ronbun yomu

言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

軽部利恵(2018.3)上代仮名遣いの「違例」について

軽部利恵(2018.3)「上代仮名遣いの「違例」について」『叙説』45

要点

  • 上代特殊仮名遣の違例について考える
    • 木簡にはツ婆木(椿)や波支(萩)などがあり、
    • 「木簡は万葉集より書き分けがルーズ」とされてきたが、それは違例それ自体の意味づけにはならず、
    • 木簡の違例は万葉集の違例と異なるタイプであることも問題である
  • 万葉集において甲乙が併用される語をピックアップすると、「違例」と取れる例の割合は様々であり、
    • 少数類の割合が平均以下(認定可能)/平均以上(認定困難)/割合が等しい(認定不可能)
  • 違例の認定のあり方は統一的でなく、明確に決定出来得るものではない
    • 甲乙が拮抗する語をどう扱うか
    • たどき(手段)は万葉集編纂時に語源意識が不安定だったとされるが、どうか
    • 記の例を基準として、万葉集で優勢である例が違例とされるケースがあるが、
    • 難波宮跡木簡に刀斯(年、乙類)の例がある一方で、万葉集は全例が甲類であることを、どう考えるべきか
    • また、和歌の解釈上の問題として違例として処理することもある
  • 池上禎造は違例の発生理由に以下を挙げるが、循環論的な部分を含む
    • 外部的要因:伝来途上の手入/東国文献/時代差/個人差
    • 内部的要因:表意的意図/固有名詞・訓仮名/掛詞/枕詞
  • 「書き分け」が絶対的でない上代特殊仮名遣をめぐって、木簡の違例を通して再考する必要性がある

雑記

  • 4月来ないで~いや~