ronbun yomu

言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

近藤要司(2019.3)「をかしの御髪や」型の感動喚体句について

近藤要司(2019.3)「中古の感動喚体句について(3)「をかしの御髪や」型の感動喚体句について」『古代語の疑問表現と感動表現の研究』和泉書院(2013『親和国文』47)*1

要点

  • 感動喚体句の典型の1つ、「~の~や」(他2つは~カナ、~ヨ)型について考える
    • 上代にないこと、中古も散文が中心であること、連体修飾部が形容(動)詞語幹であることなど、特殊である
  • 概観すると、
    • 連体修飾部はほぼ形容詞形容動詞語幹
    • 骨子体言は形式名詞や非物質的な名詞
      • この2点はカナに似ている
    • ヤの他の表現との関連を考えると、
      • 形容詞・形容動詞語幹ヤ、~ナリヤ、活用語終止形ヤが連続的に存在するヤの用法のうち、ノ~ヤと関連するのは語幹用法の1つめ
  • ここで、形容詞・形容動詞の語幹について考える
    • 橋本の14分類があるが、このうち語幹が感動表現に用いられるもの(あなたづたづし)と助詞ノを介して連体修飾する場合(遠の朝廷)が関係し、
    • 前者は多用されるが、後者はそれほど多くない
  • カナと比較すると、
    • ノ~ヤは主述関係を持たないが、カナは持つ
      • ×その御髪、をかしや / 悔しきことの多かるかな
    • すなわち、カナは述体への連続性を持つが、ノ~ヤは持たない
      • 感動喚体句の形式を持ちつつ、述体とは隔絶されている
    • 和歌に用いられない、発話の現場に依存した表現
  • ノ~ヤは、体験の言語化を行いつつも、主述二項に支えられないという点で独自的であり、「事態との遭遇によって生じた感動を二面で語りながら、一つの体験として語ろうとする表現であった」と考えられる

雑記

*1:あとがきで青木博文さんに感謝している