高瀬正一(1992.3)「『古今集遠鏡』における「已然形+ば」の訳出について」『国語国文学報(愛知教育大学)』50
要点
- 遠鏡において已バがどのように訳出されているかを明らかにしたい
- 近代語への変遷の過程で、已バは仮定条件を表すようになっており、
- 確定条件そのものも已バからサカイニ・ホドニ・ニヨッテなどに交替している
- 已バの訳出のあり方は以下の通りで、上方における已バの根強さが反映される
- 動詞+バ:そのまま訳す他、ヌ・リ・キ+バをタレバと訳す傾向がある
- 故ニ:俗語訳であるという制約上、あまり多くない
- ニヨッテ:ホドニで訳出する例はないことが、当代の上方語と相違する
- デ・ノデ:江戸語系の接続助詞であるが、デ4例、ノデ1例が見られる
- テ・シテ:意訳の結果出たものもあるが、訳語として不適切なものもある
- ナラ:仮定条件で訳す例あり、不審(宣長の誤りか)。ナラはむしろ、未バの訳出によく用いられる
- ニ・ノニ:ネバを逆接と取る(玉緒「ぬにの意のねば」)のを援用する訳出がある
- 全体として、
- サカイ・カラは存在しない
- 上方語より江戸語に近い傾向を示すものもある(ノデ)
- 原文を踏襲しつつ、当代の表現を取り入れている
- ときおり問題を含むものもある