矢島正浩(2020.3)「近現代共通語における逆接確定節: 運用法の変化を促すもの」『国語国文学報』78
要点
- ガが書き言葉に多用され、ケレドは話し言葉で伸長という歴史記述ではなく、「ガ・ケレドには、他の接続辞にはない固有の共存原理が働いている」という見方で考えてみたい
- 複数のコーパスを、以下のスタイルを持つものとして捉えて分析する
- 全体として、
- 近代は書記か音声か、会話か地の文かの区別を問わずガが多用
- 現代のガは書記>音声であるが、音声資料でも一方向性>双方向性という占有率の差がある
- 敬体を選択するかどうかという観点から見る
- 従属節において、ガは丁寧体による従属節の構成傾向を強めるが、
- ケレドはそういった方向性がない
- 主節が常体か敬体かという観点では、
- 主節が常体の場合、ガは敬体が必須、ケレドは任意
- 主節が敬体の場合も、ガは敬体が必須、ケレドは「特定の受け手を想定しない書記資料」において、主節にあわせたモード選択をしない
- 準体助詞を取るかどうかという観点では、
- ノの付加によって「受け手の需要に関連付けた表現」となることに注目したとき、
- ノダケレド・ノデスケレドが、ガの場合に比して多い
- ここまでのまとめ、
- ガは全体として敬体を取り、書記言語として対人性が問われない場合は常体、対人性が問われる場合は敬体。規範性を整えようとする方向性
- ケレドは常体の使用傾向が強く、ガに比べてノダ・ノデスを使用し、対人性をコントロールしようとする方略が顕著
- 逆接辞が「順当な流れに不連続・滞りを含んだ表現を持ち込む」特性を持つために、敬体を取ることや相手の認識を確認することによってその緊張を緩和しようとしたものか
- 先行するガは受け手に対して直接的に丁寧さを表示する方向へ向かい、後発のケレドは、受け手の受容への関連付けによって、受け手配慮を表示する方向へと向かった結果、今の住み分けに至ったと考える
雑記
- 何食ってたらこんな手法考えつくんだ~