上野左絵(2012.3)『古今和歌集鄙言』里言における「ゲナ」と「サウナ」
上野左絵(2012.3)「『古今和歌集鄙言』里言における「ゲナ」と「サウナ」」『十文字国文』18
要点
- 「つねのことは」「時俗のくちふり」をうつすという方針の『鄙言』(1796刊)が、あゆひ抄や遠鏡よりも自然な口語を得示すのではないか、という予測のもと、伝聞の訳について見る
- 『鄙言』は遠鏡の注釈を剽窃してはいるが、独自性もあり、国語史料としての価値はある
- 口語訳に現れるゲナは全て伝聞の意で、和歌本文に対応する助動詞がない
- 歌語の説明などの、解釈の前提となる知識を述べる、意訳的な部分にのみ用いられる
- サウナはベシ・ベラナリ・ラムなどと対応し、ゲナが表すような伝聞は表さず、推定の意を持つ
- 鄙言がゲナとする箇所は、遠鏡ではゲナが用いられない(「ト云事ヂヤガ」など)
- あゆひ抄では、サウナは可倫やラシの里言、ゲナはメリに対応する
- この頃のゲナがすでに伝聞の意でしか用いられていなかったことが分かり、これは鄙言の例とも矛盾しない
- 伝聞のゲナは鄙言の和歌の部分では採用されなかったが、これは、「当時すでに伝聞に特化していた「げな」では、古典助動詞のあらわす意味範囲を示しきれないという判断があった」ためか
- 遠鏡との比較からも分かる通り、同じ口語訳でも文体には意識の差があることに注意すべきである
雑記
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