衣畑智秀(2005.3)「副助詞ダニの意味と構造とその変化:上代・中古における」『日本語文法』5(1)
要点
- 極限の副助詞には最低限(≒だけでも)を示すものがないが、ダニはその両方を持ち、上代では最低限に限られていたことが知られる
- この歴史変化について考えたい
- 事実の確認、
- 上代のダニの述語は次の2種に限られる
- 価値判断:意志(夢にだに見えむ)、願望(雲だにも心あらなも)、命令、仮定条件句(これも願望の一種)
- 否定:夢にだに見ざりしものを
- 中古のダニは上記2種に加え、肯定述語も見られるようになる(極限のダニ)
- はかなき御くだものをだに、いとものうくしたまひて
- 上代のダニの述語は次の2種に限られる
- このことを、スコープの相対性から考え、上代のダニを、「述語の表す意味において実現可能性の高い要素を取り立てる」と捉え直す
- これにより、願望の例は「(現実よりも)実現しやすい夢を取り立てて、会えることを望む」と解釈され、
- 否定の例も、否定のスコープがダニのスコープより広いと見ることで統一的に解釈可能(「見える可能性のより低い現実でも会えない」ことが含意される):[ɴᴇɢᴘ [ғᴘ 夢にだに [ᴠᴘ 見え]] ず]
- 上代から中古への変化は、これの再分析による(否定がダニより狭く解釈されるようになる)
- [ғᴘ 夢にだに [ɴᴇɢᴘ [ᴠᴘ 見え]] ず]
- このことは、非存在の例(蛍ばかりの光だになし)が現れることからも支持される
- すなわち、中古以降のダニは否定の例からしか変化せず、このことは歴史的なデータからも裏付けられる
雑記
- 今年は大葉にハダニがつきませんように…