木部暢子(2006.5)「九州方言の可能形式「キル」について:外的条件可能を表す「キル」」『筑紫語学論叢Ⅱ』風間書房
要点
p.586
- キル・キランの使用条件は、
- 長崎市のキル:外的な援助があって動作が開始し完遂するとき
- 長崎市のキラン:いったん開始された動作が外的な妨げにより完遂しないとき
- 福江市のキル:外的条件が主体の能力を引き出すことにより動作が可能となるとき
- ドアを開ける、手紙を書くなど、あらかじめ能力が備わっている場合
- 福江市のキラン:外的条件が主体の能力の発揮の妨げとなって動作が不可能となるとき
- 能力可能は動作の終了に、外的条件可能は開始時点と結びつきやすいので、完遂のキルは能力可能に結びつきやすく、外的条件可能とは結びつきにくいはずである
- が、長崎市・福江市ではキルが外的条件可能とも結びつく
- これは、「外的条件の位置づけが、「主体の能力」がおもてへ出る際の単なる外的・一時的な通過条件という位置づけから、「主体の能力」を積極的に「援助」する、あるいは「引き出す」ものという位置づけへ変化したため」
- 長崎市は、開始段階に至らないとキランを使えない、すなわち、それほど意味変化が進んでいない)
- 福江市は、開始段階でなくてもキランを使える(電灯が暗いので新聞をヨミキラン)、すなわち、長崎市よりも文法化の進んだ段階を示す
- 長崎市・福江市のキルは以下のような順序で変化したと考えられる
p.18
雑記
- 例のコミュニティ段々スピリチュアルな感じになってきて、逆に、つい見てしまう