山口堯二(1980.3)「「て」「つつ」「ながら」考」『国語国文』49(3)
前提
- 古代語のテ・ツツ・ナガラを、その前句・後句の関係性から考える
テ
- テの基本的な意味は並列性
- 「二つ(以上)の事態がただ空間的または時間的に並列されているという関係」で、継起性と共存性(袖のみ濡れてあふよしもなし)に分かれる
- 条件関係の場合、順接・逆接両方あるが、それはテそのものによって明示されるわけではない
- 順接確定の場合、機縁性・因由性の関係があり、
- これをみて、…おもほゆる/かなしくて、寝ずなりにけり
- 逆接確定の場合、因果論的な対立関係と事態の様相的な対立関係がある
- いだきおろされて、泣きなどはし給はず/父はなほ人にて、母なむ藤原なりける
- 仮定条件的な場合も、順逆ともにある
- 順接確定の場合、機縁性・因由性の関係があり、
- 類似形式として、
- ヲは目的論的性格が強く、前句を根拠に後句が主体的志向を担うという関係性があるが、その意味はテにも文脈依存的に認められ、
- ニの場面性の関係もまた認められる
- テには、前句が後句の手段となる例、修飾関係を示す例もあり、さて・かくて、などへの転成もある
- なお、用言連用形と比べれば「句と句の相関をより確認的に表示する機能」は強く、
- 月落ち、鳥啼いて / ??月落ちて、鳥啼き
- テという意味的表示の消極的な形式が、まとまりを示す(接続関係立体化)手段にもなっていた
- [[[~て~]~ば][~述部]]
ツツ・ナガラ
- ツツは状態の継続を他の事態と相関する形で表す接続形式で、同時性が最も基本的な意味関係
- 機縁性、因由性の認められる例もあり、
- 対立性の関係も、(同時性と両立するかたちで)認められる
- ヲ・ニ的意味を持つ場合もある
- ナガラは本来的には体言につくが、連用形承接の例もあるので、接続の役割も認めてよく、空間的な共存性の関係を示すと考えられる
- 同時性の意味も持つが、あくまでも動詞連用形ナガラの文脈依存によるもの
- 中古に入って、対立性が目立つようになる
まとめ(p.15)
「て」は並列性の関係を基本として両句の関係表示にきわめて消極的な形式である。しかし、文脈依存的にはかえって自由にきわめて多様な意味関係をあらわすことができた。
「つつ」は同時性の関係を基本とするが、両立しうる意味関係には「て」に次ぐ多様さが認められる。
古代語の「ながら」は共存性の関係を基本とした。「ながら」に目立つ対立性の関係はこれときわめて近く、同時性はまだ文脈依存的に共存性と両立しうる意味関係にすぎなかった、といえる。
雑記
- 会話もしてへんし外も出てへんし、頭おかしなりそうや