青木博史(1997.7)「カス型動詞の消長」『国語国文』67(7)
要点
- 以下の問題点を踏まえて、近世以降のカス型動詞について考える
- 現代語には見られないものがあること(くゆらかす、ふくらかす、つからかす)
- 意味用法を大きく変えた例があること(胸を冷やかす→現代語の冷やかす)
- カス型動詞について(青木1997)
- 基本的な性格は「はたらきかけ」を表すことであり、
- 有対自動詞から派生が始まったが、中世には無対自動詞からも派生されるようになった
- 近世においては、
- 生産力は落ち着いたが、派生元が想定できない例があることが注目される
- ちゃうらかす(からかうの意)、寝かす、そばえかす、やらかす
- 異なり語に限りが見られ、かつ、(動詞の自他という問題よりは)「マイナス評価」へと機能が変化したと考えられる
- 本来的なカス型動詞も「動作主の表出」によりマイナス評価を担うことができたが、次第にその用法の差異が希薄になっていき、存在価値を失ったのではないか
- 生産力は落ち着いたが、派生元が想定できない例があることが注目される
- 以下、カス型動詞の意味について考える
- そもそも無対自動詞は、単独で他動を表すことが通常ない事態であり、自動詞とカス型動詞は「論理的な因果関係としての自他対応関係」にはなく、
- 「対象の変化」はあくまでもそれを期待する動作でしかないので、「他動詞」の枠組みとは大きく異なる
- すなわち、カス型動詞は「無理矢理に」作ったもので、必然的にマイナスの意味を帯びる(cf. 迷惑受身)
- ここから、自他対応形式にも階層性があることが読み取れる(cf. 釘貫1990, 1991)
- 無対他動詞よりも有対他動詞、さらにその中で有標であるものが、「動作主よりも対象の方に主体性が認められる表現」である
雑記
- 〆切の足音が聞こえますね