雲方言では、松江ではなく第二の都市の出雲で先行するというということが問題となる*1
雑記
- 2月、終わりそう