小西いずみ(2013.10)「西日本方言における「と言う」「と思う」テ形の引用標識化」藤田保幸(編)『形式語研究論集』和泉書院
要点
- トイウのテ形がト同様の働きをする現象について考える
- ヤメタイユーテ ユータ(富山市・やめたいと言った)
- データ、
- 富山、岡山、広島に見られるという指摘があり、
- 発話の引用にしか現れず、「~というN」や「~と思う」には現れにくい
- 談話資料:多くは「言う」で、φ化を補う側面も持つ
- 面接調査:「具体的に算出される言語表現」の場合(~ユーテ書いてあった)に許容されやすいことも分かる
- 引用標識としてのユーテの成立基盤は、引用構文の意味・統語的な幅にあったと考える
- 1 引用内容と述語動詞が継起的であるとも解釈できる場合(藤田のⅡ類):我慢デキンユーテ、帰ッテッタ(~{と言って/と}帰っていった)
- 2 引用内容が述語動詞と同時に行われているとしか解釈できない場合(Ⅰ~Ⅱ類):片付イタユーテ喜ンダ(~{と言って/と}喜んだ)
- 3 単文構造としか捉えられない:何時デスカユーテ聞ク(Ⅰ類)(*~{と言って/と}聞く)
- すなわち、
- 1のような文で「発話する」という意味を主節の述語動詞が担うと解釈することにより、「言う」がその意味を担う必要がなくなって、単文構造として再分析されることで、
- それが、2,3 のような「発話する」や書記の意の述語にも適用されて、トユーテの引用標識化が顕在化する
雑記
- 演習でちょろっと触れたワードをその場で学生が検索して、このブログにアクセスしてることが分かる