ronbun yomu

言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

山内洋一郎(1970.9)「もが」「がな」と「が」

山内洋一郎(1970.9)「「もが」「がな」と「が」」『月刊文法』2-11

要点

  • もが類の変遷は もか>もが>もが+な>も+がな / を+がな>がな と理解される
    • 「女常世に母加母」(古事記歌謡97)の例より、古くは清音か
    • なお、俊成『古今問答』にも(濁でない)声点が付されている
  • もがの語源を「係助詞も」の言いさし+助詞か(希望をはっきりさせる)と考えて用例を検討すると、以下2種に大別される
    • 希望の対象の状態の希求(長くもがも)
      • これは自己に向けられる場合もある
    • 喚体句に「もが」がつき、存在を希望するもの(見む人もがも)
  • この後、中古には「もがな」で固定化、中世前期には「がな」として口語化し、
    • 馬をがな(古本説話集)/馬がな(宇治拾遺)
  • 文中に用いられるようにもなる
    • 何ヲガナ形見ニ姫ニ取セム(今昔)
  • 古語研究において、
    • 連歌論・てには書では「願ひがな」と呼ばれ、ここに「てしかな」類は含まれない
    • 北村季吟は「旅ねしてしが」と濁り、賀茂真淵も「しを清み、かを濁るなり」と濁らせ、このあたりから、「もがな」「てしがな」を一括するようになる

雑記

  • でかいものは偉い派なので、研究室に43インチのモニタを買いました